コメント
0件
👏 最初のコメントを書いて作者に喜んでもらおう!
土曜日。1年生は必修科目が2限に入っていた。
杏時(あんじ)もさすがに駅で迷わなくなり、大学までの道のりも至って普通に歩けるようになった。
2限の講義がある講義室へ行く。珍しく大学前で芽流(める)には会わなかった。
講義室内を見回す。すると希誦(きしょう)が目に入った。希誦に近づき
「おはよー」
とワイヤレスイヤホンを外しながら希誦に挨拶をする。
「お。杏時(あんじ)おはよー」
希誦(きしょう)もワイヤレスイヤホンを外す。
「芽流(める)と会わんかったのね」
「ま、そんな毎日毎日会わないよ」
と言いつつ、今まで大学に来た日数の3/4は大学前で芽流(める)と会っている。
「逆に汝実(なみ)いないのも珍しくない?」
「あぁ〜。言われてみれば。今日大学来てからずっと音楽聴いてたわ」
「気づかなかったんだ」
「言われてみたら、うるさいのがいないなって」
「うるさいの」
つい笑う杏時(あんじ)。すると噂をするとなんとやら。
講義室の入り口で講義室内を見渡し、杏時と希誦(きしょう)を見つけ
パァーッっと顔がうるさく…明るくなる汝実(なみ)。
「お。来たわ」
希誦(きしょう)も汝実に気づいた。汝実は早歩きで2人に近づき
「おっはよー!2人ともー」
とテンション高く挨拶した。
「汝実(なみ)おはよー」
「おはー」
「お?あれ?芽流(める)は?」
「まだ来てないね」
「珍しい。あんちゃんと一緒に来なかったんだ?」
「汝実(なみ)もそれ言う」
「お?しょうちゃんと同じ思考?嬉しいねぇ〜」
そんな話をしていると講師の方が入ってきて2限の講義が始まった。
「芽流(める)どーしたのかなー?」
汝実(なみ)が小声で杏時(あんじ)と希誦(きしょう)に言う。
「どーしたのかな。大丈夫かな」
希誦は無言でイスの背もたれに寄りかかり
講師の方の死角となるテーブルに隠れる、太ももの上でスマホをいじる。
「LIMEしてみよっか」
「たしかに」
「今したよ」
希誦(きしょう)が言う。
「おぉ。さすがしょうちゃん。既読ついた?」
希誦(きしょう)は芽流(める)とのトーク画面に入り直す。
「ついて」
ないと言おうとしたとき、既読がついた。
「あ、ついた」
「お。なんて返ってくるか」
そのまま芽流とのトーク画面に留まっていると
芽流(める)「大丈夫大丈夫!ごめんね!心配かけて!遅れるけど行くから!」
とメッセージが来たので、杏時(あんじ)と汝実(なみ)に見せる。
希誦(きしょう)の隣は杏時なので、汝実(なみ)からは画面が遠く
汝実は杏時にめちゃくちゃ体をグッっと寄せて画面を見る。
「大丈夫大丈夫。ごめんね。心配かけて。遅れるけど行くから。か。良かった良かった」
「芽流(める)らしいね。なんか文からもわかる」
「わかる!なんか、なんか可愛いよね。しょうちゃんもしょうちゃん感あるけどね」
「そお?」
「なんか、淡白な感じ?私…クールですから…みたいな」
「別にクールを気取ってるわけじゃないけどね」
「でもしょうちゃんクールビューティーな感じだよね」
「あんちゃんそれそれ!それが言いたかった」
「カッコいい感じね。イケメン女子って感じ」
「わかるー。女子校にいたら激モテタイプね。ベタに校舎裏に呼び出されてーとか
もう昇降口の端でみんなにチラチラ見られながら告白とかね?
んで「あ、また…」あれ?しょうちゃんの苗字なんだっけ?」
「苗字?白風出(しらかで)」
「おぉ〜これまたカッコいい。「また白風出(しらかで)先輩告白されてる」みたいに言われたりしながらね?
