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「……ご挨拶ならしたはずです。理仁さんと2人で伺いました」
あの時、おじさんだけが出てきて、おばさんともみじちゃんは顔を見せなかった。
「あんなのは挨拶じゃない。手ぶらで来て」
「……何が言いたいんですか?」
「私ともみじは、あんたと姉さんに苦しめられたんだ。だったら、慰謝料を払うべきだよ」
「慰謝料?」
「ずっと育ててやったのに、恩を仇で返して」
「仇で返すなんて、そんなつもりはありません」
「旦那に借金も全部返してもらったんだろ? 慰謝料なんて、今のあんたなら何とでもなるだろ?」
おばさんと話すと自然に胸が苦しくなる。
「私は理仁さんに生活費をいただいてます。他に使えるお金なんてありません」
確かに、借金も返済してもらったし、十分過ぎる生活費ももらっている。
だからといって、慰謝料なんて……
「どうかされましたか?」
「理仁さん! 今日はまだ帰らないのかと」
「書類を取りに寄っただけだ。何か御用でしたか? 慰謝料がどうとか聞こえましたが」
「あっ、い、いや」
おばさんは、理仁さんを見てかなり慌てている。
「慰謝料とは、何に対しての慰謝料なんですか? とにかく、弁護士を通して下さい」
「は? 弁護士なんて必要ないだろ? 慰謝料は当然の権利なんだから」
「……お願いです。これ以上、双葉を困らせるようなことはしないで下さい」
理仁さんは、おばさんの無茶な要求に対しても、誠実に対応してくれた。
「ふざけないで。あたしがいつ双葉を困らせた? この子がいつだって私ともみじを困らせてたんだ」
おばさんの態度を見ていたら、何だか可哀想になってきた。ここまで人を憎んだり恨んだりしなきゃいけない人生って……
「双葉はそんな人間ではありません。ですが、わかりました。双葉を育てて頂いたお礼はさせてもらいます。後日そちらに秘書を伺わせます」
「理仁さん……」
迷惑をかけたくない、特にお金のことはこれ以上……
「ただ、これから先、双葉に会うときは優しい対応でお願いします。もし、激しい口調で付きまとうなら、必ず警察に通報します。いいですね」
「おばさん、お願いします。もう、理仁さんを困らせないで」
「あんた達にはうちらの苦しみは一生わからない。私の気持ちはお金じゃ埋められないんだ」
おばさんの目に、一瞬、キラッと光るものが見えた気がした。
「では、お金では納得できないと?」
「……いや、慰謝料はいただくよ。それなりの額じゃないと納得しないからね」
「おばさん!」
「いいんだ、双葉。君を育ててくれたことは事実なんだから」
「天下の常磐グループに嫁いだんだ。ケチケチするんじゃないよ」
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