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「…貴方は、何も分かっていないですね。」
女性の声が、何故だかいつもよりはっきりと聞こえる。
相変わらずそれに反抗したり、言葉で返したりだなんて出来ないが。
「…貴方は、重大なことを忘れている。」
(…?)
その言葉に、衝撃を受けた。
答えは、教えて貰えない。
いつもそうだ、女は意味深な言葉を残し、どこかへと消えてしまう。
(……………)
放心状態なみぞれをよそに世界は歪み、軋む。
だが、今までとは違う。
カチ、カチ、カチと、時計の音が聞こえ、次第に大きくなる
それは脳にまで響き、しまいには心臓すら揺り動かしてしまう。
_そんな衝撃だった。
(…気持ち悪い)
_そうして、朝が訪れようとしていた。
___
みぞれは、目を覚ます。
_ぼやける意識の中、自分の腕や部屋を確認する。
いつからだったろう?
こんなゲームみたいな動作を当たり前にしてしまったのは。
_腕も、部屋も正常だ。
そんな調子で確認していくうちに、みぞれは気づいてしまった。
色がおかしい。
陽は問題なく出て、カーテンも開いているというのに、いつもの部屋よりも暗く感じてしまう。
鏡を取り出し、自分の顔を見る。
自分の顔がぼやけて写る
だが、視界が少し鮮明になると、どうしても色の違和感は強くなった
「…私、こんな顔だったっけ」
「…おかしい、前まではこんな…全く寝れていない人みたいな顔じゃなかった…。」
光が自分自身を照らしていないかのように、この部屋だけが異様な程暗いのだ。
「…違う…」
自分の顔を見直し、必死に笑顔を作ろうとする
だが、鏡の自分の笑顔はどう頑張っても目だけが一向に動かず、不気味に笑う自分だけが写り続けた
「…何が起こってるの…?」
そう呟いて見回したとしても、鏡の自分の目は、全く動いていなかった。
コンコン、と後ろからノックの音が聞こえる。
慌てて鏡を仕舞い、それに応じる
尋ねてきたのは、レイラーだった。
「あっ、7時半…か…」
みぞれはハッと気が付く、本来は7時半にリビングに集まることを。
「大丈夫ですか〜?」
「すみません〜!大丈夫です!」
みぞれは笑えない目を閉じて隠すように笑顔を作り直し、扉を開けた
レイラーはみぞれの様子を見て安心したかのように笑う。
「…良かった、8時になっても来ないんですから、何かあったのかなと…。」
「いやいや、ただ寝坊してただけなんです…!」
「あのみぞれさんがですか!?珍しいこともあるんですね? 」
「……」
「でも、良かったです!待ってますから!」
レイラーは再度こちらに笑いかけ、部屋を出た。
(…大丈夫)
(…きっと大丈夫だから)
どうしようもない不安を抱え、みぞれはリビングへと向かった。
「…おはようございます!」
動いてはくれない目を瞑って隠し、全員が揃うリビングで挨拶をする。
ワンテンポ遅れ、おはようと全員が挨拶を返す
みぞれはいつも通り、自分の席に座り、タイミングを待った。
いただきます、そんな声が響き、皆が一斉に食べ始める。
料理担当は_
みぞれは、違和感を覚える。
「…?」
「…何か、足りないような…」
「どうしたんですか?」
「…ああいえ、こっちの話です!」
「…少し、違和感があって。」
みぞれの様子を見て
「…?これがいつも通りなはずなんだけどなぁ。」
なんてメテヲは言う。
「……違う、こんなに少なくなかったはずです。」
「…え?」
「1、2、3… 」
ウパパロンが小さく数えてみる
だが、みぞれの違和感に共感することはない。
「”13人”じゃなかった?元々…」
桃色のツノを生やした_ウパパロンがそう聞く
まるで、それが当たり前かのように。
だが、こんなに少なくなかったはずだ
(…誰が…)
しかし、誰が消えたのか、その名前をどうしても思い出すことができないのだ。
_何故だろう、無駄なのに、正体を探ろうとする
喉まででかかる名前を、口に出そうとする
_だが、出てこない
どこにも、存在しない。
出てくるのは、口にしようとしたが出来なかった息のみ。
「…何かあった?」
普段能天気である八幡宮でさえ、深刻そうな様子でそう口に出してしまう
シルエットだけは、シルエットだけは出てくるのだ。
だが、その名前はどこにもない、存在しない。
_みぞれは、本能的に思ってしまう
もう、時間は残されていないと
もう、ゆっくりしている暇すらもないと
何度繰り返しても、変わらない現状
(…もう、ダメなのかな)
そんな嫌な考えが脳をよぎってしまう
何度、何度繰り返した?
何度嫌なものを見た?
__何度、救えなかったの?
…数えても、無駄だろう
きっと数回でも、数十回でもない_何度も、何度も繰り返した
(…でも、もう数えるのは苦しいよ…。)
「…………」
みぞれは震える
このまま終わってしまうのではないかと
みぞれは考える、二度と戻れないのではないかと
みぞれは考える、それなら今までの努力はなんだったのだろうと。
みぞれは、分からなくなる_
ぎゅう。
そんなみぞれを、ウパパロンが後ろから優しく抱きしめる。
「…多分、今も辛いんだと思う」
「でも、大丈夫だよ、知ってる人も、確かにここにいるんだから。」
「…今は思い出そうとしなくていいんだよ。」
よしよし、よしよし_そう言ってみぞれの頭を優しく撫でる。
だが、ウパパロンはハッと気が付きその身体を離し、何をしているんだろう?と少し恥ずかしそうな様子で頭を搔く
「ご、ごめん…衝動的にこんなこと…」
「……う、ぅう…」
みぞれは、ただ静かに涙を流していた。
普段からは考えられないほど純粋な優しさに触れる_それが、今の彼女が1番求めていたもの 。
「ありがとう、ございます。」
「_わたし、わたし……」
そう微かに呟いて、なんだか子供のようにほろほろと涙を流していた。