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「なので早瀬さん。望月さん・・あっ、今日は透子さん、ですね」
「三輪ちゃん。慣れないでしょ?私が職場では変わらず旧姓の望月のままでいるからそっちのが呼び慣れてるよね」
結婚してから、早瀬 透子になったワケだけど。
職場では、旧姓のままの方が仕事がやりやすいからそのままにしていて。
三輪ちゃんは変わらず、その呼び方で呼んでもらってる。
なんか、三輪ちゃんには、ずっとその呼び方されてたいんだよね。
慕ってくれているその呼び方が、なんか心地よく感じて。
だけど、今日はさすがに気になったのか言い直してくれた三輪ちゃん。
「でも今日は新婦として早瀬さんなので。透子さんって呼ばせてもらいますね」
「うん」
正直職場で旧姓でいると、やっぱりたまにそれを意識しないこともあったりする。
自分の立場としては、職場では変わらないし、結婚したからといってもちろん皆に態度も変えてほしくない。
だから職場では、気を引き締める為にも、望月透子として。
それ以外では、早瀬透子として。
だけど、なんだかそれが自分にはバランスが良くて。
今はどちらの自分も好きだから。
望月透子としての自分も、早瀬透子としての自分も。
どっちも本当の自分。
樹と対等にいられる自分を好きでいられる自分。
「早瀬さん。透子さん。この先も誰もが羨む最高にお似合いの二人でいてください!そして末永くお幸せに!」
「ありがとう。三輪ちゃん」
「ありがとう」
樹と二人で三輪ちゃんにお礼を言う。
「ブーケもホントに素敵。さすが三輪ちゃん、私の好きな感じわかってくれてる」
「ですよねー!どれだけ透子さんについてきてると思ってるんですかー。っていうか、透子さんそんなイメージなんですよね、私の中で。いつも凛としててカッコよくて綺麗で。だけど時には可愛い部分があったり繊細な部分があったり。そんな感じをこの花のデザインと色で表現してみました」
三輪ちゃんはホントわかってくれてるな・・。
こんなイメージなんだなと少し照れくさくもあるけど、でも三輪ちゃんのその気持ちがすごく嬉しい。
「ホントにありがとう」
私は三輪ちゃんの実は頼りになるその逞しさや、いつでも元気な明るさに随分励ましてもらってたよ。
これからもどうぞよろしく。
「では、そろそろ司会、スタンバイしますね。もう参列者の皆さんお揃いなので」
「うん。よろしくね」
「はい!」
そう言って三輪ちゃんは明るくその場所へと向かっていった。
「樹。ずっとこんな感じ続いていくの?」
そしてその場で二人になって、樹に声をかける。
「ん?何が?」
「なんか一つずつ周りの大切な人が今日のこの特別な日に幸せをくれるっていうか・・」
「あっ、気付いた?」
「やっぱりそうなんだ?」
「言ったでしょ?今日は透子が幸せになる日だって。皆にね、力を貸してもらって幸せな結婚式作りたかったんだよね」
「えっ?」
「透子がさ、幸せになる為に、この結婚式で皆、自分達から望んで一人ずつ幸せをわけてくれてるんだよね」
「どういうこと?」
「オレがさ、こうやって手作りで気持ち込めた結婚式作りたいって言った時、皆が自分の出来ることを協力したいって。自分達も一緒に幸せな結婚式作りたいって皆が言ってくれた」
「だから・・?美咲がヘアメイクしてくれたり、麻弥ちゃんがウエディングドレス作ってくれたり、三輪ちゃんがブーケ作ってくれたり・・」
そう言われて、一つ一つが繋がって来る。
皆が私の為に、力を貸してくれて幸せにしてくれている。
「そういうこと」
樹は優しくそう言って微笑んでくれる。
「実はさ、今日のこの会場の別荘も」
「ここも?」
「透子。もう少しこっち来て」
そう言われてその部屋の窓際まで移動する。
さっきまで見えてなかったけれど、そこに立ってまたその光景に驚く。
開け放した大きな扉越しから見えるその景色。
「すご・・」
そこに広がるのは緑あふれるとても素敵なガーデン。
この場所から見える場所だけでもすごく広いお庭で、初めて見るその凄さに圧倒される。
「ここでオレ達の結婚式挙げよ。この場所でさ、父さんが結婚式したらどうかって言ってくれたんだ。父さんが好きなこの空間でさ、ぜひオレたちにここで式を挙げてほしいって」
「お義父さんが・・?」
「そう。会社の屋上あんなにこだわって作った父さんだからね。この別荘の庭も、父さんすごくこだわって作ったみたい」
確かに、あの屋上すごく素敵だった。
高いビルの最上階に存在している特別な空間。
なのにそこには心癒されて心が洗われる落ち着く場所で、いろんな想いを抱えた人がそこで元気をもらって帰っていく。
私も樹とちゃんと向き合って話せた場所。
その屋上よりももっと広くて壮大な景色が今ここには広がっていて。
細部にこだわったデザインの緑や花々が所々存在している。
「あの屋上も素敵だったけど、ここはもっと素敵」
「だから親父が一番好きなこの場所で、オレたちの幸せな姿を見たいって、親父がここ用意してくれた」
「嬉しい。そんな特別な場所で結婚式出来るなんて・・」
きっとどんな場所よりもここで出来るのが嬉しい。
ガーデンウエディング。
ブライダルの仕事をしながら、実は自分がするなら理想で一番憧れていたスタイル。
「この場所は親父からのプレゼント」
今ではなんか不思議に感じる。
あんなに樹はお義父さんとの関係を悩んでぶつかって苦しんでいたのに。
今では、樹と私の為に、こんな素敵なプレゼントまで用意してくれて。
もうこれだけで幸せすぎるな。
「お義父さんからそんなこと言ってもらえたなんて幸せすぎるね」
「こんな日が来るなんてオレも思ってなかったけどね」
「そうだよね。でも今はお互い大切に思い合ってる存在なのわかってるし」
「実際は親父に結婚認めてもらえなくて、これだけ幸せになるまで時間かかったワケだけどね。でも今ちゃんと祝福してもらえるからこそ、こうやってカタチにしたかったんだよね」
「うん。嬉しい。今がすごく」
今二人でこの場所でこうやっていられる幸せ。
二人にたくさんの人が力を貸してくれて祝福してくれる幸せ。
今日訪れる幸せを、一つ一つ噛みしめていこう。
たくさんの人がくれるこの幸せを。
樹と二人で感じられるこの幸せを。