side.もとぅ
若井の顔は、正直酷かった。
目元には俺より黒いクマ、唇も肌もカサカサで、泣いた跡が真っ赤に残っている。
何より、細い。首とか頬とか、凄くやつれてて、病人みたいな真っ白な肌。若井がこの一週間でほぼ何も食べずに一睡もしてないことは明らかだった。
若井「だから、嫌だったんだって…!」
大森「ごめん、ちょっとびっくりしただけ。」
藤澤「やっぱり何かあったよね?話してくれる?」
若井は俺たちを怯えたように見つめて、少し後ずさった。どうしてこうなったか話してほしくて、距離をまた詰めて、顔を覗いてお願いする。
若井「何にもないよ。ちょっと疲れが溜まってただけ」
大森「そんなわけない!疲れだけで、こんなことにならないでしょ!」
藤澤「隠し事しないって言ってたでしょ?ほんとにどうしたの?」
無意識の内に語尾が強くなって、責めるような言い方になっていることに気づく。謝ろうとするけど、若井は大粒の涙を流して泣き始めて、顔を下に下げてしまった。
藤澤「若井?ごめんね、責めてるわけじゃないんだ」
大森「ぁ…ごめん。どう言えばいいか分からなくて…」
若井「もぅ、いい」
若井は黙り込んで、やせ細った腕に顔を埋めてしまった。申し訳なくて、でも話してほしくて、どうすればいいか分からない。
そういえばいつも、若井は黙って背中をさすってくれてたな。俺と涼ちゃんを優しく包み込んでくれて、ずっと隣にいてくれていた。もらってばっかりの俺は、大事な時に若井を包むことができない。ああ、いつも助けてもらってばっかりだから。そう考えると、涙が溢れてきて、ほんとに、なんで俺が泣くんだろう…。
大森「若井、ごめんね。俺、若井に支えてもらってばっかりで、最低だね…」
藤澤「いつも僕たちばっかりごめんね。若井だって辛い時は辛いのに」
涼ちゃんの言葉にはっとする。
俺、若井のこと、強いって、そう言った。あんまり落ち込まないから、大丈夫だろって勝手に決めつけて、若井にここまで溜め込ませた。若井だって俺や涼ちゃんと同じなのに、なんで若井は大丈夫だと思っちゃったんだろう。
俺、若井のことを知らないうちに酷く傷つけていたのかな。
ベストアーティスト賞、おめでとうございます
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