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心が腐ってる人(腐女子、腐男子)はいいけど 普通の人だと気まずそうw めちゃよかったです✨
野ニキ+和ニキ
あとカブト君。
ふと思いついたくだらないネタ。
でも見つめあって、相手の瞳について何か想うのだわなは尊い。
START
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俺の名は小峠華太。
突如始まった謎のゲームに戦慄している武闘派の極道だ。
きっかけはつい先刻まで流れていたバラエティ番組だ。
そのワンコーナーで誰が1番長く目を開けていられるかという至極くだらないゲームが行われていた。
カタカタというキーボードを叩く音と、テレビから流れるキャアキャアという声以外何も音のない静かな事務所に突如その言葉は放たれた。
野「和中ぁ、お前ドライアイ?」
和「いや、そんな事はないと思うが」
野「ふーん。じゃあ今から勝負するのだ」
野田の兄貴が何を思ったのか側に居た和中の兄貴に突然そう声を掛けた。
和中の兄貴は当初困惑し、軽くあしらっていたがそこは煽るのが上手い野田の兄貴。
野「あ?お前勝てる自信ねーの?」
和「は?そんな理由ではない」
野「いいっていいって、無理すんな。負けるのは嫌だもんな」
和「だから違うと言ってるだろ!」
野「黙っといてやるからよ」
和「〜っ!貴様!調子に乗るなよ!」
という具合にまんまと焚き付けられた和中の兄貴。
そんな和中の兄貴を見て、野田の兄貴はニヤニヤと笑みを浮かべていた。何か勝算があるのだろう。是非とも仲良く穏便に頑張って頂きたい。
そう思っていた。が、ここからが地獄だった。まさかの俺が審判をやる事になったのだ。
どちらとも忖度できない。兄貴たちの瞬きを見逃してはならないという、死を目の前に据えた状況に、俺が一番目を開いているのではないかと思い始める。
和「貴様、今瞬きしただろう」
野「あ”?してねーよ。お前こそしてんじゃねぇのか?」
和「する訳ないだろうナメるな」
野&和「「華太、どっちだった??」」
正直2人共していないから判定がつけられない。
眼力が強すぎて、その視線だけで俺は既に死にそうだった。
というかそもそも、何故審判がいるんだ?
向かい合ってやったら早いじゃないか。
等と思いもするが口に出せる訳もなく。
どちらに身をふるのが賢明か、この場をどう乗り切るか脳みそをフル稼働させていた。
そんな時、突如として救世主が現れたのだ。
香「華太、守代の回収行くぞ…ってお疲れ様です!」
香月の兄貴だ。
普段から美しく麗しいがこの時ほど神々しく思えた事はない。
香月の兄貴は野田の兄貴と和中の兄貴の様子に面食らっていたが、すぐに何かを察し、にこやかにやり過ごしていた。流石だ。勉強になります兄貴。
そんな訳で俺は香月の兄貴とシマの見回りで事務所を留守にすることになり、審判の華太が居なくなるならお開きかという空気が二人の間に流れた。
が。
香「二人で向き合ってしたらいいんじゃないですか?」
香月の兄貴はいとも簡単にそう告げた。
香「そうすれば、相手が瞬きしたかも分かり易いですし」
変わらず笑顔のままそう告げる香月の兄貴。その言葉を受け、ハッと何かに気づいた様な野田の兄貴と和中の兄貴。
ーー嘘だろ…まさか気付いてなかったのか
自分への嫌がらせも兼ねているのかと思っていたがどうやら兄貴達は本気で互いを見つめ合いながら勝負するという方法に気付いてなかったらしい。
ーーこんな所で天然を炸裂しないでくれ…!
