微睡みのような感覚から頭を強く振っても。そこには鈍い現実認識があった。
バリエから聞いた話だと、今でもウロボロスの蛇は目を開けているそうだ。
二グレド族の人々も悪夢への恐れを抱いたままだ。
ルゥ―ダーとカルダはあの時。
確かに死んだはず……。
カルダとルゥ―ダーは、覚醒者を生贄にするべく。見境なしに生贄を捧げていくうちに、正気を失い。支配欲に蝕まれた。
そうバリエが言っていたように思う。
当然、狂気にも支配されたカルダにとって、ルゥ―ダーは、ただの従者でしかなかったのだろう。
例え世界をカルダが征服したとしても、ルゥーダーはただの従者にすぎない。ルゥ―ダーにとって、それは大きな足かせでもあったのだろう。
そして、恐らくウロボロスの蛇は尾を呑み込み終わっても、今となっては蛇は死ぬことは無かったのではないかと思えてならない……。
ただ単の一つの……そして、たった一人の見た支配欲は世界を滅ぼす時もある。と、ディオが別れ際に言っていた。
仕事を終えて家に帰ると、真理が3枚の手紙を見せてくれた。
「恵ちゃんたちからよ。それから……角田さんと渡部くんも上手くやってるみたい……」
「ああ……」
それぞれ簡潔な複数の手紙を恐る恐る開ける。
まずは安浦から開ける。
「ご主人様。傷付いたあたしは旅にでます。行先は聞かないで下さい。きっとあたしの第二のご主人様を見つけてきます。……外国なんてどうかしら?
かっこいい人がいいな。真理ちゃん。お幸せにね……。それから、ウロボロスの力で現実を修復するのに1年も掛かったんですね。あたしはお料理に専念していて時間の流れなんて解らなかったんです。あたし、コックになれるかも。……お幸せに」
渡部?
「赤羽さん。今はそば屋に弟子入りしています。それから僕の歌のCDが来年に出ます。良かったら聞いてみて下さい。ちゃんと歌えたかな?それから今、大学に好きな人を探しています。僕も赤羽さんと真理さんのような暖かい家庭を築きたいんで……。南米では美人の人はみんな既婚者だし、バリエは除いてシャーマンたちはお婆ちゃんばっかりだし……。南米では大変でしたね。もう死んじゃうと何度も思っていました。それでは体に気を付けて……」
角田 ?
「赤羽くん。実は俺、美人の姉さんと結婚をしたんだ。凄いだろ。憧れが現実になったんだ。今度、二人で会いに行くよ。それと、気が向いたら俺の店に来てくれ。住所は……。小さいスーパーだが安さでは誰にもどんな店にも負けない。そう赤羽くんのように……。あ、とスーパーの名前は清彦。俺の名だ。ウロボロスで現実を修復するときは大変だったな。俺は仕事があるから、現実の時間の流れにピリピリしてまともに修復ができなかったんじゃないかと……後で思ってヒヤヒヤしていた。それじゃあバイバイ……。」