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他に誰もいないおんりーの家。
雨が打ち付ける音と電車の走行音だけが音を立てている。
棚の上の写真たてには、無邪気な笑顔を浮かべる幼いおんりーと母親が微笑んでいる写真が入っている。
この姿になんとなく見覚えがある気がしたのだが、気のせいだろう。
きっと、気のせいだ。
ーーーーーー
〈おんりー‼︎〉
このままいつまで君に偽っていられるのか。
ごめんね、おらふくん。いや、蒼くん。
君は、もう覚えていないよね。
莉音の事なんて、覚えているわけないんだよね…
あの日、君の目の前から俺は姿を消した。だから、本名も言えないんだ。
『蒼くん、ごめんね。僕、もう行かなきゃ…』
〈いやだよぉ…〉
『でも僕は”せんぱい“の蒼くんに成長した姿を見せたいんだ。』
ーーーーーー
[明日退院できるでしょう。]
退院できることが決まったのは、君が消える4日前だった。
精神的ストレス、そして肺炎だったのだ。
どうやら、雨の中外で傘無しでいた為に引いていた風邪を拗らせたらしい。
でも、退院したら…俺達は離されてしまう。そんなのは嫌だ。
『……おらふくんはさ、大阪に帰りな。』
〈嫌だっ‼︎離れたくないっ‼︎〉
『いいんだよ。こんな未来もないような俺に割く時間を、もっと自分の為に使いな。』
〈……ねぇ、一緒に逃げようっ‼︎〉
退院1日前の6時。病院を抜け出し、家に帰る。大急ぎで荷物を詰めたら、これから夜も更けてくるが、逃げようと足を進める。
今日も大雨で、雷が鳴っている。寒いな…と手を温めながら歩く。
9月なのに、異常な冷え込みだ。
そして、雨。
[大雨警報が発令されています。自治体の指示に従い、不要不急の外出は控えてください…]
新宿の大きなビジョンではニュースが流れている。
ピロロローン。ピロロローン。
[え〜京浜東北線は、大雨の為運転を見合わせます。運転再開の見込みは立っていません〜]
マジかよ。タクシーで帰るか。うち泊まっていくよ。
そんな会話が聞こえてくる。
『…俺、消えちゃうのかなぁ…』
自分の袖を捲ってぽつりと呟くおんりー。
〈そんな事ないって‼︎〉
そう言ったら力強くおんりーの腕を掴んで立ち上がる。
〈降りよう。ここに居たところで埒が開かないよ。〉
手を取って、外に降り立つ。寒くて、白い息を吐く。
ホテルは、どこも満室か、受け入れてくれなかった。
彷徨って入ったビジネスホテルで、奇跡的に入る事ができた。
部屋に入って、ベットに飛び込む。そして2人で安堵の声を漏らす。
〈つかれたぁ…〉
『わかるw』
他愛のない会話をするうちに、夜も更けてきた。寝る準備をして、眠りについてしまった。
プリ小説も始めたからあとで紹介します()