テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
[ガラスの靴はいらない]
涼架side
若井君の機転と、心のこもったスピーチのおかげで、シンデレラの劇は大成功に終わった
観客の盛大な拍手の中、カーテンが下がる。
若井は、涼架をそっと舞台袖へと連れ出した。
いじめっ子たちは、悔しそうな表情で涼架を睨みつけていたが若井のそばにいる涼架には、もうその視線は届かなかった。
「大丈夫か?足、見せて」
若井君は、私を椅子に座らせると優しくそう言った
涼架は、恥ずかしそうに顔を赤らめる。
シンデレラの物語のように、王子様が自分の足を手当してくれるなんて、夢にも思わなかったからだ。
若井は、涼架の足元にしゃがみ込むと、彼女の足をそっと持ち上げた。
「痛かっただろ…ごめん」
若井君は、そう呟くとカバンから絆創膏と消毒液を取り出した
彼は、細心の注意を払いながら私の傷口を消毒する
私は、その間何も言葉を発することができず、ただ若井君の真剣な顔を見つめていた
「もう、無理しなくていいからな」
若井君は、私の傷口に優しく絆創膏を貼ると顔を上げて微笑んだ
その笑顔は、これまでの若井君のどの笑顔よりも温かくて、優しかった。
私は、その笑顔に安心し、涙が溢れ出した
若井君が自分のために怒ってくれて、舞台で守ってくれて、そして今、こうして優しく手当までしてくれている
私は、彼がどれだけ自分のことを大切に思ってくれているのかを心から感じることができた
「ありがとう…若井君…」
私は、震える声でそう告げると若井君の温かい手にそっと自分の手を重ねた。
足の手当てを終え、若井君は立ち上がると、私の足元に転がっていた上履きを手に取った
彼は、その上履きを私の前に差し出し優しく問いかけた
「靴、履ける?」
私は、若井君の優しさに胸が熱くなった。
しかし、消毒されたばかりの傷口に、靴を履くのはまだいたそうだ
私が言葉に詰まっていると、若井君は私の表情を察したように、困ったように眉を下げた
「やっぱり、痛いよな」
若井君は、そう言って上履きをそっと床に置くと、私の前にしゃがみ込んだ
「よし、行こう」
「え…?」
私が戸惑っていると、若井君は自分の背中を向けて、私を振り返った
「おんぶしていくよ。このままじゃ歩けないだろ?」
彼の言葉に、私の顔はみるみる赤くなった。
若井君にこんなにも甘えていいのだろうか。
彼の背中に乗るなんて、そんなこと、とてもできない。
「だ、大丈夫だよ!歩けるから…!」
涼架は、慌ててそう言って立ち上がろうとするが足に力が入らず、ぐらりとよろめいてしまう
若井は、そんな涼架の体を支えると優しく、しかし有無を言わさない口調で言った。
「馬鹿。無理しなくていいって言っただろ?」
そして、若井君は再び私の前に背中を向けた。
「ほら、早く」
私は、意を決して若井君の背中に乗った。
「お、重いよ…、乗るよ?」
「ん…いいよ」
若井君の背中は、想像してたよりもずっと大きくて、頼もしい
私は、彼の温かい背中にそっと自分の体を預けた
若井がゆっくり立ち上がると涼架の体はふわりと持ち上げられた。
「大丈夫だよ」
若井君は、私の耳元でそう囁きながらゆっくりと歩き始めた
涼架は、もう何も言わなかった。
ただ、若井の背中に顔をうずめ、彼が作ってくれた『居場所』を心ゆくまで噛み締めていた。
次回予告
[王子様の魔法のキス]
next→❤︎2,000
コメント
1件
若井くん 素敵すぎるぅ~💙