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選ばれし者たちの学び舎

2 - 第二章 選ばれる前の日常

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2026年02月03日

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合格通知が来る前のわたしは、

自分の生活が壊れるなんて思っていなかった。


朝は目覚ましの音で起きて、

制服に着替えて、

母の焼いたトーストを急いでかじる。


「まどか、牛乳残ってるよ」


「時間ないからいい!」


そんな会話をしながら、玄関を飛び出す。

靴ひもを結び直すことも忘れて、

近道の角を曲がる。


通っていたのは、

駅から少し離れた公立中学校だった。

校舎は古くて、

雨の日は廊下が少しだけ滑る。


まどかは、その中で目立たず、

でも、埋もれすぎることもなく過ごしていた。


昼休みは、友だちと机をくっつけてお弁当を食べる。


「ねえ、今日の英語やばくなかった?」


「先生、機嫌悪かったよね」


取りとめのない話。

誰かが笑って、誰かが相槌を打つ。


まどかは、笑いながら思う。


――これで、十分じゃない?


特別じゃなくてもいい。

選ばれなくてもいい。


放課後は、家にまっすぐ帰ることが多かった。


寄り道するお店も、

話題になる場所も限られている。


夕方の商店街。

自転車のベルの音。

スーパーの特売の声。


全部、知っている音だった。


その日、担任に呼ばれるまでは。


「日向さん、少し時間あるかな」


職員室の隅の席。

差し出された白い封筒。


その瞬間、

なぜか胸がざわついた。


理由は分からない。

ただ、戻れない気がした。


この頃のわたしは、

まだ知らなかった。


この「普通」が、

どれほど大事だったのかを。


そして、

選ばれるということが、

どれほど静かに、日常を壊すのかを。

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