テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
恵
344
#連載小説
観察者
161
星キラリ

1,755
「……やっと見つけた」
モニターの中の少年が笑っている。
その顔は、幼い頃の悠真だった。
いや。
正確には。
悠真自身が覚えている幼少期よりも、さらに幼い。
五歳。
いや、四歳ほど。
「……俺……なのか?」
悠真が呟く。
画面の少年は答えない。
ただ、こちらを見つめている。
その瞬間。
モニターに文字が浮かんだ。
【被験者000】
【神崎悠真】
【年齢:4歳】
【記憶保存率:100%】
悠真の呼吸が止まる。
「四歳……?」
母が俯いた。
「母さん」
「……」
「説明してくれ」
母は黙っている。
「俺は四歳の時に何をされた?」
「……あなたは」
母の声が震える。
「一度、死んだの」
悠真は目を見開いた。
「また……?」
「違う」
母は首を振る。
「あなたがこれまで聞かされてきた話とは違う」
「じゃあ何なんだ?」
母は画面を見る。
「000は、あなたの最初の身体」
「……」
「あなたは四歳の時、病気で死んだ」
悠真は何も言えなかった。
そんな記憶はない。
母は続ける。
「でも、お父さんは諦めなかった」
「それで……転生実験を?」
「最初は違った」
母は目を閉じる。
「お父さんが研究していたのは、死者の記憶を保存する技術だった」
「記憶を……?」
「脳が死んでも、そこに残っている情報を保存する」
「それを別の身体に?」
「そう」
悠真は画面の000を見る。
「じゃあ001は……」
「000の記憶を使って作られた最初の身体」
白髪の神崎が口を挟んだ。
「違う」
全員が振り返る。
「001は、000を再現した身体じゃない」
白髪の男は淡々と言う。
「000そのものだ」
「……?」
「身体は違う」
「でも、記憶は同じ」
悠真は眉をひそめた。
「それなら……俺と同じじゃないか」
「そうだ」
白髪の男が笑う。
「だから、お前は自分が000なのか、013なのか、区別できない」
その言葉に。
悠真の頭の中で、何かが繋がった。
今まで見てきた自分。
001。
013。
そして014。
全部。
記憶を受け継いでいる。
「……じゃあ」
悠真は呟く。
「俺は何人目なんだ?」
誰も答えない。
代わりに。
014が答えた。
「数える意味がない」
「……」
「身体が変わっても、記憶が同じなら同じ人間なのか」
少年は自分の胸を押さえる。
「それを確かめるための実験だった」
悠真は言葉を失う。
その時。
突然、病院のスピーカーから別の音声が流れた。
『記憶同期、第二段階へ移行』
母が顔を上げる。
「まずい……」
「何が?」
「この病院は、まだ実験を続けている」
「……?」
『対象者を選別します』
『記憶適合率を測定』
『自発的な死を選択した者を優先します』
悠真の表情が変わった。
「自発的な……死?」
画面に大量の名前が表示される。
そして。
その横に、日付。
死亡。
死亡。
死亡。
死亡。
死亡。
悠真は見覚えのある日付を見つけた。
「……これ」
三年前。
五年前。
七年前。
そして。
最近の日付。
「この人たち……」
佐伯が画面を見て呟く。
「自殺者の一覧だ」
悠真は振り返る。
「……自殺事件?」
佐伯は頷く。
「俺たちが最初に追っていた事件だ」
悠真は画面に近づく。
そこには。
全国各地で発生した自殺者の名前が並んでいた。
しかし。
名前の横には、もう一つの項目がある。
【記憶適合率】
52%。
67%。
71%。
89%。
そして。
【96%】
悠真の目が止まる。
その人物の名前を見た瞬間。
悠真は凍りついた。
「……嘘だろ」
そこに書かれていた名前。
それは。
三年前に死亡した。
佐伯修司だった。
「佐伯さん……?」
佐伯本人が画面を見る。
「俺が……?」
「死亡日も同じだ」
「……」
佐伯の顔から血の気が引く。
悠真はさらに下を見る。
そこには。
もう一つ。
【神崎悠真】
【死亡歴:13回】
【記憶適合率:96%】
そして最後に。
赤い文字。
【次回候補:014】
悠真の手が震える。
「……自殺者は」
母が静かに言う。
「転生者を探すために集められていた」
「……」
「自分から死んだ人間は」
母は目を伏せる。
「次の身体へ記憶を移しても、抵抗しにくい」
悠真は拳を握る。
「じゃあ……あの噂は」
「そう」
母が答える。
「『死ねば転生できる』という噂」
「それを……」
「この組織が流した」
静寂。
悠真は何も言えなかった。
ずっと増えていた自殺事件。
突然広がった転生の噂。
カルト教団。
廃病院。
記憶移植。
全部が。
一本の線で繋がっていく。
しかし。
014が小さく笑った。
「まだ違うよ」
「……何が?」
「母さんは一つだけ言ってない」
母が振り返る。
「014……」
少年は悠真を見る。
「転生の噂を流したのは、この組織じゃない」
悠真は眉をひそめる。
「じゃあ誰が?」
014はモニターを指差した。
画面には。
【被験者000】
そして。
その隣に。
【発信者】
という項目が表示された。
そこに記されていた名前は。
神崎悠真。
「……俺?」
悠真の声が震える。
014は頷いた。
「そう」
「でも俺はそんなこと……」
「今のお前は知らない」
014は静かに言った。
「だけど、000のお前は知っていた」
モニターの少年が笑う。
そして。
画面越しに口を動かした。
『全部、俺が始めた』
悠真は凍りついた。
その瞬間。
病院の地下から。
巨大な機械音が響いた。
ゴゴゴゴゴ……。
床が揺れる。
母が叫ぶ。
「始まった……!」
「何が?」
母は悠真を見る。
「014への記憶移植じゃない」
「……じゃあ何だ?」
母の顔が絶望に染まる。
「000を、この世界に戻すの」
その瞬間。
モニターの中の少年が。
ゆっくりと目を開いた。
「おかえり」
そして。
病院全体の電源が落ちた。
コメント
1件
ええっ第17話…!!!😭💦 めっちゃ重い…でもめっちゃ面白い…!! 「000」の存在ってそういうことか…ってゾッとしたし、佐伯さんが♡♡♡者リストに入ってたシーンはマジで声出た… 悠真が自分で噂を流してたってラスト、鳥肌立ったよ…「おかえり」の一言が怖すぎるんだが!? 続きが気になって今夜眠れそうにないんだけど〜!!🫠💕