コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
シーニャに専用魔石を触らせた後、おれはガチャを引いた。
【SSSレア ワータイガーの爪 クリティカルアップ】
【SSSレア ワータイガージャーキン 回避速度アップ 回復効果アップ】
【Sレア ワータイガースカーフ 命中率アップ】
【SSSレア ワータイガーリスト 魔法防御Lv.+900】
【SSSレア ワータイガートラウザー 潜在:コンビネーションアタック】
【SSSレア ワータイガーホーズ 耐氷】
「ウニャァァ~!! 凄いのだ! 大量なのだ~!!」
シーニャが驚く以上におれも驚いた。まさかこれほどの数の装備がいっぺんに出るとは。
専用魔石が効果を発揮したらしい。
「ほえぇぇ……」
ルティは開いた口が塞がらない状態でしばらく静止している。彼女はお気に入りのメイド服エプロンだけで過ごしてきた。しかしこんな大盤振る舞いを目の当たりにしたせいか、興奮気味だ。
「アアアアア、アック様っ!! わ、わたしもそのぅ、あのぅ」
「心が動いたか? いずれルティにも出すが、まだその時じゃない。もう少し我慢してくれるか?」
「きき、きっとですよ? お願いしますです!!」
彼女たち専用魔石のうち、フィーサとシーニャだけが自分の魔石に触れている。ルティはまだ自分専用の魔石があることに気付いてもいない。触れさせるだけならいつでも出来るがそれは今じゃなく、シーニャが得た後でガチャを引くわけにはいかなかった。
「ふんふんふん~! なのだ」
シーニャは機嫌良くして早速装備一式をつけるため、着ているものを脱ぎだした。
「こ、こらこらこら! ここで脱がずに少し離れた所で着替えた方がいいぞ」
「ウニャ? アックは見たくないのだ?」
どっちの意味かは不明だな。
……いや、どっちにしても――
「全て装備した姿を見たいから、おれの見えない所で着替えをだな……」
「分かったのだ! 完全な姿をアックに見せるのだ。少し待っててくれなのだ!」
露わになってる姿を見るのもいいが、ここは理性を保つ方を優先する。
それにしても、以前出した装束と違ってワータイガー表記の装備になったのは驚きだ。闇シーニャになったことが関係しているかは分からない。だが、シーニャの強さは着実に上がりつつあるように思える。
「アック~!! これはどうやって着けるのだ?」
シーニャの声が離れた所から聞こえてくる。目の届かない場所に移動してくれたらしいが、着け方を聞かれてもな。
「それはわたしがやってあげますよ! じっとしててください~! アック様~! ご心配なく」
ルティがついててくれたようで一安心だ。今回出た装備で変わり種は、首に巻くスカーフとホーズか。シーニャの身軽さは本来であれば盗賊向けだ。身軽い動きでスカーフをなびかせながら動くことにはなるかもしれない。
しかし実際は回復スキル持ちの狩人だ。今回の装備で回復スキルが上がるとなれば、彼女の支援は欠かせないものになる。シーニャは獣なのでホーズは本来無用の防具だ。だが防御力無しの防具ということは、見映え的な意味に違いない。
「アック、アック! シーニャはどうなのだ?」
「――うん、良く似合っているぞ! それでばっちりだな。村も町も歩くのに何も問題はない」
「ウニャッ! 嬉しいのだ~!!」
全体的に緑が色濃いことで碧色《みどりいろ》の装備となったが、風の村で出したことが関係している、あるいは森に棲んでいたことが関係しているかもしれない。
シーニャの装備が終えたことでおれたちは風の村へ進む。白い壁は暴風ですでに無くなり、村の民の姿もちらほらと見えている。石畳の道沿いに並ぶとんがった屋根の建物が目を引く。
円錐形《えんすいけい》の石で積まれた屋根の家が続く道だが、どこまで続く道なのか先が全く見えない。
「あの屋根は風の影響によるものか?」
「そうだと思いますよ。ロキュンテも火山に対応出来るような屋根でしたし」
「そうなのか」
「今度はきちんと見て下さいねっ!」
「……そうだな、そうする」
さすがに今度はいつロキュンテに行けるのか見当もつかない。それにしても真っ白な壁に太陽からの光が反射して、とても壁で覆うような村には見えない雰囲気だ。
「アック、ここはトルリって村なのだ! 風の村は見るものがたくさんたくさんなのだ!!」
「トルリ? ラファーガじゃなくて?」
「そうなのだ」
目の前には家の他、小さなレストラン、食料が並ぶ屋台が見える。村の名前を示すようなものは見当たらない。風の神の名前ではないのも不思議ではないが、アグニと違って民との接触は無いのだろうか。
「シーニャ、この先から走って来た覚えがあるのだ」
「この先? 家屋が延々と続いているが……、その先が闇の?」
「よく分からないのだ。でも、空はずっと暗かったのだ。ウニャ」
空がずっと暗いとなると、やはり風の村の先にあるのが闇ということになるが。
「人はたくさんいたかな?」
「あんまり見なかったのだ」
「……行って確かめるしか無さそうだな」
「アック、ここは美味しいものがあるのだ! 行く前に案内するのだ!!」
「それなら、シーニャ。案内を頼むぞ!」
真新しい装備に身を包んだシーニャがさらにはりきって前へ進む。一方のルティは、悩みまくった表情で立ち止まっている。
「ルティ、何か気になることでもあるのか? それともここで必要な物でも……」
「はい、それはもう! めちゃくちゃたくさんありますよ!! 母さまからも言われていましたけど、我慢は良くないんですっ! ですので、買いまくっていいですか?」
「……それはルティの判断に任せるが」
「ではではっ! わたし、お買い物してきますっ!!」
「あっ、おいっ!?」
シーニャの後ろ姿が見えているのではぐれてはいない。だがルティの単独行動にはやや不安がつきまとう。きちんと迷わずに合流して欲しいものだ。
「アック、アック! こっちなのだ~!! ウニャ」
「あぁ、行くよ」