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#風見裕也
#降谷零
花梨
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#ポケモン夢小説
1.もうひとつの名前
「プレゼント?」
『えぇ。次の仕事を成功させたらその祝いに新たな名前─すなわち、コードネームを与えようかと思いましてね』
時刻23時。子供が起きているにはもう遅い時間に、 杏咲は突如としてかかってきた電話を取った。スマホの向こうからは機械を通したような無機質でくぐもった声が聞こえる。少し聞き取りづらい。
都内某所、とあるホテルの人気のないパーティールーム。彼女の前には、既に息を引き取った男が床に力なく倒れている。毒殺だ。
殺すつもりはなかった。いや正確に言えば殺す算段ではあったが杏咲が殺す手筈ではなかった。急な計画の変更により仕方なし、だ。
「…兄さんは?」
『今そちらに向かっているようですよ。姿を見られる前に戻って来なさい』
「了解」
電話を切ろうとしたが先に相手に切られたことに気づく。終話音が辺りに薄く響いている。
静まり返った大部屋を何食わぬ顔で後にした杏咲は、このとき僅か12歳という幼さだった。
2.企み
「仕事だ。先月取引をした社長を殺せと命令があった」
同日、カラスのような真っ黒な色をしたポルシェ356Aが大通りをまっすぐ駆け抜ける。運転席に座るウォッカの隣でジンは腕を組みながらそう言った。
「…どうしてですかい?」
「例のプログラムのために組織から出した金を横領しマニラに逃亡したらしいとベルモットから連絡が入った。金目的でハナからオレたちに協力する気はなかったというワケだ。情報をバラされる前にあの世に送り込む」
「じゃあ俺とアニキで…」
「あぁ、だが殺るのはオレたちじゃねぇ」
ジンは咥えていたタバコを口から離し、静かに息を吐いた。車内に煙が蔓延し視界が霞む。
「これはあの兄妹にやらせる」
「え?あの兄妹って…しかし兄貴…アイツらはまだガキで、しかもコードネームもない下っ端だってのに役に立つんですかい?」
「この殺しで使えるヤツかどうか判断するとラムからの伝言だ。妹の方は囮に使う。 あの兄妹は頭は悪いが筋はいいからな。使うだけ使って、必要なくなったら捨てればいい。万が一の事態になればラムがどう言おうと殺って構わねぇよ」
それと、 と付け加える。
「標的は速水佑利に始末させる
「兄貴じゃないんですかい?」
「あぁ、ちょっとな…」
ジンは不敵な笑みをフッと浮かべてみせた。
真っ黒な2人を乗せた真っ黒な車は、輝く夜の街を通り過ぎ、暗闇に紛れ、やがて見えなくなった。
3.計画
「マニラ…!?」
翌朝、佑利は夜遅くに届いていたメールの内容に目を丸くした。
「どうしたの」
「いや…ウォッカから新しい任務のメールが届いたんだ。ジンとウォッカ、キャンティとコルン、あと俺たち2人で─ 」
「…フィリピンまで?」
佑利の持っていたスマホの画面を肩越しに杏咲が覗き込む。寝ぼけて見間違えたのかもしれないと佑利は思ったが、何度目を擦っても「マニラへ向かう」と書かれたメールの文章は変わらない。あまりに急すぎる。まだ飛行機にすら乗ったことがないというのに。
「任務内容は?」
「直接説明するって。準備でき次第すぐに発つらしい、急ごう杏咲」
2人は眠い目を無理やり覚まし布団から飛び出した。のんびりしている暇はない。
組織が所有し、名もない構成員が操縦するジェット機に乗りながら2人はジンから任務の概要を聞いた。
「これが今回の標的だ。ヤツは今夜ここのバーで別の取引相手と飲む約束をしている。 オレとウォッカはこの位置で監視。キャンティとコルンはこのビルの上だ」
机に広げた地図を指さし、それと照らし合わせたバーの写真を見ながら言う。
見ているだけで目が痛くなりそうなショッキングパープルに染められた店内。棚にはズラリと並んだ高そうな酒のボトル。
落ち着いたほの暗い空間に流れる静かなジャズ、知る人ぞ知る穴場…といった感じのバーを想像していた佑利は、見た目からして既に騒がしいそれにド肝を抜いた。 いかにも「海外のバー」といった感じの印象だ。解像度は低いが。
「取引相手はキャンティとコルン、お前らで先に始末しておけ」
「あいよ」
「ここからだと隣の建物が死角となって取引相手を確実に狙えねぇ。お前はそれを開けたところまで誘導しろ」
ジンはバーの写真から目を離し、杏咲に視線を向けてそう言ったあと、 続いて佑利に目を向けた。
「お前は取引相手にすり変わりバー内に侵入し、標的を上手く外に連れ出して始末しろ 。野次馬は狩るんじゃねぇぞ」
「了解」
そんなこと言われずとも元よりする気なんてない。内心呟く佑利を乗せたジェット機は雲の上に広がる真っ青な空を突き抜けた。
任務決行まであと11時間。
4.マニラへ
「シャワー空いたよ、兄さん」
「……」
組織メンバーの誰が取ったのかもわからないホテルの一室。佑利はソファに座り、ガラスのローテーブルに置かれたバーと標的の写真、そして小さなジュラルミンケースと睨めっこしていた。
「…兄さん?」
「…あ、サンキュ」
早朝に無理やり起こされ飛行機に乗せられ移動させられたせいか、兄が心なしか少し疲れているように杏咲には見えた。
「大丈夫?仮眠取った方が…」
「んー…そうだな。シャワー浴びたらそうするから先に寝てていいよ。あと、あのケースは危ないから触るなよ」
「わかった」
佑利はシャツを脱ぎながら忠告し脱衣所の扉を閉めた。
ケースの中身は二丁の拳銃と、標的の取引相手に成りすますための本人そっくりなマスク。このためにベルモットに頼んで特別に作ってもらったものだ。
拳銃二丁はそれぞれ2人が使用するもの。杏咲にとってのそれはある種の相棒のようで、今や無くてはならない存在である。 それを無くてはならない存在にしてしまった、という感覚は彼女にはない。
先を案じて自身のその手を微かに震えさせていたのは佑利の方である。
「……くそ」
今夜、佑利は1人の人間を手にかける。
そんなこと今に始まったことではないし、なんなら慣れが出始めてもおかしくないのだが、苦虫を噛み潰したようなその表情でそう言う限り、この先佑利がそれに慣れるなんてことは絶対に有り得ないだろう。
シャワーヘッドから降った水が髪を伝ってぼたぼたとタイルへ滴った。
任務決行まであと5時間。
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