でも「ごめん…今は部活にぃ〜…あっ、集中したいんだ」みたいに断る。みたいなね?」
「妄想がやけに具体的だな」
「ね。簡単に想像できた」
「お、お、そお?」
そんな話をしていると講義室の後ろのドアが開く。結構な人数の生徒が後ろを向く。
杏時(あんじ)、希誦(きしょう)、汝実(なみ)も、もれなく後ろを向く。
「あ、芽流(める)ぅ〜。こっちぃ〜」
芽流が入ってきて、汝実(なみ)が小さな声で呼ぶ。芽流が合流する。
「おはよー。ごめんねぇ〜心配かけて」
「ビックリしたよー。風邪でもひいたのかと思った」
頷く杏時(あんじ)。
「大丈夫大丈夫。ちょっと部屋片付けてたら夜遅くなっちゃって」
「あぁ〜私たちのせいだ?」
「たしかに」
「たしかに」
「ちっ、違うよ」
本日は土曜日。前々からお泊まり会を計画していたのだ。
「何時まで片付けてたの?」
「昨日は結局…寝たのが〜…4時かな」
「朝やん!と言いつつ、私もあるけども」
「あるんかい」
静かにツッコむ希誦(きしょう)。
「お、しょうちゃんのツッコミ。しょうちゃんのツッコミいただきましたよー」
「誰に言ってん」
「意外としょうちゃんってツッコミ役なのね」
しばらく時間が経ってから
「そういえば今日流来(るうら)くん見ないね。あとぉ〜みぃ〜…」
「明空拝(みくば)くんね」
「そ!明空拝くん!よく覚えてたね!」
「汝実(なみ)が一番「え!綺麗な名前!」って言っとったがな」
「あぁ、言ってた言ってた。あの2人見ないね」
と言われている2人はというとベッドの上で気持ち良さげに眠っているのだった。2限の講義が終わった。
「終わりぃ〜!自由だぁ〜!」
「お昼どーする?各自?それとも食べてく?」
「私は一人暮らしだし、みんなの都合に任せるよ」
「私は食べていきたいのだ!」
「どっち?4人で食べたいのか、家で食べて芽流(める)ん家(ち)に行きたいって意味なのか」
「Oh!!どっちの意味とも取れるか。みんなで食べたいって意味」
「私は家に連絡入れればいけるけど」
「私も家に連絡入れればいけるよ」
「んじゃーみんなで食べましょうか!今日は1日女子会じゃーい!」
ということで各自家に連絡を入れて、大学の食堂でお昼ご飯を食べることとなった。
本当はどこかレストランとかで食べたいものだが、みんなバイトはしてないし、使うお金も限られる。
大学の食堂は安いし、美味しい。雰囲気がないだけである。
「食べた後はどーするー?」
まだご飯は食べ終わっていないが、食べ終わったらの話をする汝実(なみ)。
「んー。どうしよーかー」
マルゲリータピザを食べる希誦(きしょう)。
「1回帰って荷物取りに行く?」
「なるほど?」
「で、私の家に置いとく?」
「なるほどね。それからどっか遊びに行って、芽流(める)ん家(ち)帰ればいいか」
「あり」
「そうしようか」
とゆっくり話しながらお昼ご飯を食べた。一方、明空拝(みくば)は
「…っんなっ」
と言いながら目覚めた。背中を反らせてボキポキバキッっと骨を鳴らす。
「んんー!」
枕元のスマホに手を伸ばす。画面をタップして画面をつける。12時47分。
「昼ー…」
と言いながら起きる。眠い目を擦りながら洗面所に行って歯を磨き、顔を洗う。
「朝〜は〜コーン、フレェ〜クゥ〜」
※朝ではない。深めのお皿にコーンフレークを入れ、牛乳を注ぎ
スプーンを入れて、ベッド脇のローテーブルに置く。
ベッドを背もたれ代わりにして寄りかかり、テレビをつける。王子様のブランチがやっていた。
シャカシャカとスプーンでコーンフレークを混ぜる。
「続いては10万円ショッピングです。今回は「A childish adults」のメンバー
