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ろのみ🩵🫧
43
#愛され
おうか
252
『最高』そう言ったのは、本心なのか俺に気を遣わせない為だったのか……。
「今日はもしかしたら、夢なのかしらと思う程です」
そう言って、俺の空になりそうなグラスを見て「次、何飲みます? もう少し、飲めるでしょ?」
可愛いらしくそう言う彼女に、酒も進んだ。久しぶりに楽しい。仕事関係でもなく、誰に気兼ねすることもない……申し分のない相手。
これきりにしたくはなかった。するつもりも、なかった。
そろそろ自分の事を優先したい。そう思っていたのが、後押ししたのか。あの、可愛いカップル誕生に感化されたのか、淡い失恋のせいか。
それとも単純に……俺が彼女を、帰したくなかったのか。
「そろそろ……時間が……」
時計を見て、そう言った彼女に、思い出した。あの二人に渡しそびれたプレゼント。
たまには、何も考えずに、自分の感情を優先してもいいか。思いのままに……動いたって……。
いや、そうしたい。
「今日、そこのホテルに泊まるんだ」
そう言ってそっちに視線を走らせた。
「えっと、こっちの人ではないんですか? 」
「いや、たまたま部屋をね。もちろん、シングルじゃない」
そう言って、彼女を見るとそっと、手に触れた。しばらく、見つめ合って店を出ると、彼女はYESの返事の代わりに俺の腕に自分の腕を絡めた。
「いい夢だわ」
俺に身体を預けるように、そう言った。
いいもんだな、インセンティブってやつも。いいもんだな、一人じゃないって。
元々の性格なのか、癖か、職業病ってやつか。
相手の表情、仕草から……色々と読み取ろうと……相手をついじっと、観察するように見てしまう。
彼女はホテルの部屋に入ると、はしゃぐように窓の方へ。風呂の位置を確認しているようだ。
ガラス張りのすぐ横。外からは見えない。こんな、すぐ横がオフィス街になってるのに見えたら大変だろ。
「でも、部屋からは見える……」
ああ、恥ずかしいのか。俺に見られるのが。
背後から彼女を包み込み、安心させるように身体をさする。細い。なのに、柔らかい。男とは違う、身体の作りが服の上からでも分かる。
「いっそ、一緒に入る? 」
俺の方を振り返った彼女が至近距離で目を合わせる。さっきの、ここへ来るやり取りもそうだけど、彼女はYESもNOも言わない。
ただ、目で、行動で示すだけだ。
彼女が目を閉じるのを合図に唇を合わせた。
昨日までとは、随分違う思いを胸に。
触れていい。遠慮なく。その甘さに溺れ……確認していなかった。
「湊、恋人いる? 」
彼女がフリーかどうか。最も恋人がいたらここにはこないだろうとは思う。
その通り彼女がそう口にして安堵する。
だけど、今聞くのは、まずかったな。タイミングを間違えた。ここへ誘う前に聞くべきだった。
恋人が居るのに、ここへ来る女だとでも言ってしまったようになる。気を取り直して、再び唇を合わせた。
彼女の微妙なキスの応えにやはり失言だったと悟る。再びキスを止めると
「座ろう」
そう言って、窓際に腰かけた。
ここでやっと、コートと上着を脱ぐくらい性急だった。余裕の無さに自嘲する。
「おいで」
彼女は控えめに、横に座った。
「……今頃あの二人も……」
彼女が、途中で言葉を止める。
「俺に、付いてきたのは? 」
『私も、誰かと居たかったので』
さっき、彼女はそう言った。
「何があったか。……うーん…あの|吉良君《イケメン》?」
走って行った彼を見送る彼女を思い出した。
単純に、言っただけ。だった。それなのに、彼女は二の句が告げなくなった。
「はは、君もかぁ」
『女性は皆俺の事が好き』などと、ふざけた台詞はあながち、間違ってはいないのか。まったく生意気な男だ。
「いいえ。私は……」
否定する彼女に、気持ちの自覚がなかったのかもしくは……触れてほしくなかったのか。悪いことをしたなと、思った。彼女の髪を梳いた。肩より少し長い、ゆるいウェーブの柔らかい髪が俺の手で揺れる。
「……憧れていたのかもしれない。彼を通して……」
彼女の瞳がせつなげに揺れる。トーンを落としたライトの下でも、綺麗だった。
「うん」
彼女は自分を彼の過去の友人だと説明した。
ああ、過去の……そうか、友達の彼氏は……キツいな。今でも、友達でいるほどの関係なら尚更。
「分かるよ」
俺がそう言うと、彼女は笑った。
「だから、やっと前に進める」
「俺もだ」
「勇気、くれます? 」
「ああ」
それから、どちらともなく唇を合わせ、求めあった。
一人のカップルの陰に色んな思いが交差する。ちょうど良かったんだな、彼女にとっても俺が。
お互いそうだった。
だけど……それも必然で……きっと、それだけじゃないはずだ。
「綺麗だよ、湊」
綺麗だった、本当に。恥ずかしがる彼女を抱き締める。
そのまま、ジャグジーの泡で見えないお湯の中へ彼女を抱き抱えるように入った。
「細いな」
強く抱くと、折れそうだ。
「痩せたんですよね……。本当はもう少し、あったんですよ」
……心労でと、いうことか。
「また、太ればいい」
胸元に唇を這わせ、そう言った。忘れたらいい。今夜限りで。それくらいの、慰めはする。
「それに、十分ある」
出るべきところは、しっかりと女性らしい。
ずっと、見ていたいくらいだ。まぁ、見せてくれないのだけど。そんな恥じらいも俺にとっては……胸が高鳴るだけだ。
綺麗だ。
いつまでもそううしてジャグジーのお風呂に浸かりながら、恥ずかしさからだろうか。なかなか出ようとしない。
酒も結構飲んだ。弱くはないのか。
だけど、俺とここにいるのは、酒の力もあるだろう。
抱き上げると、そこへ座らせた。バスタオルで拭くように包む。俺から目を逸らし、外を見ようとする彼女に言った。
「外、見ながらする?」
彼女からの返答は、なかった。
冗談に返す余裕も……ない……か。でも、もう、次第にこっちにも余裕がなくなっていった。
感情と熱情のまま……そして、彼女も同じ気持ちであると……。
久しぶりに身も心も満たされた夜だった。人肌は何よりも癒してくれた。
麗佳の元へ走って行った吉良君にすら、感謝するほどに。
コメント
1件
うわぁ…第4話、めっちゃ切なくて色っぽかったです…。 sideS、つまりこの男性側の視点なんだね。彼が「もう自分を優先していい」って決めたところ、すごく響きました。自分に嘘をつかずに、湊さんに触れたかったんだろうなって。 それに、お互いに「誰かと居たかっただけ」なのに、それだけじゃ終わらない空気になってるのがたまらない…。ジャグジーでの距離感とか、もうドキドキしました。吉良くんにまで感謝してるラスト、ニヤリとしちゃいました🤍 続きもちゃんと読ませてもらいますね。