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春休みは、あっという間に過ぎた。
真新しい制服に袖を通すと、鏡の中の自分がちょっとよそよそしくて落ち着かない。
スカーフの位置を何度も直していたら、母が「もう遅れるわよ!」と声をかけてきた。
校門の前には、同じ制服を着た同級生たち。
「おーい、みい!」
振り向くと、律が手を振っていた。
制服姿の律は、背がさらに伸びて、声も少し低くなっていて、見慣れたはずなのにどこか違って見える。
式が始まるまでの間、少し離れたところで男子たちが、ある子のカバンを面白半分で持ち上げていた。
私が「やめなよ」と言いかけた瞬間、律が迷わず間に入る。
「くだらねぇことすんなよ。返せ」
その声は低くて、いつもよりちょっと怖かった。
男子たちは渋々カバンを返し、散っていく。
律は何事もなかったみたいに振り返って、「ほら、式始まるぞ」と笑った。
私は何も言えずその背中を追いかけた。
――こうして、私たちの新しい毎日が始まった。