リーダーの黄山 翔(かける)さんと吉岡 青鳥(せいちょう)さん、美緑(みどり) 隼也さんの3人が来てくれました。
皆さん、子ども心を忘れない素敵な3人でした。それではVTRご覧ください!」
だいぶコーンフレークに牛乳が染みてきた。
「お。childish adultsじゃん」
「A」が抜けてます。
「今回は元気なライブが話題のグループから、この3人が来てくれました!」
「はい、どおもー!子どものまま翔けていく、リーダーの黄山 翔(かける)です!」
「はい!心は子どものまま成長をやめました!吉岡 青い鳥と書いて青鳥(せいちょう)です!」
「はい!足の速さだけが取り柄です。美緑(みどり) 隼也です!」
「「「A childish adultsです!よろしくお願いしまーす!」」」
「「A childish adults」とはファンから絶大な人気を誇り
最近MyPipeでライブの映像が話題となっている大人気7人組ボーイズグループなのだ」
ナレーターが説明する。うんうん頷きながらコーンフレークを食べる明空拝(みくば)。
「あの動画私も見させていただいたんですよ」
「お。ありがとうございます!」
「というか本当にあの動画が人気すぎて、お3人さんと仕事があるだいぶ前から見てて」
「嬉しいですね」
「嬉しいー!」
「あの100メートル走は毎回やられているんですか?」
「いえいえ。100メートル走はあのときだけですね。今の所」
「実は僕たち、毎回ライブで小学校でやってたようなことをしてるんですよ」
「鬼ごっことかかくれんぼとか」
「鬼ごっこはまだわかりますけど、かくれんぼってどうやってやるんですか?」
「ありがたいことにファンの方が支えてくれて、ライブを大きなところでできるようになったので
客席も、会場全体を使ってやります。たとえばファンの皆さんの後ろに隠れたり」
「え!?客席に行くんですか?」
「ですです」
「ファンの皆さんキャー!ってなりません?」
「なります。なのでそれを手がかりに捜査したりするんです」
「すごいなぁ〜」
「すごいわ」
呟きながらコーンフレークを食べる。スマホでLIMEのアプリを開く。流来(るうら)とのトーク画面に入り
明空拝(みくば)「ごめん!今起きた!」
と送った。全然起きて十数分経っているが。
10万円ショッピングを見ながら染み染みになったコーンフレークを食べる。
流来(るうら)はというと、13時、午後1時過ぎに起きた。流来の両親は共働き。土曜日も仕事があったりする。
その日の土曜日も父親も母親も家にはおらず、流来(るうら)1人。
広くもない、狭くもないマンションの1部屋で目覚め、洗面所へ行く。
歯を磨いて顔を洗って、トイレに行ってリビングへ行く。
リビングのダイニングテーブルの上には千円札が置かれていた。お昼代である。
一度千円札を持ち上げ、またダイニングテーブルに置く。部屋に戻り、ベッドに座り、スマホの画面をつける。
明空拝(みくば)「ごめん!今起きた!」
「オレも」
と呟きながらそう返信をする。テキトーな服に着替えて
ダイニングテーブルの千円札を部屋の勉強机の引き出しの茶封筒に入れ、しまってから家を出る。
近くのコンビニに行き、カレー味のカップ麺を買い家に戻った。
部屋着に着替え直し、お湯を入れてテレビを見ながら3分待つ。
明空拝(みくば)「おぉ。流来(るうら)も2限サボりかw」
流来「まあ」
明空拝「今日うち来る?」
流来「明空拝ん家(ち)?」
明空拝「そ。こないだ来る?って話したけど結局実現しなかったじゃん?」
