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夜鳥

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夜鳥

1 - Prologue

♥

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2025年11月01日

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『ありがとうございましたー』


体育館の天井へと響いたその声は、紛れるかのようにその場に混ざり消えていった。

不思議に思ったように首を曲げるカラスが、校庭の上を一周したのち、何かを目指すように羽ばたいていくのが、月花(げっか)には見えた。


「ねぇ、あれーーー」


話しかけようとした時

友達はもう居なかった。



その日の下校時。

灯りの輪郭が微妙に揺れ、信号の色がわずかに遅れて切り替わるのに気づいたのは、月花だけだった。

歩道に立つ街灯の影は、ほんの一瞬だけ自分の足と違う方向に伸びる。

その違和感は目を凝らしても確認できず、しかし確かにそこにあった。


交差点の真ん中、見覚えのある漆黒の鳥が佇んでいた。…待っていた。

普通のカラスより少し大きく、羽の先端が微かに銀色に光っている。

「来るのか?」

声は届かない。いや、届くけれど耳ではなく、頭の奥の方で響いた。


ソレは羽を広げ、都市の上空に向かって舞い上がった。

月花は無意識にその後を追う。


歩くたびに、足元の道が微かに波打ち、壁の色が少しずつ変わる。

ビルの窓に映る自分の姿は、いつもよりわずかに歪んでいて、表情が少し違って見えた。


…笑っているようにも、怒っているようにも見えたその顔は。

全く別の人、とは認識できなかった。






自販機のボタンは触れていないのに光り、歩道のマンホールからは微かな声が漏れる。

角を曲がるたびに、前に見たはずの建物が微妙に位置をずらしている――

まるで街全体が呼吸しているかのようで、よぞゆめは自分が歩くごとに世界が溶けていく感覚に陥った。


「これ…現実?」

問いかけても答えはない。

話しかけたソレはただ、羽音だけを残して先を行く。

…必死にも見えた。


ビルの谷間を抜けると、街はさらに奇妙さを増した。

ネオンサインは存在しない文字を光らせ、歩道の線は途中で途切れ、通行人の影が壁を登ったり降りたりしている。


ネオンの先では、人がいた。

まだ、形を保っているソレだった。


『おかえり、ご苦労様。』

上空を待っていたカラス?はヨレヨレと羽を動かして、ソレに止まった。

ソレが息を吹きかけると、漆黒は縮んで、一つの羽根になった。


「何…それ…?」

ヒトが振り返る。男にも見えた。

『君には…見えるんだね。』


最後に見えたのは、カレの瞳。

その奥には、街全体が逆さまに映っていた。



これが、全てをズラせるプロローグ。

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