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『怖いんだぞ~。痛いんだぞ~』とすこし脅しもいれて説得したのだが……。
それでも、メアリーはボスに挑戦したいようだ。
シロも自身があるのか余裕な感じだ。
「…………」
う~ん、まっ、危険ならば手を出せばいいのだし、エスケープゾーンだって設けてある。
――行かせてみるか。 (ボス部屋にです)
だけど、しっかりブリーフィングだ。作戦を練るぞ。
ここ5階層のボスはゴブリンジェネラルでお付きのゴブリンが3匹だったよな。
「メアリー、ここはゴブリンが3匹と大きいゴブリンが1匹出るんだ。まず普通のゴブリンからやっつける。だから最初は魔法だ。さっき使っていたよなアクアアロー。あれでいこう」
「魔法を撃ちたい思ったらすぐに使えるか?」
「うん、だいじょうぶだよ。すぐできるよ」
「でもな、ゴブリンも動くんだぞ、とても大変なんだぞ。『どうしよう』とか思ってる暇はないぞ」
「うてないときはにげるよ。槍でもだいじょうぶだよ」
「じゃあ、槍でどこを狙うんだ?」
「う~んとね、目。そしてノドだよ。からだをさすと先がぬけなくなっちゃうの」
「おおっよく知ってたなぁ。えらいぞ!」
「うん、シロ兄 (にぃ) が言ってたの。きゅうしょだからって」
う~ん、シロがねぇ。
間違ってはないんだよなぁ。
付けた先生を間違ったような気はしてるが……。
でも、戦いは非常だよな。ちょっとの判断ミスが命取りなるということもあるから、あながち間違ってはいないのか。
………………
まぁ、これなら何とかいけるかな。
では行ってみますかねぇ。
俺とメアリーはボス部屋の前に立った。
――ゴゴゴゴゴゴゴッ!
左右の扉が奥に開いていく。
「ボスは大きいから顔が届かないなら足のかかとを狙うといいぞ」
最後のアドバイスをメアリーに伝えて送りだす。
「ゲンパパ見てて。ぜったい勝つから!」
メアリーは俺に手を振り駆けだしていく。
いつでも結界が張れるように準備をして俺は観戦モードに入った。
――メアリー頑張れ!
メアリーはひとりタンタンとボス部屋を進んでいく。
ゴブリン共は未だ動かない。
様子を見ている風でもない。
いわゆる『舐めプ』なのだろうか。
それでもメアリーは槍を片手に進んでいく。
そして相対距離が15mと迫ったとき。
メアリーは静かに右掌を相手に向けると、アクアアローを無詠唱でぶっ放した。
ゴブリンジェネラルを守るように前にいたゴブリンは2匹がその場で倒れ、もう1匹は足を引きずりながら戦線を離れていく。
そして魔法を放ったと同時に右へ飛んでいたメアリーは姿勢を低くしてヤツ (ゴブリンジェネラル) の左側面から素早く突っ込んでいった。
一瞬のことで敵を見失っていたヤツは対応が全くできていない。
そんなヤツの後ろ側を右から左へと駆け抜けながら、両手に持った短槍でふくらはぎを横ナギに払っていく。
足元を通り過ぎ、警戒しながら振り返るメアリー。
そこには両膝を地面に突き、ただ恐怖に怯え、剣を振り回しているだけのゴブリンジェネラルの姿が。
完全優位に立った今でも、メアリーはいたって冷静だった。
静かな足取りでヤツに近づいていき、剣の届かない間合いから正確な一撃が喉に吸い込まれた。
だらんと力の抜けた手からは剣が滑り落ち、ゆっくりと前に倒れていくゴブリンジェネラル。
――ボンッ!
次の瞬間に魔石へと変わってしまった。
後は離脱していたゴブリンをサクッと沈め、メアリーはここに完全勝利をはたしたのである。
すべてのゴブリンが魔石へ変わると出口の扉が開いた。
俺は感動のあまりメアリーを抱きしめていた。
凄い、凄すぎる!
何なんだこの娘 (こ) 、めっちゃかっこいい!
