:引き続きマイキーサイド:
「…は?」
俺はそう聞いて驚愕した。
「だから、私は柴柚葉だっての。」
そういって、彼女はタケミっちを片手でひょいと持ち上げると「じゃ、またね」と言った。
「ちょっと待て。」
俺は無意識にそう言ってしまった。
彼女はこちらを振り返って「何?」と言う。
俺は答えた。
「…タケミっち起きるまで、待っとくか?ここで。」
「ふ…あっはははは!!!!!」
いきなり、柚葉は笑いだす。
「なんでだよ」と聞くと、柚葉は答えた。
「だって、重症患者じゃん、あんたも、そいつも、タケミチも。」
…俺は、腕に貫通したナイフのことを思い出す。
なぜか、一気に疲れが来たような気がして、俺はその場に倒れこんだ。
:武道サイドに戻ります:
「…!…!」
光が眩しい。そして、全身が痛い。
「…ち!」
誰か、呼んでいる。誰…?
「タケミっち!」
「マイキーくん!?」
俺は飛び起きる。しかし、痛みでうなってしまった。
「もー、バカだなーw何一つ合ってないってのw」
「三ツ谷くん?」
いや、なんで俺に関係があんまりない三ツ谷くんがここに?
そして、どうして帰ってこれた?
「ドラケンくん、探してたんだよね?」
そう聞くと、三ツ谷くんは「まぁ…な…。」と答えた。
じゃあ、どうしてここに来たんだろう。
疑問が心の中で膨らむ。
その疑問を察したように、三ツ谷くんは答えた。
「八戒から連絡があったんだよ、タケミっちとマイキーが事故ったって。」
…もちろん、八戒は部外者だ。知らせなきゃいけないということで、柚葉があえて嘘を吐いたのだろう。
「そうだね…うん。」
俺もそう笑いながら繕う。うまく笑えていたかどうかは知らないが。
その時、廊下から走ってくるような音がした。
ドアが勢いよく開けられる。
…来たのは千冬たちだった。
千冬と…アッくんと…山岸と…タクヤと…マコトと…
マイキーくん!?
「起きたんだ、よかったー!」
そう、千冬が安堵する。
「そりゃ、起きるよ、死んだわけじゃないんだし。」
俺は、そう答える。
「全くだぜ、泣き虫のヒーロー。」
山岸がそう話す。
「ひさしぶりじゃね?泣き虫のヒーローって言葉。」
タクヤも続ける。
…いや、それよりも、マイキーくんの腕!!
「マイキーくん、腕、大丈夫なんですか?」
「ああ、気にしなかったら気にならないくらいだから。大丈夫。」
そう言って、冷淡な眼を腕に向けた。
そして、眼を俺のほうに向けなおし、俺に聞いてきた。
「タケミっちのほうは?大丈夫?」
「痛いっすよ…。」
思わず本音で答えてしまったが、マイキーくん当人は気にする素振りも見せなかった。
…逆に良かったのかな?
「じゃあ、俺はこれくらいで。またあいつを探してくるよ。」
そう言って、三ツ谷くんは病院を後にした。
…もう、この病室には素性を知ってる人しかいない。
「あ、そうそう、相棒、あのことチクったやつは掃除しといたから!」
千冬が快活な笑顔で言う。
「千冬が学校いけなくなったら困るんだけど…。」
俺がそう返すと「あ、そっか!」と千冬は答えた。
「だから、後先考えず突っ込むなって言ったじゃん…。」
そうあきれた返答をしたのはマコトだった。
この中の常識人、と言っても過言ではない。
なんなら、千冬とは俺の次に仲がいい。
そのあとも、みんなで他愛もない会話をしていた…。
「面会終了時間です。」
そう、看護師が告げに来た。
「もうそんな時間か、んじゃ、またな、タケミっち!」
アッくんたちは、そう言って俺の病室を後にした。
…残ったのはマイキーくんだけだ。
「ねえ、タケミっち。」
「なんですか?」
「なんで、こうなったんだろうな。」
それが、マイキーくんの本心かどうかは俺が知る由もない。
ただ、これがただ言っただけではないということは確かだった。
マイキーくんは続けた。
「ケンちんは行方不明、タケミっちは俺を殺す任務を負ったハンター、場地とエマとシンイチローは死んで、パーと一虎は年少、東卍は解散…。何がいけなかったんだろうな。」
そう言って、マイキーくんは泣いているように見えた。
…光の角度とかかもしれないが、どっちにしろ、眼が輝いて見えた。
寂しさと、悔しさと、孤独感が混ざった眼。
俺は答える。
「どこで間違えたとか、俺にはわかりません。だけど、こんな俺でも、一つ言えることがあります。」
「何…?」
マイキーくんは、そう俺に問いかけた。
俺は、自分なりの言葉で、それを表した。
「それでも、あがいて、もがいて、躍起になって生きていれば、救われることがある、ってことですかね。」
マイキーくんは目を見開いた。
そして、目をすこしだけ細めて…
笑った。
「そうだな、ありがとう、なんかすっきりした。」
そういうと、「またな」と言ってマイキーくんは去っていった。
どんな状況でも、自分の【本当】は変わらないんだな、と思った。
俺は、自分の胸に手をあてた。
自分の、生きている音がした。
~第一部{出会い}完~
マイキー殺害まで あと 26日
「ねえ、ハル兄ぃ。」
「…もうすぐだね。」
「ジブンも悪いと思ってるよ。」
「だからさ、もう、ここで決めた。」
「謝るよ。」
「だって、もう、こんなことで争うのは嫌だもん。」
「だからさ、起きてよ…。」
「返事して…。」
「ハル兄ぃ…。」
次回より ~第二部{三天戦争}~ 開幕 ―――
コメント
1件
(°ρ°;)ヤベ~ すげ〜ドキドキしてきた(*´°`*) えっと、頑張ってください💪