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「明彦さんなんか、大嫌いっ!」

「っ!」

告げられた言葉の衝撃、その上、麗に両手で強く胸を叩かれた。

「私はアキ兄ちゃんと恋愛なんかしたくなかった。……優しいお兄ちゃんでいてよ! 愛してるなんか言わないでよ! 今まで通り可愛がってよ! 妹でいたかったよ!」

それは、腹の底からの麗の叫び。

明彦を否定する言葉の刃。

「私は! 他人の望むように振る舞うよ! これからもずっと。だってそうする以外生き方を知らないもん! だから私は昨日も今日も明日も明彦さんを愛してる。愛してる。愛してる。愛してるっ! だって私は、明彦さんにすがらないと生きていけない可哀想な子だから!」

麗は支離滅裂なことを言いながら、はらはらと涙をこぼす。

愛している、それはずっと望んでいた言葉。

だが、その言葉が明彦だけでなく麗までもを傷つけていく。


「嘘だよ。私は誰も愛してない。ただ、寂しいから構ってほしいだけ。だから、相手の望むように、馬鹿で可哀想だけど明るい愛人の娘として振る舞うの! それが皆が望む私だから! でも、本当は母さんのような男に縋るくっだらない人生なんか送りたくなかった! そのくせ結局は、ずっと姉さんに縋るくっだらない人生を送ってた。それで今は明彦さんに縋ってる。私は母さんと一緒! 所詮、同じ生き方しかできない!」

「違う、違う、そうじゃない! そんなことない」

その通り自分にすがらせて生きさせたかった明彦は自分の言葉が上滑りしているのを感じていたが、麗を強く抱きしめることで抑え込む。

だが、麗は明彦の腕から逃れようともがく。


「私は私が一番嫌い」

その言葉の衝撃は、すさまじかった。

失敗した、失敗した、失敗した! 間違えた、間違えたのだ、己は。

初めての挫折は麗が麗音に縋り付いて泣いている姿を見たとき。そして、今も。

麗なのだ。麗だけが明彦を絶望させる。


そうだ、ただでさえ自尊心の低い麗を追い詰め、心を砕いて手に入れた気になっていた。


「麗、麗っ」

指先が震えるのを抑え込み、頬に触れようとしたが振り払われた。

「もういや、もういやなの! 世の中にはもっと面倒見る価値がある可哀想な女の子はいっぱいいるから、明彦さんには私じゃなくていいでしょ!」


「馬鹿なことを言うな! 愛してるって言ってるだろ!」


「明彦さんが愛してるのは、明彦さんにとって都合がいい可哀想な私! だから、明彦さんといたら惨めになる。惨めだよ、私、ずっと惨め! シンデレラになんかなりたくなかった! 私は身の程を知ってたのに!」

麗はいつも自分を愛人の娘だと戒めていた。そんな必要はないのだと、思わせたかった、己の腕の中でならば。


「じゃあどうしたらよかったんだよ、どうしたらお前は麗音を見限った!? どうしたら手に入った!」


明彦は自分が無様に喚いていることに気づいていたが止められなかった。

「惨めなのは俺の方だ。いつだって麗に愛されたくてのたうち回ってる。俺がどれほど麗音に嫉妬して、苦しんできたと思ってる!」


わかっている、これは己の感情を押し付けているだけだ。

明彦のことなど眼中になかった麗を無理やり振り向かせて、己の愛を押し付けた。

余裕のある男のふりをして、必死だった。

「頼むから俺を見てくれよ、俺を捨てるなよ、麗音にしていたように何もかも賭けてくれなくていいから、ちょっとは俺を愛せよ、麗っ!」




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