次に受付に現れた悪魔の姿を目にしたオルクスは少し親しげな声を出した。
「おお君か! 懐かしいねスキピオ、後ろのメンバーは君の眷属(けんぞく)かな?」
「眷属と言うより一族ですね、ルキフゲ・ロフォカレさんを探してニブルヘイムを彷徨(さまよ)っている間に再会したんですよ、全員登録した方が良いですよね」
「うん、そうだね、君の場合他の来賓と違って直属の部下だもんね、えーっとじゃあ専用のページを作ろう! 『スキピオ・アシアティクス・アフリカヌス一族』っと、良し順番に名前を教えてくれるかな?」
「あ、オルクス卿、弟もいますんでアシアティクスの称号は彼、ルキウスに戻しますんで私はスキピオ・アフリカヌス若しくはプブリウス・コルネリウス・スキピオでお願いしたいんですが」
頷いたオルクスはページの表題を後者であるフルネームに書き直すのであった。
「これで良し、んじゃあ本人がスキピオ・アフリカヌスで弟さんがアシアティクスのルキウスさんっと、他にはどなたがいるのかな?」
「はい、父のプブリウス・コルネリウス・スキピオと長男のプブリウス・コルネリウス・スキピオ、あと次男のルキウスと舅のルキウス、それに義弟のルキウス」
「は?」
「上の娘がコルネリア・アフリカナ、んで下の娘がコルネリア・アフリカナ、最後に孫のプブリウス・コルネリウス・スキピオです」
「えっと……」
一体この家族、家庭内でどんな風に呼び合っていたのであろうか?
お爺ちゃんお父さんお母さん、これ位なら分かる、ルキウス叔父さんは? 一号二号?
幾らなんでも二人の娘が全く同じとか……
呆れた表情でスキピオ(最初から居た奴)の顔を眺めた後、オルクスは器用に呼称を付けていった。
「んじゃお父さんがパパスキピオでアフリカヌスが大スキピオ、弟がアジアで長男がアフリカ、次男がオトウトルキウス、母方のお爺ちゃんがパパルキウスで義弟さんがオジルキウス、お姉ちゃんがサザエで妹さんがワカメ、お孫さんがタラちゃん、これで良いかな?」
「ええ、何でも構いませんよ、単なる名前ですからね、拘(こだわ)りとかありませんから♪」
いや、少しは拘れよ…… 周りが混乱するじゃん……
書き終えたオルクスは多少疲れた様で、弟妹(きょうだい)に受付を代わって貰うと、来賓たちの脇をすり抜けて、控え室として設(しつら)えられた天幕に向かったのである。
天幕の入り口で周囲を睨み捲っているイーチと頷き合った後、中に向けて声を掛ける。
「王国の剣(つるぎ)、三センチ、オルクスでございます、入っても宜しいでしょうか?」
「おう、勿論でござるよ」
「堅苦しいわね、いつも通りで良いわよぉ」
「! はい、じゃなくて、うん、入るねぇ! とぅっ!」
いつも通り、そう言われたオルクスは精一杯頑張った結果、満面の笑みを浮かべながら天幕の中に両手を広げて飛び込むのであった。
天幕の中ではコユキと善悪、それに先程まで縛られていたサタンの三人が座卓を囲んで緑茶を飲んでいる最中であった。
笑顔を浮かべるコユキと善悪、対してサタンは目を剥き出して驚愕の表情である。
「き、貴様も居たのか…… くぅっ! ち、恥辱だ!」
「で、あろうな…… 我の所に居た頃のそなたでは考えられぬ…… ギャップが物凄いぞ……」
「う、五月蝿(うるさ)いっ! んな事よりお前、サタナキアは納得したのか? 王国の剣と三センチの跡を継いで世界を魔力災害から救う、その役目に着く事を」
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