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第一話 「うるさい先輩」
四月。
桜がまだ校門の周りを淡く彩る中、俺は新しい制服の襟を整えながら、高校生活の一日目を迎えた。
高校一年生。
「友達をたくさん作ろう」とか、「青春を楽しもう」とか、そんなことは考えていない。
ただ、静かに三年間を過ごせれば、それでよかった。
昼休み。
教室の喧騒から逃げるようにイヤホンを耳につけ、誰もいない旧校舎裏のベンチへ向かう。
再生ボタンを押す。
流れ始めたのは、何度も聴いてきたお気に入りの一曲。
音が流れると、不思議なくらい心が落ち着く。
「やっぱ、音楽っていいよな。」
そう呟いた、その時だった。
「お、同じ曲じゃん。」
突然、片方のイヤホンが耳から外された。
「えっ!?」
振り返ると、見覚えのない男子生徒が俺のイヤホンを耳につけて笑っていた。
胸元には、三年生の校章。
「いい曲選ぶじゃん、一年。」
「……返してください。」
「冷たっ!」
笑いながらイヤホンを返してくる先輩。
「神崎奏多、だよな?」
「……なんで俺の名前。」
「入学式で見た。」
「それだけで覚えたんですか。」
「うん。」
「怖いです。」
先輩は腹を抱えて笑った。
「俺、九条玲音。よろしく。」
「……よろしく、です。」
「よし、じゃあ明日もここな。」
「え?」
「また一緒に音楽聴こうぜ。」
「いや、約束してませんけど。」
「じゃ、決まり!」
「いや決まってないです!」
俺の言葉なんて聞こえていないように、九条先輩は手を振りながら去っていった。
「……なんなんだ、あの人。」
静かに過ごしたいだけなのに。
そんな願いは、高校生活一日目であっさり壊された。
でも、この時の俺はまだ知らなかった。
あの”うるさい先輩”が、これから先、誰よりも大切な存在になることを。
──第一話 終わり。
コメント
10件
やっぱ書くのうまいねw
あぁーやっぱいいなー! 最高!
部活行く前に読んだけど神作だ 、 、 ✨