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#ファンタジー
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鍵探しゲームが終わり、レストランのホールから出る事が許された高浪達3人。人数は開始時の半分になっていた。高浪と赤沼だけでなく、水谷も覚悟を決めたようで以前とは違い落ち着きを持ち始めていた。
「竹之内さんのおかげで八木さんは、とりあえず死にはしませんでした……感謝しないとですね」
「でもまだ薬の影響で発狂気味なんでしょ?」
「はい、鍵も私が手を繋ぎながらじゃないと、持ち続けられなかったので……最後のゲームはすぐに終わらせないといけません」
イヤホンから流れていた情報によると、用意されたゲームは5つ。
1、赤沼を標的としたライターゲーム。
2、南を標的としたロシアンルーレット。
3、八木を標的とした薬物選択ゲーム。
4、竹之内を標的とした鍵探しゲーム。
残るは高浪か水谷を標的としたゲームが待ち構えていると予想できるが、今まで標的とされた人間の中で無事にここまで来られた参加者は赤沼のみ。
頭を悩ませながら廊下を歩いていると、建物全体が突然大きく揺れた。
「地震……ではないよね。ここ船だもん」
「動き出した可能性があるってことですよね。急ぎましょう」
廊下は一本道だった。迷う事なく3人は小走りで駆けていく。
「ここは……」
先にあった扉を開けると、久しぶりの陽の光が3人を照らした。高浪の推測通り船の上だった。綺麗な船内プールが彼らの目の前にあるものの、頑丈な鉄格子が他の場所への移動を許してくれていない。階段や柵で船の外の様子も分からない。
「十中八九……私を狙ってるゲームですね」
水谷が唾を飲み込んだ。それもそのはず、プールの底や壁には真空パックに入れられた1万円札がびっしりと並んでいた。釘で打ち付けられている。水面の揺らぎでプールの外からは“偽札かどうか”の判別もできない。イヤホンからの説明を待った3人だったが、いつまで経っても無音のまま。
「何かあったんでしょうか? 僕の時も説明はなかったんですけど、それとは違ってこのゲームは何をすればいいのかさっぱりです」
「寝てるんじゃない? 最初のゲームで、私達がいつ目を覚ますのか分からなかっただろうし寝不足だったんでしょ」
「そうだったら、時間制限も考えなくて良いから楽なんですけど……妙ですね」
恐る恐るプールの水に指を伸ばした水谷。それ自体に仕掛けは無く、何かが始まる気配も無い。高浪も水面に手を突っ込み、釘で壁に打ち付けられた真空パックを1つ、無理やり引きちぎった。
「この中に本当の1万円札が1枚だけ混ざっているから、なんとかして探す……そんなゲームかな。水谷さん、これ偽札?」
「これは…………そうです! 私が作った偽札です!」
中身を取り出し光沢、手触りで水谷は確信する。偽造した本人しか知り得ない細かな違い。高浪と赤沼は揃って首を傾げていた。
「ほんと?」
「ほんとですか?」
「私が言うんだから、間違いないですって! 詳しくは企業秘密なので言いませんが……とにかく私が作った偽札です!」
すると水谷は続けて3つの真空パックを手に取り、ひとつずつ確認し。やはり全てが偽札。
「私の偽札をこんなに……どうやって手に入れたかは分かりませんけど、高浪さんの言う通り1枚だけ本物の1万円札があるのかもしれません」
「ならとりあえず、3人で片っ端から取り出そう」
微笑んだ高浪が上着を脱ぎ始める。唐突に下着姿を目の当たりにした赤沼は直視しないよう目を逸らした。
「ん? 悟くん、照れてるの?」
「……ここはプールですよ。さっきのレストランに冷凍食品や電子レンジも用意してくれてたんです。水着くらい、探せばきっとありますよ」
背を向けて離れてしまった。だがこの反応は高浪を刺激させる。好みのタイプだ。
「うわ、水着の方が良いんだ。ま〜確かにそういう人もいるもんね。でも大丈夫? 悟くんも水着になったら色々と隠しきれないんじゃない? あーやばヨダレが」
「ちょっと!? 一応私達の命が懸かってるんですよ真剣にやってください!」
「私と水谷さんの水着姿で迫ったら、悟くんも断れないかも? ほら脱いで脱いで」
「ほわーっ!?」
強制的に脱衣させようとする高浪と、必死に拒む水谷の戦いが始まった。高浪からしてみれば遊びのようなものだったが水谷は必死の形相で拒否している。赤沼はというと、プールサイドにあるロッカーを開き中身を確認し始めた。
「あぁ、ウェットスーツがありますよ。しかも全身を隠してくれるタイプの」
「うーん着なくていいよね」
「バカ言わないでください」
赤沼は雑にウェットスーツ2人分を放り投げた。はだけている下着姿を見ずに、自身は既に物陰に隠れつつ着替え始めている。
「乗ってくれない……いい加減ゲームに集中しないとダメか」
「何かしら収穫はありましたか」
「“水谷”さんだから水が関係してるゲームかと思ったんだけど、なんか妙なんだよね〜。イヤホンからの音声がないのもそうだし、このまま本物の紙幣を見つけて終わり……なんて呆気なさすぎる。私の希望的観測の話をすると黒幕側になんらかのトラブルがあった、それで今は何も伝えられない可能性もあるけど」
大人しくウェットスーツを着用した高浪は変わらず真空パックを取り続け水谷に中身の確認をさせる。結果は尽く偽札で高浪の推察通りに事が進んでいる、ように見えた。
「……ねぇ水谷さん、私潜ってみて何かないか探してみるから」
「え、あぁはい」
プールの底は1.3メートルで一般的なものとそう変わりはなかった。今度は底の方にある真空パックを調べようと取り外す。水の影響で手こずったが1人の力でも難なく外す事ができた。
へぇ……?
外した事で見えてきたプールの底の正体。他にも5枚を外し全貌を目にする。
万札と真空パックで隠れて見えなかったけどこれは……プールの底がまるごと氷になってる
厚い氷が底に沈んでいた。揺れる水面もこれを隠すのに役立っていた。隠されていたという事は、ゲームのクリア条件がこの下に存在している可能性が高い。頭だけを水面から出し2人との相談を再開する。
「悟くん、他に何か道具はなかった?」
「めぼしいものはあまり……鉄製のバケツが6つあるくらいですよ」
「それだよ、悟くん」
プールから上がってきた高浪は赤沼の元まで歩き両手にバケツを持つ。張られた氷を突破する方法は。
「バケツリレー。レストランの厨房から熱湯を調達してきて溶かすんだ。水谷さん、プールの水を抜くのは頼んだよ」