3分が経ったのでカップ麺の蓋を開ける。湯気が舞い上がり、カレーの強烈な匂いも漂ってくる。
上に固まってるルーを箸で溶かしてから食べる。
「んん。変わらぬ美味しさ」
流来(るうら)「あぁ。そうな。じゃあ、昼食べ終わったら行くわ」
と送ったら明空拝(みくば)から待ち合わせの駅名が送られてきたので
「了解」と送ってカップ麺を食べ、食べ終えると、使ってもいないお皿を1回水で濡らし、水切り台に置く。
箸もカレーの匂いがしないように入念に洗い、水切り台へ。
そして部屋に行って着替えて、財布とスマホとカップ麺の空いた容器を持って家を出た。
マンションなため、ゴミ置き場がある。
ゴミ置き場に入り、誰のかわからないゴミ袋にカップ麺の容器を入れ込む。
そして明空拝(みくば)との待ち合わせの場所へと向かった。待ち合わせ場所へ行くと遅れて明空拝がやってきて
「赤髪だったから速攻わかったわ」
と言いながら明空拝の家へと行った。
「お邪魔しまーす」
「どぞー。狭いけど」
1ルーム。玄関からリビングに行くまでの通路にキッチンがあり、風呂とトイレは別。リビングへ行くと
「え。めっちゃ綺麗じゃん」
めっちゃ綺麗だった。まるで男子の部屋とは思えない。
「そおかな。ま、座ってくだせえ」
ローテーブルの辺りに座る。明空拝(みくば)はテレビをつけて
「コップいる?」
と聞く。流来(るうら)は来るときに自動販売機で飲み物を買っていた。
「ん?あ、いい。ありがと」
「うっすー」
流来はテレビを流し見していたが、チラチラと部屋を見てしまう。
「テレビー…おもろいのやってないなぁ〜…」
明空拝(みくば)がテレビ欄を見て呟く。
「王子様のブランチ見たー?」
「見てない」
「「childish adults」知ってる?」
「A」が抜けてます。
「あぁ〜なんかポツッターでたまに流れてくるな。てか最近よくテレビで聞く気がする」
「王子様のブランチの10万円ショッピングに出てたわ」
「あぁ、あの企画ね。あの企画おもしろいよね」
「わかる!おもろい!今回もおもしろかったんよ!なんか高いプラモとか買ったり、マジで子どもだったわ」
と笑う明空拝(みくば)。
「んじゃ、とりあえずやりますか」
「お。スパファミ(大騒乱スパイクファミリーズの略称)?」
「やろやろ!弱いもの同士」
と言いながら明空拝は入力切替を行い、シンデンドーサティスフィーの電源を入れる。
「うい。コントローラー」
「サンクス。…こっちのコントローラーでいいの?」
流来(るうら)が受け取ったコントローラーは独立型のコントローラー。
「お客人ですからね」
「そお?」
「ま、もし流来がボロ勝ちしたら変えてもらうけど」
「そりゃそうだ」
と笑う。
「流来なに使うー?」
「オレはずっとワーピー使ってる。小学生のときから星のワーピーが好きでさ。
可愛いし、コピー能力とかロマンしかないし」
「わかるわー。ミラーマッチする?」
「明空拝(みくば)もワーピー使いか。いいよ。ミラーマッチするか」
ということでワーピー対決が始まった。その頃、お泊まり会決行の女子4人は
各自一旦家に帰って芽流(める)の家の最寄り駅に集合し、芽流の家に向かっていた。
「お邪魔しまーす!」
「お邪魔します」
「お邪魔しますー」
「どおぞー」
「おひさしぶりです!」
家に挨拶をする汝実(なみ)。漏れなく全員リュック。もちろん家主の芽流は除いて。
「じゃー、荷物を置いて、おでけけしよー!」
「おでけけ」
「おでけけ?」
「おでけけね」
ということで3人はリュックを芽流の部屋に置いて
財布やスマホなどを持って4人で“おでけけ”をしに芽流の家を出た。