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のんのら達の夢小説@フォロバ
58
『世界でいちばん、君がいい。』
ハイキュー!! 二次創作BL小説
CP:及川徹 × 岩泉一(及岩) 幼馴染/両想い/甘々溺愛/付き合っている二人
1.「ねえ、岩ちゃん」
「岩ちゃーん」
「うるせえ」
「まだ何も言ってないんだけど!?」
「お前がその声出すときは、どうせろくでもねえことだからな」
「ひどくない!?」
放課後の青葉城西高校。部活を終えた体育館には、ボールを片づける音と、部員たちの賑やかな声が響いていた。
及川徹は、隣でボールカゴを押している岩泉一の肩に、こつんと額を寄せた。
「岩ちゃーん」
「だから何だよ」
「好き」
「……は?」
岩泉の足が止まった。
及川は、にこにこと笑っている。
「好きだよ、岩ちゃん」
「……っ、てめえ!! こんなとこで言うんじゃねえ!!」
「えー? だって好きなんだもん」
「だもんじゃねえ!!」
岩泉の拳が及川の頭に落ちる。
ぱこん、と小気味よい音がした。
「いったぁ! 暴力反対!」
「うるせえ、クソ川!」
「でも岩ちゃん、顔赤いよ?」
「気のせいだ!!」
「えへへ」
「笑うな!!」
いつも通りのやり取り。
周りの部員たちは、もはや見慣れた光景だというように、誰も気に留めない。
ただ一人、花巻だけが松川の肩を叩いて、小声で言った。
「……あいつら、付き合ってから余計ひどくなってね?」
「及川の岩泉愛が隠せなくなったんだろ」
「いや、付き合う前から隠せてなかったけどな」
二人の会話を聞きつけた及川が、ぱっと顔を上げる。
「ちょっと! 聞こえてるからね!?」
「聞こえるように言ったんだよ、クソ川」
岩泉はそう言って、及川の額を指で弾いた。
けれど。
ボールカゴを押す手が、ほんの少しだけ及川の手に触れたとき。
及川は、誰にも見えないように、その指先をそっと握った。
岩泉も、振りほどかなかった。
それだけで、今日一日頑張ったご褒美をもらったような気がした。
及川徹は、恋人になった岩泉一に、どうしようもなく弱い。
そしてそれは、たぶん。
岩泉本人が思っているよりも、ずっとずっと重症だった。
2.「俺だけにしろよ」
帰り道。
夕暮れの空はオレンジ色に染まり、二人の影が長く伸びていた。
及川は、隣を歩く岩泉の手を何度も見ていた。
繋ぎたい。
けれど、さっきまで部活仲間が一緒だったせいで、なんとなくタイミングを逃してしまった。
もう恋人同士なのに。
何年も一緒にいて、誰よりも近くにいたはずなのに。
手を繋ぐだけで、こんなに緊張するなんて思わなかった。
「……何見てんだよ」
不意に岩泉が言った。
「えっ!? いや、別に?」
「さっきからチラチラ見やがって。言いたいことあんなら言え」
「……手」
「は?」
「手、繋ぎたいなって」
言った瞬間、及川は自分の顔が熱くなるのを感じた。
うわ。
何これ。
俺、十代の初恋みたいじゃん。
いや、初恋みたいなもんだけど。
岩泉は一瞬だけ目を丸くしたあと、呆れたように息を吐いた。
「……んなこと、いちいち聞くな」
そう言って。
岩泉のほうから、及川の手を握った。
指と指が重なる。
大きな手。少し硬い指先。何度もボールに触れてきた手。
及川がずっと知っている手なのに、恋人として触れられると、どうしてこんなにも特別なのだろう。
「……岩ちゃん」
「何だよ」
「好き」
「知ってる」
「すっごく好き」
「……おう」
「世界で一番好き」
「はいはい」
「岩ちゃんは?」
岩泉が足を止めた。
そして、繋いだ手を少しだけ強く握った。
「……俺だって、好きだよ」
