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外に出られないので、一日かけて本を読んだ。
勇者の本は、こちらの言葉で書いてある本と、メモっぽい日本語をまとめた本があった。
こちらの言葉で書いてあるものは、多分こちらの人がまとめたものなんだろう。
英雄譚みたいな日記だし、何より都合の悪いことは書かれていない。
重要なのは、日本語の方だろう。
魔法だろうけど、写真のようにメモをそのまま転写しているように見える。
「不思議だけど、同じくらいの時代の人が召喚されたみたいね」
日本語で書かれた日記の方は、ぶっちゃけた話がたくさん書かれていた。
携帯がなくて不便とか書いてあったから、多分同じくらいの時代の人。
こっちとは時間軸がずれてるってことかな。
本人の名前は書かれていないので(日記なんてそんなものだろう)、どこの誰かはわからない。
「最初にいた部屋が、召喚の間らしい。確かに、あの石の模様は召喚陣だな」
「覚えてるの?あんなちょっとしか居なかったのに」
「うん、多分賢者の効果かな。キャプチャしたみたいに思い出せる。本の内容も、びっくりするぐらい入ってくるし」
「うわぁ便利」
「魔力消費しちゃうけどね」
「それは燃費悪そう……でもやっぱり便利」
情報は哲人が集めておけば間違いなさそうだ。
召喚陣は、哲人の解析によると『魔王が現れたという波動を感知したら同時に勇者を召喚する』というもの。
これが、ずっと発動している状態なのだそうだ。
あえて言えばこの世界の人に召喚されているけれど、今の人たちが直接は関わっていないという。
うっとうしいから、やっぱ壊すべきかなぁ。
でも、魔王だけ現れても困るよね。
「このメモだと、魔王も別の世界の人らしいわね」
「らしいねぇ。しかも、魔王は倒すっていうよりは元の世界に返すっぽいね。帰ったかどうかは分からないけど、使った魔法はそれらしいものだったみたいだし。でも、それをいくら言っても周りが『倒したんですよ』って広めたらしい」
「信じなかったっていうか、情報操作でしょうね」
「だろうな、うぜぇ」
「くぅー、くすー」
勇人は、ソファでお昼寝中だ。
落ちたら怖いので、ソファの座面に背をつけて床に座っている。
それにしても、抱っこひもがないから、寝かしつけにひたすら腕で抱っこしなくてはいけない。
腕が痛い。
あぁ、抱っこひも欲しいなぁ。
家にある抱っこひもがあればいいのに。
それより、今の情報はとても重要だ。
「どうしよう、私だけ帰っても意味ないよ」
「うん。どうもこの日記にははっきり書かれてないけど、勇者がどっかで手に入れた武器を魔王に向けて使ったら、帰還陣みたいなものが展開されたらしいな。旅の途中で洞窟に入ったとか書かれてるし」
「洞窟ね……じゃあ、ダンジョンかな?さっきサンナさんにダンジョンがあるって聞いたわ」
「それかなぁ。でも、勇者はそれでは帰れなかったらしいぞ」
「そうね、メモもかなり文句言ってるわ」
「国に帰っていろいろ貰って、結婚っていう形で取り込まれそうになったから逃げて旅に出たらしいところで日記は終わってる」
英雄譚も、勇者は世界を見たいと国を出て、勇者の国に帰ったようだというところで終わっている。
勇者の武器も探したいけど、勇者の旅の痕跡も探さないといけないな。
帰ったのかどうかはっきりしないから、まだ安心はできない。
それにしても、宰相さん、よくこのメモの本持ち出してこれたもんだ。
国にとって不利な内容が書かれてる可能性だってあるのに(実際書かれてる)。
数百年前のことだから気にしてないのかな。
それともお詫び代わりに頑張ってくれたんだろうか。
さて、次は魔法の本でも読もう。
「……う、あーん!うああーん!」
しまった、起きた。
「はいはい、よく寝たねぇ」
私が抱っこしたらすぐ泣き止むとか、この子ほんとに可愛いわ。
可愛いけど、お母さんは本が読みたかった。
夜に寝かしつけてから、起きていられたら読むしかないね。