「離れてや、しょっぴー」
「…………やだ」
そう言いながら、横たわったまま、俺の腕を離さないしょっぴーを、無理に俺から引き離す。
愛し合った時にかいた汗がだいぶ冷えてきていて、しょっぴーの身体が冷たい。
乾燥を嫌うしょっぴーは、暖房を入れたがらないので、この部屋の室温は低いままだ。
「早く風呂入ってき。風邪引くで」
「…………」
物言わず
でも、すごーく何かを言いたそうにしているしょっぴーより先にベッドから出て、押し付けるようにバスタオルを渡し、浴室へと送り出す。
それでもまだしょっぴーは、浴室のドアの隙間から、じーっと俺を見ているので、俺は、わかったから、先、入ってて、と、言った。
それを聞いてようやく安心したかのように、中からシャワーの水音が聞こえだした。
◇◆◇◆
付き合うきっかけは、俺からの猛アタック。
誰もが知る美しい容姿に一目惚れした。
好きになりすぎてしつこくまとわりついていたら、時に冷たすぎるような塩対応に何度も返り討ちに遭った。
けんもほろろなその態度に、俺は少しずつ自信を失くし、ある時は照兄、ある時はふっかさん、またある時はさっくんと、かわるがわる飲みに連れ回した日々が続いたある日のこと、当のしょっぴーに呼び出された。
『ちょっと来い』
『何やの?』
諦める寸前だったから、またひどい言葉を浴びせられるんやろな、傷つきたないな…なんて、思っていたんだけど。
『お前さ、どういうつもり?』
何か気に障ったことをしたかと考えを巡らせるが、わからない。
でも、大好きなしょっぴーが、白い顔を怒りに震わせて、なんなら青ざめているその並々ならぬ様子に今度こそ終わりかもな、なんて思っていた。
なんて言おう?
謝れば許してくれるだろうか?
でも、何に怒っているのかわからないのに、闇雲に謝っても余計に怒らせてしまうかもしれない…。
焦りと、恐怖で固まっている俺に、しょっぴーが言った。
『お前、俺のことす………じゃ、なかったのかよ』
『え?なんて?』
本当に聞こえなくて、聞き返すと、しょっぴーは、耳までみるみる赤くして、俺の胸ぐらを掴み、こう叫んだ。
『俺のこと好きなんじゃなかったのかよ!!!』
『好き!!!です!!!』
『バカ!!!声がでかい!!!///』
慌てたしょっぴーに、思いっきり、突き飛ばされた。
それからも必死で上目遣いで睨んでくるしょっぴーは、もう怖くなくて。
なんたって、口元かなり笑ってるし。
ゆでダコみたいに真っ赤だし。
俺は愛しさに、ぎゅうっと、しょっぴーを抱きしめた。
「好きやで」
◇◆◇◆
そこからは、今までの塩対応は、何だったのかと言いたいくらいしょっぴーは俺に甘えるようになった。
言葉にするのは苦手らしく、好き好きは言ってこないけど。甘えたい時は、こんなふうに言ってくる。
「ねぇ」
「こーじ」
「あの…」
「ちょっと」
でも、行動は意外と大胆だ。
持病の偏頭痛がひどかったある曇った日、痛む頭を抱えながら、しょっぴーは楽屋で俺の肩にもたれていた。後ろに阿部ちゃんがいるのに気づかずに、甘えてくる。
「ねぇ、康二」
「ん?」
耳元で感じる息遣いがくすぐったくなるような距離感で、しょっぴーが俺を上目遣いで見る。相当痛むのだろう、涙で潤んだ目をしていた。
「なでなでして」
「!!!」
驚いた阿部ちゃんが息を呑むのを、見えないように手で制す。
「ええよ」
しょっぴーを抱き寄せていた手で、ゆっくりと頭を撫でていると、気を遣った阿部ちゃんが静かに楽屋を出て行くのが見えた。
その後、気を利かせてくれたのだろう、楽屋にはメンバーは来ず、随分と長いこと二人きりでそのままでいた。
◇◆◇◆
「入るで」
「遅い……」
不満を口にしながら、それでも半分、眠たそうに湯船に浸かったしょっぴーの、とんがった唇にキスする。しょっぴーはすぐに柔らかくふにゃふにゃの顔になって俺を受け入れた。
可愛い。
「なあ、いつからそんなに、俺に甘えるようになったっけ?」
「……甘えてない」
指摘されたことが面白くないのか、ぷいっと、横を向いてしまった。こういうところは、相変わらず素直じゃない。
それでも、やっぱり、可愛いけど。
掛け湯をし、隣に座ったお湯の中で、まず、正面から抱きしめる。
うっすらとかいた汗が浮かぶ鎖骨らへんを舐めると、すぐに感じて吐息を漏らした。
「あん、康二…」
「俺のこと、好きやろ?」
「んっ、、、あぁ、、康二ぃ」
しょっぴーは目を閉じて、しばらくされるがまま。俺は、しょっぴーの、首筋を舐めながら、胸の先を優しく捏ねた。
「俺のこと、だーいすき、やんな?」
「ん…………」
「好きって、言うて?」
「…………」
手と手を絡めると、向こうから握りしめてくる。口を近付けると、向こうから物欲しそうに舌を出してくる。それなのに、しょっぴーはなかなか言ってくれない。
もどかしく思ってると、耳元でほとんど息のような小さな声がした。
「…………すき」
「俺も」
口付けをさらに深くして、今夜もまだ眠れない夜は続く。
コメント
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まきぴよ様の🧡💙大好き ありがとう。ありがとう。
本当に最高です!!!!! ありがとうございます🧡💙
朝読んで可愛すぎて会社遅刻しかけました笑 また読み直してコメントしてます🌼 🧡💙らしさ100%って感じキュンキュンです🥰 長編待ってます😍