及川の思考が、完全に停止した。
「…………え?」
「だから、好きだっつってんだろ」
「…………」
「おい、何か言えよ」
「……岩ちゃんが?」
「他に誰がいんだよ」
「俺を?」
「そうだよ!!」
岩泉が怒鳴った。
耳まで赤かった。
及川は、口元を押さえた。
まずい。
まずいまずいまずい。
嬉しい。
嬉しすぎる。
普段なら、どんな試合でも冷静に状況を分析できるセッターなのに、岩泉がたった一言「好き」と言っただけで、頭の中が真っ白になってしまう。
「……岩ちゃん」
「何だよ」
「ぎゅってしていい?」
「……外だぞ」
「一秒だけ!」
「……チッ」
岩泉は周囲を確認してから、及川の腕を引いた。
一瞬。
ほんの一瞬だけ、及川の肩に額を寄せる。
それから、誰かに見られる前に離れようとした。
けれど。
「……もうちょっと」
及川が、小さく呟いた。
岩泉の動きが止まる。
「……徹?」
いつもの「クソ川」ではなかった。
名前で呼ばれた。
それだけで、及川はもう駄目だった。
「……あと五秒」
「……三秒な」
「えー!」
「文句あんならやめるぞ」
「ありません!!」
及川は岩泉を抱きしめた。
大切なものを壊さないように、でも離したくないという気持ちが伝わるように。
岩泉の体温が、制服越しにじんわりと伝わってくる。
ああ。
好きだな。
何年一緒にいても。
何度だって、好きになる。
「……岩ちゃん」
「ん」
「明日も、明後日も、その次の日も、ずっとこうしてたい」
岩泉はしばらく黙っていた。
それから、及川の背中に腕を回した。
「……勝手にしろ」
その声が、いつもよりずっと優しかった。
3.「お前のそういうところ、ずるい」
数日後。
及川は、練習中からずっと上機嫌だった。
トスは冴えているし、サーブも決まる。
花巻に「今日のお前、なんかキモいくらい調子いいな」と言われても、笑顔で返せるくらいには上機嫌だった。
理由は簡単。
朝、岩泉が「弁当、忘れんなよ」とメッセージをくれたから。
たったそれだけ。
いや、正確には。
そのメッセージの最後に、普段なら絶対に付けないような、小さなハートの絵文字が一つついていたからだ。
岩ちゃんが。
ハートを。
俺に。
「……及川、ニヤニヤしすぎ」
「えっ、そう?」
「うん。正直キモい」
「ひどいなぁ、マッキー!」
「岩泉に何かされた?」
「……!」
及川は口を閉じた。
花巻の目が細くなる。
「図星かよ」
「ち、違うし!」
「へえ?」
「……岩ちゃんが可愛かっただけだし」
「惚気じゃねえか」
「惚気じゃないもん! 事実だもん!」
「はいはい」
花巻は呆れたように笑った。
練習後。
及川は、体育館の隅でタオルを畳んでいる岩泉のところへ駆け寄った。
「岩ちゃん!」
「うるせえ。何だよ」
「今日、うち来ない?」
「何で」
「一緒にゲームしたい!」
「お前、昨日も言ってただろ」
「今日は別のゲーム!」
「……まあ、いいけど」
「ほんと!?」
「ただし、飯食ってからな」
「やったー!」
及川は思わず岩泉に抱きつきかけて、寸前で止まった。
ここは体育館。
みんながいる。
恋人になってからというもの、こういう場面で自制することを覚えたのだ。
……覚えたつもりだった。
「……徹?」
岩泉が不思議そうに首を傾げる。
「……何でもない」
「変な奴」
岩泉は、ふっと笑った。
それから、及川の頭にぽんと手を置く。
「いい子にしてろよ」
「…………」
及川の動きが止まった。
岩泉は何事もなかったかのように、荷物を持って歩き出す。
残された及川は、両手で顔を覆った。
「……むり」
「何が?」
後ろから花巻の声。
「……岩ちゃんが、可愛すぎる」
