テラーノベル
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あれから俺は、毎日鏡の世界に行き、戦争の広報について話し合った。
ただ、決して俺が乗り気だと思わないでほしい。
鏡の世界は、寝ようと思って目を閉じると発動するらしい。なので、半強制的に転送されるのだ。
ちなみに、戻る時の記憶は曖昧だが、小一時間経ったら戻れている気がする。
「ダルすぎ、まじ勘弁…。」
溜息をつきながら地面に屈む。
「なんだ天羽、お前もそんな言葉遣いするのか。」
横から声が聞こえる。顔を向けると、設楽先生だった。
「先生、居たんですか。…これくらいなら使いますよ。」
「え、意外。」
「死ねとか言ってないだけ、まだいいじゃないですか。」
軽口を叩きながら雑草を抜く。
今日は全校生徒で校庭など学校中を綺麗にする、「全校清掃」の日だった。元々は三名の生徒が自発的に始めたそうだったが、今は「自発的」の肩書で教育委員会に気に入られようとしているのが丸見えだ。
「まあ、雑草抜きは本当に勘弁だよな…。先生サボろうかな。」
「駄目です、校長先生に言いますよ。」
「お前ならやりかねんわ、辞めておくよ。」
軽く笑っている先生の横顔を眺める。どこか孤独そうな、静かな顔だった。
先輩から聞いた話がある。
当時設楽先生が受け持っていたクラスは、学級崩壊状態だったらしい。よく晴れた日のことだった。
「おいお前ら!話聞いてるか〜?」
「え、聞いてないっすけどw」
「あのなぁ…」
「オーダー!説教入りま〜す!」
「お前おもろすぎwww」
そんな会話が繰り広げられている最中、ふと一人が口を開いた。
「子どもも居ねえ独身教師の言うことなんて、誰が聞くかよ。」
その言葉に、教室中が笑い出す。やんややんやと設楽先生への野次が飛ばされる。
と、その時だった。ドォン、と驚くほど大きな音が鳴り響き、教室が静まり返る。
「学生だからってふざけてんじゃねえぞ!」
そこから先は想像通り。先生の説教は授業中ずっと続き、反発してきた生徒を言葉だけで泣かせたらしい。
手を出したとかいう話もあるけど、不確定な噂は信じるものじゃない。
泣かせた生徒の親から電話があり、先生は上層部から大説教。保護者や教育委員会からの評判が落ちる、と言っていたのを聞いた生徒が居たらしい。
なんで設楽先生があんなに怒ったのか、知る人はいない。いや、知ろうとしている人はいない。
でも、俺は時々考えてしまう。あんなに争いごとが嫌いで、平和を望んでいるはずなのに、疑問で仕方がないのだ。
もしかしたら、この世界には、当事者以外が触れられない部分というのが存在するのかもしれない。自分の核を担う、大切な部分。
そこの領域に足を踏み入れたら、自我が壊れてしまうというのだろうか。
少し怖くなり、草むしりに没頭する。
「そういえば、天羽。」
「何ですか?」
設楽先生が緊張した声色で話しかけてくる。
「山口、危ないかもしれないんだ。」
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