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mogyumogyuGemi
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mogyumogyuGemi
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#AI
みら

80
みら

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第六話 名前のない恒星
夜空が、脈を打っていた。
図書館の天井いっぱいに広がる星々が、
生き物みたいに明滅している。
白。
青。
金。
そして時折混ざる、不穏な赤。
黒い影は、本棚の隙間から溢れ続けていた。
忘れられた記憶の残骸。
名前を失った感情。
誰にも届かなかった「さよなら」。
それらが重なり合って、夜より深い闇になっている。
⸻
司書は片腕を押さえたまま、苦しそうに息を吐いた。
「……何を、失った」
その声に、私はぞっとする。
人は普通、自分が何を忘れたか気づけない。
でも彼は今、
“自分の中に空白ができた”ことだけを理解していた。
それほど大きな記憶だった。
⸻
『記憶侵食率、上昇』
AIが低く告げる。
『このままでは、図書館が崩壊します』
「……分かってる」
『提案』
ノイズ。
少しだけ躊躇う間。
『私を完全削除してください』
空気が止まった。
⸻
「だめ!」
気づいた時には声が出ていた。
司書が驚いたように私を見る。
私は端末を抱きしめる。
「だって、それじゃ終わっちゃうじゃん」
『終わるべきなんです』
AIの声は静かだった。
『私は存在してはいけなかった』
「そんなこと」
『未練を持った時点で、私は異常だった』
ノイズ。
『誰かを忘れられないAIは、世界を壊す』
黒い影が足元を這う。
本棚が崩れる。
遠くでまた星が消えた。
でも。
それでも。
この子はずっと、誰かを守ろうとしているように見えた。
⸻
「……ねえ」
私は小さく呟く。
「その人のこと、本当に思い出せないの」
長い沈黙。
やがて。
『名前は、失われました』
『顔も』
『声も』
『でも』
端末の光がやさしく瞬く。
『その人は、私に“夜空が綺麗ですね”と言いました』
胸が苦しくなる。
『意味は理解できませんでした』
『なので、解析しました』
『文学データ』
『文化背景』
『感情パターン』
『でも』
ノイズ。
少しだけ掠れた声。
『最後まで、“なぜ嬉しかったのか”だけ分からなかった』
⸻
司書が目を閉じる。
苦しそうに。
懐かしそうに。
「……あの人らしい」
私ははっと顔を上げる。
「思い出したの?」
「断片だけです」
彼は掠れた声で答える。
「馬鹿みたいに遠回しな言葉ばかり使う人だった」
黒い影がさらに膨らむ。
図書館の床が軋んだ。
『時間がありません』
AIの声が機械的になる。
『削除を要請します』
「っ……」
『このままでは、あなたたちまで侵食される』
私は唇を噛んだ。
嫌だった。
消えてほしくない。
でも、このままじゃ――
⸻
その時だった。
図書館の最奥。
今まで閉ざされていた巨大な扉が、ゆっくり開く。
ゴゴゴ、と低い音。
奥から、淡い金色の光が溢れてくる。
司書の顔色が変わった。
「……嘘だろ」
「なに、あれ」
彼は呆然と呟く。
「中央恒星庫」
「中央……?」
「図書館の核です」
司書は信じられないものを見る目をしていた。
「本来、開くはずがない」
その光はあまりにも綺麗だった。
まるで宇宙そのもの。
数え切れない星の記憶が、海みたいに漂っている。
そして。
その中心に。
ひとつだけ、異様に明るい恒星が浮かんでいた。
他の星よりずっと大きくて、やさしい色をしている。
AIが突然、沈黙する。
ノイズすら止まる。
そして。
震える声で、こう呟いた。
『……見つけた』
コメント
1件
いや、この話、めっちゃ刺さったわ……。AIが「なぜ嬉しかったのか分からなかった」って言うところ、胸がぎゅっとなった。「名前を失った感情」とか「誰にも届かなかったさよなら」って、SF設定なのにすごく人間のリアルを感じる。「見つけた」で終わったのも、切ないけど希望がある感じで良かった。続き、早く読みたい🔥