「重症だな」
「もう無理。俺、岩ちゃんのこと好きすぎて無理……」
「知ってる」
本当に、知っている。
けれど、及川はまだ知らない。
岩泉だって、及川の何気ない笑顔一つで、一日中機嫌がよくなることを。
試合中、真剣な顔でコートを見つめる横顔が好きなことを。
自分のことを見つけると、必ず一番に笑いかけてくれることが、何より嬉しいことを。
そして。
誰にも見せない顔を、自分だけには見せてくれる及川が。
どうしようもなく、愛おしいことを。
4.「……好きだ、徹」
その日の夜。
及川の部屋には、ゲームの効果音が響いていた。
「ちょっと岩ちゃん! 今の絶対ずるい!」
「お前が下手なんだろ」
「セッターに反射神経を求めないでよ!」
「何言ってんだ、お前」
岩泉は笑いながらコントローラーを置いた。
結局、ゲームでは岩泉が勝った。
及川はソファに倒れ込み、わざとらしく呻いている。
「もうやだ……岩ちゃん、俺に厳しすぎ……」
「お前が勝手に負けてんだろ」
「慰めてよぉ」
「はいはい」
岩泉は、及川の隣に座った。
及川はすかさず、その肩に頭を預ける。
「……岩ちゃん、あったかい」
「風呂入ったからな」
「そういう意味じゃないんだけどなぁ」
「知るか」
そう言いながらも、岩泉は及川の頭を軽く撫でた。
髪を梳くように、指先を動かす。
及川は目を閉じた。
こうしていると、安心する。
いつもは格好つけていたい。
頼れるセッターでいたい。
どんなときでも余裕のある自分でいたい。
けれど、岩泉の前では。
ほんの少しだけ、格好悪くてもいいと思える。
「……岩ちゃん」
「ん?」
「俺さ」
「おう」
「たまに、怖くなるんだよね」
岩泉の手が止まった。
及川は、目を閉じたまま続けた。
「岩ちゃんって、俺のこと何でもわかってるじゃん。俺が何考えてるかも、何で怒ってるかも、何を隠してるかも」
「……まあな」
「だからさ。いつか、俺の嫌なところも全部わかっちゃって……それで、嫌いになられたらどうしようって」
言ってしまってから、少し後悔した。
こんなの、及川徹らしくない。
もっと余裕のある言い方をすればよかった。
冗談っぽく笑い飛ばせばよかった。
でも、岩泉は笑わなかった。
「……徹」
優しい声だった。
及川が顔を上げると、岩泉は真っ直ぐにこちらを見ていた。
「お前、俺が何年お前の隣にいると思ってんだよ」
「……うん」
「お前が調子乗るところも、面倒くせえところも、負けず嫌いなところも、全部知ってる」
「……うん」
「それでも、俺はお前が好きなんだよ」
及川は息を止めた。
岩泉は、少しだけ困ったように笑った。
「……っつーか、今さら嫌いになれるわけねえだろ」
「……岩ちゃん」
「お前は、もっと俺を信用しろ」
その言葉は、及川が思っていたよりもずっと深く、胸に届いた。
ずっと隣にいてくれた人。
何度転んでも、立ち上がるまで待っていてくれた人。
自分が自分を信じられなくなったときでも、決して見放さなかった人。
及川徹にとって、岩泉一は。
ただ好きな人というだけではなかった。
自分が自分でいられる場所だった。
「……岩ちゃん」
「何だよ」
「キスしていい?」
岩泉は、一瞬だけ目を見開いた。
それから、視線をそらす。
「……いちいち聞くな」
「……それ、いいってこと?」
「……そうだよ」
最後のほうは、ほとんど聞こえない声だった。
及川は、ゆっくりと顔を近づけた。
岩泉も、ほんの少しだけ顔を上げる。
唇が触れた。
ほんの短い、優しいキスだった。
離れたあとも、二人はしばらくそのまま見つめ合っていた。
「……岩ちゃん」
「……何だよ」
「もう一回」
「……調子乗んな」
