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黒星
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走ればどうなるか、少し考えれば小学生でも分かることだった。
それでも、そんなコーラの存在すら完全に忘れてしまうくらいには
僕の脳内は未知の恐怖によって完全に支配されていたのだ。
とりあえず早く中に入って落ち着こうと思い直し
震える手で靴を脱ぎ、リビングへと向かった。
◆◇◆◇
「……うわぁ」
自室に戻り、恐る恐るレジ袋を開けて中身を確認した僕は、思わず声を漏らした。
「やっちゃった…最悪だ……」
案の定、圧力が限界に達したコーラはキャップの隙間からジワジワと溢れ出しており
ビニール袋の底に赤黒い液体が水溜まりを作っていた。
急いでキッチンへと走り、プラスチックの洗面器を取り出して流し台にセットする。
その中で慎重に袋からボトルを取り出した。
「はぁ…なんて日だ……」
大量のティッシュを使って、ベタつくボトルと袋の汚れを拭き取る。
幸いにも部屋の床や服への被害は最小限で済んだが、精神的なダメージはガックリと大きかった。
「……って言っても、まだ中身はちょっと残ってるし、これだけでも飲もう!」
がっかりしつつも気を取り直し、洗面器の中でゆっくりと蓋を回す。
プシュッ、と小気味よい爽快な音が響いた。
ボトルを傾け、口をつけて一気に流し込む。
「あー…っ、美味しい……っ!」
炭酸の鋭い刺激が、恐怖でカラカラに乾いていた喉に強烈に染み渡っていく。
その感覚がたまらなく心地よかった。
ペットボトルを持ったまま、ふとカーテンの隙間から窓の外を見やる。
外の夜の街並みは、何事もなかったかのように静まり返っていた。
「でも、さっきのあの足音…本当になんだったんだろう……」
もしかして、最近体調が不安定だから
ストレスによる幻聴とか?
でも、あんなにリアルな恐怖を感じたのは生まれて初めてだ。
「……まあ、いっか。もう家の中にいるわけだし、鍵も閉めたし」
自分に言い聞かせるように小さく呟いて、残りのペットボトルを机に置くと、椅子に深く腰掛けた。
そのまましばらくの間
僕はぼんやりと、コップに移したコーラの泡がパチパチと弾けて消えていくのを眺めていた。
◆◇◆◇
最初は、ただの偶然だと思いたかった。
僕の自意識過剰か
あるいは体調不良による勘違い。
そう思って無理やり忘れようとしていた。
しかし、その不可解な恐怖は、翌日の下校中にも再び僕を襲ったのだ。
学校からの帰り道
夕暮れの路地を歩いているとき
やっぱり、後ろからあの不気味な足音が聞こえる。
それだけじゃない。曲がり角の先や街灯の陰に
深いフードを深く被った見知らぬ男の姿を何度も見かけるようになり
僕の不安と恐怖は日に日に募っていった。
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