テラーノベル
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ある冬の少しだけ、風が柔らかくなった午後のことだった
俺は炎鬼だからか、あまり寒さは感じない。でも今日は少し肌寒い。
無陀野の厳しい体術を受け、みんながダウンするなか
四季はすんなりとした顔で座って休息をとっていた
「…お前……バケモンかよハァハァ」
「あはは…」
皇后崎はもう疲れ切っていて体が動かず、矢颪とロクロと遊摺部はもうしゃべる気力がなく、水鶏と屏風ヶ浦はみんなを心配している。…みんな本当に疲れているのだな
「…なに、考えてんだ?」
「ん?…」
俺の目の前にへたり込んでいた皇后崎が口を開く
「うーん…前のことと……今のこと?」
風がふわりと髪を揺らす
昔の自分。
考えるたびにメンタルが揺らぐ
“愛”なんて言葉が遠くて、意味もなくて___
「……バカが」
皇后崎が吐き捨てる
「あ?…んだよそれ笑」
いつもは怒るのに、四季はほんの少しだけ目を細めた
「そろそろ戻んねぇとまたムダ先になんか言われるぜ」
「矢颪も遊摺部もいつまで寝てんだよ」
四季が笑顔でこっちに手を差し出す
「ほら、行くぞ!」
並んで歩く距離が、前より近い
それに気づいても、四季は何も言わない
ただ、少しだけ__歩幅を合わせた
「四季くーん‼︎」
チャラ先がこっちに手を振ってくる
「…遅いぞ」
ムダ先はいつも通り真顔でこっちを見る
「ムダ先つよすぎ…腕もげるかと思った」
ワイワイと楽しそうに会話をする
前は、少しだけ心の距離をとっていた
どう返せばいいのか分からなかったからだ
でも今は__
「四季?どうした」
隣にいた皇后崎の距離に気づく
近い
近すぎるくらいに
誰かの肩に触れて
誰かが笑って
誰かが助けて
誰かが名前を呼んでくれる
その全部が嫌じゃなかった
むしろーー
「…どうした」
ムダ先に心配されて顔をあげる
みんなが、不思議そうに心配そうにこちらを見ている
「…いや」
言葉を探す
まだ、うまくは言えない
でもーー前よりはちゃんと言える
四季は少し笑った
そしてーーー
「…”大好き”」
時が止まる
「は???」
「ちょっと待って‼︎四季くん!もう一回言って‼︎‼︎」
「き、急すぎる…!」
騒ぎ出す声のなか、四季は目を細めた
目の前にいたムダ先が頭を押さえていた
「……四季…そう言うことは普通…あんまり言わなーーー」
言いかけた言葉を四季が遮る
「今、言いたかったの」
真っ直ぐな視線
その言葉に一同が固まる
ムダ先は表情を少しだけ緩めた
「…変わったな」
「…うん」
ムダ先が俺の頭を撫でる
最近よく撫でられるなぁ
…嫌じゃない
「”ありがとう”」
騒がしい声のなかで、四季は笑う
この場所を
この時間を
この仲間をーーー
大切だと、愛しいと思えたことが
何よりの答えだった。
コメント
4件
最高すぎます!! めっちゃ泣けました!