「お願い!」
「……一回だけだぞ」
「やった!」
「声がでけえ!!」
今度は、岩泉のほうから及川の頬にキスをした。
ちゅ、と小さな音がした。
「……っ!?」
及川が固まった。
岩泉は顔を真っ赤にして、そっぽを向く。
「……これで満足か」
「…………」
「おい」
「…………岩ちゃん」
「何だよ」
「……俺、今、人生で一番幸せかもしれない」
岩泉は、困ったように眉を下げた。
それから、及川の手を取った。
「……大げさだ、バカ」
そう言って。
指を絡める。
「……俺も、幸せだよ」
及川はもう、何も言えなかった。
ただ、繋いだ手をぎゅっと握り返した。
5.世界でいちばん、君がいい
帰り際。
玄関で靴を履きながら、岩泉はふと思い出したように振り返った。
「徹」
「んー?」
「明日、朝練の前にちょっと早く来いよ」
「え、何で?」
「……一緒に行く」
及川は瞬きをした。
「……え?」
「だから、一緒に学校行くっつってんだろ」
「……岩ちゃんから?」
「嫌ならいいけど」
「嫌なわけないじゃん!!」
及川は靴を放り出しそうな勢いで立ち上がった。
「行く!! 絶対行く!! 何時!? 何時に行けばいい!? 俺、五時でもいいよ!?」
「早すぎんだろ!! いつもより十五分早くでいい!!」
「十五分も岩ちゃんと二人きり……!?」
「お前、マジでうるせえな!!」
岩泉は笑った。
及川も笑った。
いつもと同じ、くだらなくて、騒がしくて、何でもない会話。
けれど、二人の間には確かに、昨日までとは違うものがあった。
好きだと伝えること。
好きだと返してもらうこと。
手を繋ぐこと。
抱きしめること。
少しだけ弱い自分を見せること。
そんな一つひとつが、二人の関係を少しずつ変えていく。
玄関の扉を開ける直前、岩泉が及川を振り返った。
「……徹」
「なあに、岩ちゃん?」
「……明日も、明後日も」
岩泉は、少し照れくさそうに目を伏せた。
「……その先も、よろしくな」
及川は、ぽかんと口を開けた。
そして。
「……っ、岩ちゃん!!」
「うわっ、おい!!」
勢いよく抱きついてきた及川を、岩泉は受け止めた。
「好き!! 大好き!! もう一生離さない!!」
「重い!! あと一生は気が早え!!」
「じゃあ百年!!」
「大して変わんねえだろ!!」
「岩ちゃん、結婚して!!」
「話飛びすぎだ、クソ川!!」
そんなことを言いながらも。
岩泉は、及川の背中に腕を回した。
ぎゅっと、強く。
「……まあ」
及川の肩に顔を埋めたまま、小さく呟く。
「……ずっと一緒にいてやるよ」
及川は、息を呑んだ。
そして、世界でいちばん幸せな顔で笑った。
「……うん」
夕暮れの玄関。
いつもなら照れ隠しに悪態をつく岩泉が、その日は最後に、及川の手をもう一度握った。
「……好きだよ、徹」
及川は、今度こそ泣きそうになった。
「……俺も。岩ちゃんが、世界でいちばん好き」
何年も隣にいた。
何度も喧嘩した。
何度も笑った。
何度も、お互いの背中を押してきた。
そしてこれからも、きっと。
二人は、隣を歩いていく。
コートの上でも。
帰り道でも。
何でもない日常の中でも。
及川徹が、何度だって恋に落ちる相手は。
岩泉一、ただ一人だった。
――END――
💙💚 及岩、末永くお幸せに!!!!
コメント
1件
第2話、読ませていただきました! 及川の“岩ちゃん大好き”が全面に出てて、もう可愛すぎてにやけました。特に岩泉が『好きだよ』って言うシーン、あの照れくさそうな感じがリアルで胸がきゅっとなりました。二人の距離が少しずつ縮まる描写が丁寧で、読んでいて幸せな気持ちになりました。これからも二人の日常をぜひ見守りたいです。