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桜
桜が咲き始めた。
白に近い、淡いピンク。
春は上を見ても下を見ても花が美しい。
足元にはカタバミやオオイヌノフグリ、ナズナ…
世界が美しく色づいていく。
「いいか、美子、オオイヌノフグリは青、カタバミは黄色、桜は赤…
これは色の三原色と言って…」
私は思わず笑ってしまう。
「なんでそんな話をしてるのよ」
「いやぁ…知識はあればあるほどいいかなって…」
美子が言う。
「まぁ、綺麗だからそれでいいよね」
「そうね、綺麗ね」
コマが言った。
「ふと思ったんですけど」
「何?どうしたの?」
「桜の下に椅子とテーブルを備え付けたらお花見しやすいかなって」
「いいね、それ」
美子が言った。
私が許可を出すと、コマはどこからともなく持ってきた椅子とテーブルを設置した。
みんなでそこに座る。
そして深呼吸。
春の匂いがする。
「食べ物もお菓子もないけど、お花見ってこれで十分ですねぇ」
コマがしみじみと言う。
美子も桜を見上げる。
「お花見っていいね」
そうしてしばらく、私たちは桜の下ですごした。
椅子とテーブルはしばらくそのままにしておいた。
参拝客が…というか主にこの神社を散歩コースにしているご近所さんがときどき花見をしていた。
葉桜になるころ、私は小さな花の咲いた鉢植をテーブルに飾るのだった。
無名
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