いつもは頭のキレる兄貴たちの意外な一面に驚き、ともすれば役得だと喜ぶ場面かもしれないが、正直疲労の方が勝る。
香「では、失礼します」
一礼をし香月の兄貴が部屋を後にするのに続き、俺もそそくさと部屋を後にする。
狂人と呼ばれる兄貴二人が向かい合って、互いを見つめ合う光景はそれはそれで周りからしたら怖い景色である。
終わりの見えないメンチの切り合いだ。
下手したら喧嘩に発展するかもしれない。
この後部屋に入るだろうまだ見ぬ舎弟を気の毒に思いながら、俺は軽い足取りで街へと繰り出した。
野「じゃ、やるか」
和「決着をつけてやる」
よーいドンで見つめ合う。
至近距離で互いの顔を、瞳をただ黙って見つめ合う。
言葉もなく、時計の音とパソコンの駆動音だけがその部屋に響いていた。
普段から会話はするがこの距離で相手の事を見つめる事は少ない。まして長時間見つめることなどまず絶対ない。
ーーこいつ、睫毛なげーな
ーー綺麗な色してんのな
野田は勝負の最中にも関わらず、和中の瞳を見つめながらそんな事を考えていた。
いつも澄ました怜悧な色を浮かべている赤い瞳は今は大きく見開かれ、一直線にこちらを見つめている。
勝負をしている事を忘れてはいないが、赤く煌めく宝石の様なその瞳にただ引き寄せられ、ずっと見ていたい、そんな思いで見つめ続けた。
ーーこんな瞳をしていたのか。うっすら茶色なんだな
普段目を合わせて会話する事はあれどまじまじと野田の目の形など観察した事は無かった。
切れ長の鋭い眼、というザックリとしたイメージはあったが、こうやって見るとその黒い瞳は微かに茶色を含んでいて。
白目がちなその眼に浮かぶ小さく鋭いその黒は黒耀石の欠片のようだ、と和中は野田の瞳を見つめながら考えていた。
ーーあ、俺が見える
食い入る様に、覗き込む様にジッとその瞳を見つめていると、黒の中に薄っすらと赤い色を見つけた。それが自分自身だと気付くのにさして時間は掛からず、黒一色の中に己の赤が滲んでいる状態が何故か不思議で、そして微かに高揚を覚えた。
……………………パチリ
小さく、瞬きかどうか分からない程度の瞬きを二人はほぼ同時にしてしまった。
野「今、お前瞬きしたろ」
和「した。が、お前が先にしていたぞ」
野「いーや、お前が先だったのだ」
和「そんな事はない。この目で見たぞ」
どちらが先に瞬きをしたか言い争いは延々と続き、自分が勝ちだと両者一歩も引かない睨み合う膠着状態が続いた。
下手をすれば喧嘩に発展するかもしれない。
そんなピリリとした空気の中、膠着した状態を壊すように和中がフッと笑みを零した。
野「何じゃぁ?」
和「いや、こうも目を見続けるのは不思議だと思ってな」
野「まぁ普段はそんな事はしねーかんな」
和「その割には随分得意だと豪語していたが」
野「不良の頃にコツは学んだ」
和「コツがあるのか…」
野「あるに決まってんだろ。つーかコツ無しでお前はどうやってんだよ」
和「……気概だ」
野「ぶっはは!お前らしいな」
和「おい、笑うな」
野「すまんすまん。じゃあよ、何考えてたんだ?」
向き合い、見つめ合う最中、何を考えていたか。
気概というからには何か強い意志を持ちながら挑んでいたのだろうか、果たしてそれはどんなものだろうかという純粋な疑問から出た質問だった。
和「…先にそっちが答えろ」
感じた事を正直に言うか迷った和中は相手の答えを先に聞こうと野田を促した。
野「別に大した事は考えてねーぞ」
そう前置いた野田は素直に自身が感じた事を伝えていく。
野「意外と睫毛なげーんだなとか、目の色綺麗なんだなとか、そんなもんだ」
コツや精神的な意見が来るかと思っていた和中はその返答に驚いたが、自身を褒める内容に少しだけ嬉しそうに笑い、勝ち誇った表情を浮かべた。
野「くそ、なんか腹立つ顔しやがって」
和「そんなつもりはないが?」
野「あっそ。つーかお前も答えろや」
野田の素直な感想を聞き、自分も素直に伝えて大丈夫だろうと踏ん張りのついた和中は、それでもおずおずと口を開いた。
和「お前の瞳に俺が映ってた」
野「当たり前じゃあ」
和「俺がその色を変えている、今は俺しか見えてないというのは悪くない気分だった」
和中から告げられた内容は野田の想像を遥かに超えていた。てっきり軽口の類が来るかと思っていたからだ。
野「…っ、あ、そう」
和「…うむ」
二人の間に沈黙が落ちる。
しかしそれは決して険悪なものではなく、互いの言葉にどう対応して良いのか、言葉の意味をどう処理したらいいのかが分からず次の一手を決め倦ねている為の沈黙だった。
互いに今までとは違う視点を相手にもち、さらに相手から告げられたその内容に密かに胸は高鳴り、ドキドキと早鐘を打っていた。
このままいい雰囲気になるのが世の常識かもしれないが、しかし、そこは負けず嫌いの二人である。
野「…もう一勝負しようや」
和「む。次こそ決着をつけてやる」
互いの言葉を飲み込んだ上で再び向き合い、じっと互いの顔を見つめ合う時間が始まった。
先程までよりも、相手の瞳を見つめることに些か恥じらいと動揺が混じるのは気の所為という事にして、グッと睨み合う。
そうしてまた時間は過ぎ去っていく。
二人が気付かないうちに部屋に入っていた舎弟たちは挨拶をするタイミングを逃し続け、二人が何を行っているのか正しい理解する情報もなく、ただただメンチを切り合う二人を邪魔しないように、静かに見守るしかなかった。
ℯ𝓃𝒹ーーー
(喧嘩…始まるのか…?)
(にしては二人の世界すぎる…)
(…だよな…)