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「痛覚は無いのに性感帯はあるんだー。」
やめて…。
「俺はお前をこんなにも愛していると言うのに。」
やめて…。
「あのお方のお側に遣えるに相応しいのはお前ではなく俺だ。」
やめて!!
「皆何でお前に辛く当たるんだろうな??俺は違うぞ??こうやってお前を慰めているんだから…。」
もうやめて!!
「ごめん、起こしちゃったね。」
「いや、良いの…!?サイチ、血まみれ。」
「うん。あのあと縄張り荒らしてるご新規さんをちょっと懲らしめてきてさ。ほとんど返り血だよ。」
「それは、大変だったね…。」
「そっちこそ大丈夫??すごい勢いで飛び起きたけど。」
「あー。大丈夫、すっかり自分の家にいると思って安心してたらサイチが居たから。居候してるの忘れるところだった。」
「そこまで慣れてくれてたなんて、嬉しいな。」
階下からキクタがサイチを呼ぶ声がする。
「じゃあシャワー浴びてくるね。」
「うん。」
サイチが部屋を出てから、身体を外に見せないようそっと窓際に寄る。
「(絶対どこかで見てるはず。宵闇があそこで引き下がったのには理由がある。それときっと…。)」
サイチはヒトじゃない。
「おはようさん。」
キッチンに向かうとキクタがいた。
「…おはよ。」
「なんだ、悪い夢でも見たか。」
「そんなとこ。」
昨夜、夢うつつに見たキクタの顔…。私の正体に気づいたか??
「お前が作ってくれてたメシ、うまかったよ。ありがとな。」
「口に合ってよかったよ。こっちこそ、ベッドに運んでくれて。重かったんじゃない??」
「お前なんか重いうちに入んねぇよ。」
気づいてなさそうな感じなのでいつも通り振る舞うことに。
「ふーっ、生き返った!!なんかいい匂いする。」
「昨日、作っててくれてたんだって。サイチも食えよ。」
「食べる食べる!!んー、美味しい!!味が染みてる!!」
「良かった。キクタ、今日は私の仕事ある??」
「そうだな、この先1週間分の食糧調達頼めるか。あれから奴らの数も少なくなったし、変装すれば外出しても大丈夫だろ。」
「けっこう買い込むから俺も行くよ。ただし、今から昼まで寝た後に。」
「そういやサイチ徹夜だったな。じゃあそれまでは診療所で俺の手伝いしてくれ。」
「分かった。」
そして午後。
「サイチ、新しいジゴロか。」
青い瞳が綺麗な女の子と遭遇した。
「明日子さん、違うよ。ちょっとした居候さん。」
「初めまして。」
「私は明日子、よろしく。」
「学校帰り??」
「うん…。」
視線鋭く自分を見る明日子に思わず身構える。
「その胸は本物か??」
サイチと共に気の抜けた声が思わず出た。
「ほ、本物よ。」
「明日子さん、初対面の人に何聞いてんの。で、触りに行かない!!」
「胸の大きさは高校生までに決まるんだぞー!!」
サイチに片手で抑止させられてるのにもがく姿が何とも可愛らしい。
「そうだ、今度いとこの誕生日パーティーするんだ。2人とも良かったら来てやってくれないかな。」
「いいよ。」
「私も…??」
「その頃にはもうここに居ないのか??」
「いや、まだ居ると思う。」
「じゃあ、決まりだな。ごちそう用意して待ってるぞ。」
彼女はサイチの手を解いて揚々と去っていった。
「明日子さん、さっきのお肉屋さんの娘さんなんだよ。」
「そうなんだ。通りで目の色が一緒だったわけだ。」
「もう一軒いくから、こっち通るよ。」
と裏通りに入っていくサイチを追いかけた。
「おかえり、ご苦労さん。」
「ただいま。」
「ただいま…。」
「じゃあオレ、このまま晩ごはんの用意するわ。」
「私も手伝う。」
「ほんと??助かるー。」
「あ、タバコ。はいキクタ。」
「おー、サンキュな。」
1カートンを渡して待っててくれているサイチのもとへ。
「あとはキクタさんの仕事が終わるの待つだけだから、先にお風呂入ってきなよ。」
「いいの??」
「いいよ。」
ということで先に入らせてもらって、出るとキクタがビールを1杯やっている。
「飲むか。」
「うん。」
「さぁ、食べよ食べよ!!」
サイチが盛り付けをしてくれて、食卓を囲む。
「(この時間がずっと続けばいいのに。)」
この先辛いことが起こると分かっていても願わずにはいられなかった。