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宇宙の君(そらのきみ)

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宇宙の君(そらのきみ)

11 - 光輝くペンダント (ひかりかがやくぺんだんと)

♥

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2024年05月29日

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『お父さん、離してよっ‼︎』

[莉音、家に帰ろう?言う事を聞きなさい‼︎]

『嫌だ、嫌だ、嫌だよっ…』

[いいから帰るぞ。 ]

腕を強く引っ張られる。

嫌だよっ…また殴られるの?最期の1日くらい…ゆっくりさせてよ…

児相を出ると、今日は珍しく晴れていた。

カラッとした陽射しに、思わず目を細める。

ーーーーーー

〈どこにもいない…〉

〔難しいな…どこに居るんだよ…〕

今日は、鬱陶しい程に晴れている。晴れなければ。晴れなければ、消える事もないのに。

最後に、警察署が近い児童相談所に行く。僕は何故かmenがくれたカツラと帽子を被り、

中に入る。

〔あの、星月莉音さんって…〕

[あ、莉音君なら、もう親御さんに引き取られましたよ?]

あの父親に…?嘘だ、嘘であって欲しい。

踵を返し、走って外に出る。

〔落ち着けよ、蒼〕

肩を強く掴まれる。

〔そんな状態で探しても見つからねぇだろっ…〕

全くの正論だ。一回落ち着く。

〈…父親が引き取ってたら、おんりーはどうなるかわからない。それこそ、監禁も暴行も全然あり得る。〉

〔…だよな。あそこのお父さん、ちょっとそういう所があったからな。〕

〔とりあえず、家にでも行くしかないじゃないのか?合鍵は?〕

〈ない。捕まった時に警察に没収された…〉

〔…父親が居ないタイミングを見計らって入る?〕

〈そうだね…〉

ーーーーーー

暗くて狭い、じめじめしたクローゼット。

もうここから出られないのか。

監禁される苦しみを再び味わうなんて。

生きている意味なんて、なかったんだ。

おらふくん…いや、蒼君。嘘ばっか吐いてごめん。

〈おんりーっ‼︎〉

そう呼ぶ姿が

〈莉音っ‼︎一緒に遊ぼ‼︎〉

あの頃と重なって見えてしまう。いや、自分が重ねてしまう。

またあの関係性に戻りたいな。

[俺は外にでっけど、絶対外に出るなよ?いいか?]

『はい、わかりました。』

そういうと、父親はどこかに行ってしまった。

その間に力ずくで扉を開ける。

逃げないとなのに。足が思うように動かない。

夕陽がカーテンの隙間から漏れ、明かりの付いていない部屋を照らす。

目頭が熱い。涙のようなものが汗と混じって頬を伝う。震える手で自分の首のペンダントをとり、投げつける。

夕陽に照らされて輝きながら、床に落ちる。

カチャ、と小さな音を立てて。

『こんなのっ…いらないっ‼︎

これが無ければ、迷惑をかけないのに…』

星の形をしたペンダントが、場違いのように輝いていた。

ーーーーーー

〈ここを曲がれば…あの家に着ける‼︎〉

バイクを降りて、曲がろうとすると、誰かと軽くぶつかる。

顔を見て、ハッ、と息を呑んだ。

〈星月…莉杏…〉

[お前、あの時のっ…]

〈はい、そうですよ。〉

互いに睨み合い、試合の幕開けを告げる。

夕陽が映画の名シーンのように、自分達を照らす。

ーーーーーー

外で誰かが言い争っている。

カーテンを少し開けて覗く。

はっと、息を呑む。

蒼くんと、桃弥兄ちゃんだ。

それと、父親。行かないと。行かないとだよ。

カーテンを急いでしめ、輝く物を掴み、 玄関の鍵を開ける。

外に出て、ただひたすら走る。

錆びた階段は、カンカンと大きな音を立てる。

アパート前に行くと、3人が居た。

〈っ‼︎駄目だよ、なんでここにっ…〉

『お父さん、やめてよっ‼︎

この人達は俺の大切な人なの‼︎』

[大切?どーせ俺が居ない間に勝手に孤児院脱走しただけだろう?]

『……』

お父さんは、そんな人だったの?

絶対に違う。

ーーーーーー

〈お父さん。この子は知らないかもだけれど。貴方はこの子が産まれた時、とても喜んでいましたよね。〉

〈 あの頃、赤ちゃんだったこの子を、近所の僕達にも嬉しそうに見せに来てくれましたね。〉

そう。あの頃のおんりーの父親は、とても嬉しそうだった。

〔俺も、あの頃から莉音と貴方を見てきましたが、あの頃の表情が、一番好きですよ。〕

迷った様子で口を開く父親。

[…この子が、奥さんに似ていたんだ。 奥さんが死んでから、どんどん憎く見えてきて…]

[顔も、見たくなかった。元々この子が産まれてから奥さんは目に見えて衰弱していった。

だから、余計この子のせいとか、思ってしまったんだ。]

『…最低』

『もう母さんの話はしないって約束したじゃん⁉︎母さんは癌で…』

[でもお前が産まれる前は元気だったんだよ‼︎]

はいはい、落ち着きましょうね〜と桃弥兄ちゃんがなだめる。

蒸し暑かった夕暮れ時も過ぎ、薄暗い、街のはずれにある閑静な住宅街をポツポツと並ぶ街灯が照らしている。冷たい風が吹いて、髪が靡く。

『今日、確実に自分は消える。だから。最期は、こんな揉め事はやめてみんなで過ごしたい…』

というわけで、おんりーの家にお邪魔し、外の夜空を見つめる。最期だからと、沢山の星を見えるようにしてくれた。夜にみんなで星空を観るのは楽しかった。アパートの屋上に椅子を出して、盛り上がる。みんなが話している時に、自分はふっと、考えごとをする。

もうこの景色とこのメンバーが揃う事なんてないのか…

風呂に入って、布団に入る。入るなり、桃弥兄とおんりーの父親は眠ってしまった。

『…おらふくん』

〈おんりー、消えないで…やだよ、おんりーと一緒じゃないと、生きて行けない…〉

『僕なんて居なくても生きていけるよ。それに、おらふくんなら尚更ね。』

『だから…』

ぎゅっと、力強くおんりーを抱く。離さない為に。

〈もういいよ。もういいって。おんりーは消える必要なんてない。大丈夫だよ。神なんてやめればいいに決まってるよ。だから、だから…〉

『…泣かないで。僕が居なくなっても、きっと変わらないよ。』

南風が吹き込み、カーテンが風に揺れる。月が、自分達を照らしている。

『…おらふくん、ありがとう。』

その瞬間、眠くなる。思わず、目を瞑ってしまう。

ただ、自分は、この時に眠った事をひどく後悔する事となる。

ーーーーーー

次回、最終回…?

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