彼女の顔にかかっている髪をそっと耳にかけてやる・・・・
滑らかな肌・・・長いまつ毛・・・・・
こんな花柄の服を着ていると、まるでお姫様の様だ、こんな儚い彼女に暴力をふるうなんて考えられない
いったい何をしたら、そんな酷いことが出来るんだ
しかし柚彦は理解していた、世の中には本当に罪もない人間に、非道になれる輩はいるものだ・・・・
もちろんあの時はキックの力は加減していた、もし手加減せずに蹴っていたら、アイツのは顎は砕け、地面に這いつくばっていたに違いない
しかし次にアイツと出くわすことがあったらもう容赦はしない、柚彦はギリリと歯をくいしばった
ポポがベッドに登り、二人の足元に来てくるくる回ってうずくまり目を閉じた
途端に柚彦にも眠気が襲ってきた、柚彦は鈴子を抱きしめたまま、自分も布団に吸い込まれるように眠った
・・・
しばらくして唸り声に異変を感じて、柚彦が目を覚ました。すると隣で鈴子が泣きながら忙しく寝返りを打っていた
「・・・鈴ちゃん?」
鈴子はうめいた
「いやっ!やめて!やめてったら!!」
すぐに飛び起きて柚彦は鈴子の名前を呼びながら揺さぶった
「鈴ちゃん!鈴ちゃん!目を覚まして!」
「うっ・・うっ・・・いやぁ~・・・痛いのよぉ~・・・お願いだからもう終わってぇ~・・・・ 」
鈴子は身をもがいて、柚彦の手から逃れようとする
「鈴ちゃん!僕だよ起きて!今見てるのは夢だよ!さぁ目を覚まして君は見ているのは悪い夢なんだから 」
鈴子はパッと目を開け、柚彦を見つめた、やがて夢の世界の霧が晴れたように、柚彦をじっと見つめた、みるみる目に涙がたまってくる
「ユ・・・ズ・・彦・・君・・ああっ!柚彦君」
彼女は泣きだした、柚彦の首にしがみつき、ガタガタ震えている
「とうとうアイツに捕まってしまったの!怖かった! 」
「もう大丈夫だよ、捕まったりなんかしないよ、誰も君を捕まえたりなんかしないから安心して」
柚彦は鈴子をしっかり抱きしめ、髪を撫でて彼女を落ち着かせようとした
「ほら、僕がついているよ、何も怖い事なんかないよ 」
しゃくりあげる鈴子を柚彦はゆっくり前後に揺すって髪をなでつけ、低い声で慰めた
怖がらなくていい、必ず守るから、何度も何度も同じ言葉を耳元にささやいているうちに、鈴子の泣き声もしだいに静かになり、かすかな震えの残る体をぐったりもたせかけてきた
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