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少年の剣が揺れる瞬間、背後から微かにサリエルの声が届いた。
「アゼリア…止まれ。」
その声は、処刑場に響く重苦しい空気を切り裂く。
少年は一瞬足を止め、剣を握る手の震えを感じる。
その瞬間、心の奥底で何かが共鳴した――怒りと復讐心に染まりかけていた心が、一瞬静まったのだ。
「…サリエル?」
声を出すと、自分でも驚くほどの震えが入る。
「今、この場で戦うのは間違いだ。あなたは…まだ、未来を選べる。」
サリエルの声は弱々しいが、力強く、少年の意識に直接届くようだった。
少年すると不思議なことに、処刑場にいた天使たちは次々に膝をつき、意識を失って地面に倒れていく。
一瞬の静寂――世界が止まったかのようだった。
少年は剣を握りしめたまま、倒れた天使たちを見下ろす。
「サリエル、どうして…」
「あなたを止めるためじゃない。逃げて、アゼリア。魔界へ――ここから離れて。」
サリエルは苦しそうに息を吐き、かすれた声で続ける。
「僕は…もう…無理だ。あなたは、大切な人を守る力がある。」
少年の胸に、熱いものが込み上げる。
怒りと悲しみ、恐怖と覚悟――すべてが渦巻き、涙がこぼれそうになる。
「…サリエル、私を置いて…!」
「アゼリア」
サリエルはわずかに笑った。微かで、かすれた笑み。
「あなたは、正しい道を選ぶだろう。どんな世界でも…あなたなら生き抜ける。」
そして最後に、サリエルはそっと息を引き取った。
剣を握る手の重みを感じ、少年は深く息を吸う。
目の前で失われた命、その温もりはもう戻らない。
だが、その声と微かな笑みは、心の奥底で光を残していた――守るべき人のために振るう、刃の意志となって。
少年は剣を握り直し、倒れた天使たちの上を踏み越えながら、サリエルの意思を胸に刻む。
復讐心に飲まれそうになる感情をぎりぎりで抑え、守るための道を選ぶ――
その背中で、黒く染まった羽が静かに揺れ、闇と光の狭間で覚悟を示していた。