「よく頑張ったな、えらいぞー。さあシロを迎えにいこう」
魔石をインベントリーに納めるとメアリーを腕抱きにしてシロが待つ出口へと向かった。
俺とメアリーがボス部屋から出てくるとシロは尻尾を振りながら迎えてくれた。
まずは転移台座への登録だな。
メアリーのちっちゃな手を台座の玉 (ぎょく) に触れさせると、玉がほのかに明るくなった。
――これで良し。
時間的には少々早いが、今日はもう帰ろう。
周りに人が居ないことを確認させたのち、家の近くの路地に転送させた。
もう雨も上がっていたのでゆっくり歩いて家まで帰った。
夕食までには時間がある。
例のものを作ろうと、シロとメアリーをリビングに残し俺は一人食堂にやってきた。
今日作るのは、あのビルス様も大好きな『プリン』である。(破壊神・ビルス)
まずは木の容器やボウルなんかをテーブルに並べる。
次に材料だが、コッコの卵・牛乳・砂糖、この3種類だ。
これに今回はバニラエッセンスが見つからなかったので、香り付けにメイプルシロップを使おうと思う。
昔、作ったことを思い出しながら生地 (プリン液) を作っていく。
かくはんがなかったので箸を6本作り紐で束ねたもので代用する。
ちょっと厳しかったが何とかかき混ぜることはできた。
香り付けにはメイプルシロップを使うので砂糖は控えめにする。
後は調理場を借り、鍋を火に掛けてかき混ぜながらプリン液を完成させる。
そしてフライパンを火に掛け、砂糖に水を少しづつ加えながらカラメルを完成させた。
あとは並べてある器にカラメルソースを先に垂らしプリン液を注いでいく。
そしてシロを呼びタライに氷を出してもらうと、プリン液が入った器をそこで冷やしていく。
これで夕食後にはしっかり固まっているだろう。
タライには蓋をして蹴られない場所へ移動。
――完璧だな。
そして夕食の時間になったが、如何せん香りが残ってしまっていた。
「なんだ、いい匂いがするな?」
などとマクベさんが言っているが、今は素知らぬ顔をしてとぼけておく。
いよいよ夕食が終わりに近づいた時、俺は静かに立ち上がった。
プリンの入ったタライを持つと、みんなの前に1カップずつスプーンと一緒に配っていき自分の席へと戻った。
「これは俺の国でもっとも人気のあるデザートです。どうぞ食べてみてください」
そのように説明してから俺も一口食べてみた。
…………うん、プリンだ。
美味しくできてるみたいで良かったぁ~!
そしてみんなは……、一口食べたらもう止まらない。
一気になくなってしまったようだ。
みんな揃って、なごりおしそうにカップの底を眺めている。
フフフッ! おそらくこうなるだろうと思ったよ。
実はもう1カップずつ作ってあるのだ。
「今度はゆっくりと味わって食べてくださいね」
そう言って配ってまわった。
2個目のプリンを見たときのみんなの反応、それは凄かった。
まさに歓喜の渦。
子供たちはもちろん、カイアさんの反応が半端なかった。
「これはなんなの~! 食べたことな~い。王都にもないわよ~」
絶賛しまくりだった。
どうやって作ったのか? 材料は何なのか? また作ってほしいとか、お店を出しましょうとかも言っていたなぁ。
やはり、どちらの世界でも女性は甘味に弱いみたいね。
「そのうち、また何か美味しいものを作りますよ」
この言葉にカイアさんは絶叫して抱きつかれてしまった。
……マクベさんと目を合わせてお互いに苦笑いである。――やれやれ。
それからリビングでまったりしたあと自室に戻ってきた。
「ゲンパパ、プリンおいしかった。また作ってね!」
メアリーからも言われてしまったかぁ。
「また、ゆっくりした時になぁ~」
さて、メアリーをベッドに座らせて魔力操作の訓練をしていく。
「目を閉じて自分の魔力を感じてごらん。……そう、次はそれを意識して思いのままに回していくんだ」
このようにメアリーに教えながら身体の隅々まで魔力を循環させていく。
毎日行うことこそ大事だと思うのだ。
………………
おやおや、メアリーは眠ってしまったか。
今日は頑張っていたからなぁ。どれ、――鑑定!
メアリー・クルーガー Lv6
年齢 5
状態 通常
HP 27/28
MP 34/20 +20
筋力 16
防御 11
魔防 12
敏捷 17
器用 11
知力 15
【スキル】 魔法適性(光・風・水・聖) 魔力操作(3)
【魔法】 光魔法(1) 水魔法(2) 聖魔法(1)
【称号】 大公の庶子、シロの妹、ゲンの家族、
【加護】 ユカリーナ・サーメクス
うひゃー、これは凄いな!
こんなレベル、5歳児ではまずあり得ないよな。
もう、その辺の大人より強いだろ、これ。
それに魔法まで使うからなぁ。