テラーノベル
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そして――それは、ある日の放課後だった。
教室に置きっぱなしにしてた俺のスケッチブック。
あれを、例のグループが勝手に開いて、笑いながら見てた。
「うわ、何これ?マジでキモッ! お前が描いたの? うわー、陰キャ全開じゃん」
「なんで人の顔ばっか描いてんの? ストーカー?」
教室の中で、笑い声が響いた。俺の絵が、紙が、ぐしゃぐしゃにされていく。
俺は声を出せなかった。ただ、立ち尽くしてた。
そのとき。
「――てめぇら、何やってんだよ」
陽翔の声だった。低く、静かで、今まで聞いたことないトーン。
「人のもん勝手に触って、勝手に笑って、何様だよ。返せよ、今すぐ」
田村たちは笑いながら言った。
「うわー、来た来た、転校してきたヒーロー気取り〜」
その瞬間、陽翔の拳が机を殴った。
バンッ!って、すげえ音がした。誰もが一瞬、黙った。
でも――殴ったのは、机だけだった。
「俺はヒーローなんかじゃねぇ。
でも、こいつのこと、勝手に壊させねぇよ」
それを聞いて、俺の中の何かが――音を立てて崩れた。
コメント
1件
凄い……