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小学生の入学式の日、私の隣の席には律がいた。まだランドセルも制服も、新品の匂いがしていた頃。
「よろしく」って笑ったら、律も同じように笑い返してきた。
それから、毎日が一緒だった。
下校の途中で見つけた四つ葉のクローバー。
夏休みに川で作った泥だんご。
冬の朝、白い息を吐きながら走った通学路。
私はなんでも「やってみよう!」って飛び込むけど、内心はちょっとビクビクしている時もある。
そんなとき、律は何も言わずに先にやってみせる。
「ほら、できんじゃん」って、少し意地悪そうに笑いながら。
高学年になると、律の背はぐんと伸びた。
ちょっと声も低くなって、私より先を歩くことも増えたけど、帰り道は相変わらず二人でふざけ合った。
卒業式の日も、特別な約束なんてしなかった。
ただ、ランドセルを背負った最後の帰り道を並んで歩いた。
春の風がやわらかくて、少し照れくさそうな律と、
笑っているのに、胸の奥がきゅっとなる私がいた。