月がでる
この街にも月がでる
あなたを失くして
何もなくなったこの街にも
月はでる
一番高い山から白い一筋の糸が
天高くのびても
あなたはかえらない
するりとすり抜けた緑なす黒髪が
まだこの腕に感触を残しているというのに
着物に染みついた淡い香りも
まだこの鼻をくすぐるのに
あなたの紅色の頬の光を
まだ私の瞳は覚えているのに
誰に訊ねればよいか
誰についてゆけばよいか
誰も答えない
あなたが出した数多の注文の品よりもっと
困難な問いがこの世にあったなど
つゆとも考えなかった
愛しいあなた
愛しいあなた
月まで翔べる翼を蓬莱の玉の枝で創れたなら
龍の首の球で龍神を呼んで願いを叶えてもらえたら
かぐや姫
次もこの星に生まれて私のもとに
もしくは
私が月に生まれてあなたのもとに
願わくばこの命が尽きる前に
あなたをひと目
もう一度
愛しいあなた。
愛しいかぐや。
この愛をそなたに捧げる
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