テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
大井戸町まで帰る途中で、犬が道にしゃがんだまま急に一歩も動かなくなってしまった。
口笛を吹いても置いてけぼりにするそぶりを見せても一向に動かない。
男の子は「またか」とため息をついた。
「どうしたんだ?」
「こいつ、いっつもこうなんだ」
そう言って男の子は細い腕です犬を持ち上げた。
小型犬くらいのサイズだったが、子供の体力では抱えたまま歩き続けるのはいかにも大変そうだ。
しかも、道のりは半分ぐらいまでしか来ていない。
「貸して」と言って男の子から犬を奪った。
柴犬とビーグルの雑種だというそれは、近くで見ると愛嬌の良さと凛々しさが絶妙なバランスだった。
犬を抱っこしながらニヤニヤしていると、男の子が不思議そうに訊いてきた。
「お兄さん、犬好きなの?」
「ああ。実家にはもう年寄りの犬が二匹いてさ、どっちも雑種でブサイクなんだけどそれがもうすげーかわいいのよ。そんで、小さい頃は獣医になりたかったな」
実家の犬が吐血して倒れたとき、あまりにも心配で「大きくなったら絶対に自分が治す」と心に誓った。
そしてしばらくは本気ですそっちの方に進路を決めようとしていたのだが。
男の子がすぐに疑問をぶつけてきた。
「なんでなんなかったの?」
「俺、猫アレルギーなんだ」
近所の猫が入ってきたとき、目は涙で一杯になるわ、体中は痒くなるわで大変な思いをした。
それ以来、猫は天敵である。
「そっか。獣医さんとこには猫もいっぱい来るもんね」
「だろ。だから俺は諦めた」
そうでなくても獣医になるのは非常に狭き門をくぐらなくてはならないと後々知るのだが·····。
その辺は小さい子に説明しても理解できないだろうと思い、割愛した。
「名前なんていうんだ?」
「名前? ガリレオだよ」
「犬じゃなくて、お前だよ」
79