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5件

いつでも🖤は💚の味方なんだね。
なんだか💚は人魚似合いますね🧜♂️
このお話を読んだらColor me live 聴きたくなりました🐟
深い海の底のような静けさだった。
阿部はゆっくりと目を開ける。
目の前には青く揺れる水。
身体を動かそうとして、自分の姿に驚いた。
「……え。」
足がない。
代わりに、光を受けてきらきらと輝く青い尾びれがゆっくり揺れていた。
――人魚。
自分は人魚になっていた。
周りを見渡すと、そこは大きな研究室だった。
阿部はガラスで囲まれた巨大な水槽の中に一人閉じ込められている。
外では白衣を着た研究員たちが何かを書き込み、機械を操作し、ときどき阿部を見ては話し合っていた。
けれど、その視線は”人”を見るものではない。
まるで珍しい生き物を観察するような目だった。
阿部はガラスへ手をつく。
(ここから出して。)
そう叫んだつもりだった。
しかし、水の中では声にならない。
泡だけが静かに浮かんでいく。
何度口を開いても、誰にも届かない。
研究員たちは誰一人振り向かなかった。
阿部は毎日、水槽の中から人の行き来を眺めていた。
朝になれば研究員が来る。
夜になれば電気が消え、静かな研究室に一人取り残される。
話し相手もいない。
笑い合う人もいない。
触れ合える人もいない。
孤独だった。
胸が苦しくなるほど、孤独だった。
誰かに気付いてほしい。
誰かにここから出してほしい。
でも、その願いは誰にも届かない。
阿部は次第に心を閉ざした。
水槽の底へ座り込み、ただ膝を抱えるように尾びれを丸める。
外から見れば、悲しそうな人魚。
それが今の自分だった。
___________
その夜。
研究室には誰もいなかった。
非常灯だけが薄暗く光っている。
阿部はぼんやりと水面を見上げていた。
その時だった。
一人の男が研究室へ入ってくる。
白衣は着ていない。
研究員ではない。
男は水槽の前まで歩いてくると、阿部をじっと見つめた。
何かを話しかけている。
唇が動いているのは分かる。
けれど、水越しでは何も聞こえない。
阿部は男の顔を見つめる。
なぜだろう。
不思議と怖くなかった。
安心する。
胸の奥が少し温かくなる。
無意識だった。
阿部の唇が、小さく動く。
「……たすけて。」
声になったのかも分からない。
それでも男は一瞬だけ目を見開いた。
そして、その場を走り去っていく。
(行っちゃった……。)
阿部はまた一人になるのだと思った。
諦めかけた、その時。
ガンッ!
大きな音が響いた。
男が戻ってきていた。
手にはバールのようなものを持っている。
ガンッ!
もう一度。
分厚いガラスにひびが入る。
ガンッ!!
三度目の衝撃。
――パリンッ!!
水槽が大きな音を立てて砕け散った。
大量の水が研究室へ流れ出す。
阿部の身体も水と一緒に外へ投げ出された。
苦しそうに息をする阿部へ、男が駆け寄る。
優しく身体を抱き起こし、そのまま唇を重ねた。
温かかった。
その瞬間、胸いっぱいに空気が入り込む。
阿部はゆっくりと男の顔を見つめる。
「……めめ。」
その名前が自然と口からこぼれた。
そうだ。
この人は目黒だ。
自分を助けに来てくれた、大切な人。
思い出した瞬間――。
___________
阿部は勢いよく目を開けた。
「……夢。」
薄暗い寝室。
聞き慣れたエアコンの音。
隣を見ると、目黒が静かな寝息を立てて眠っていた。
夢の中とは違い、すぐ手が届く距離にいる。
阿部はそっと目黒の手に触れる。
その温もりを感じた途端、夢の中で抱えていた孤独がすっと消えていく気がした。
「めめ……。」
小さく名前を呼ぶ。
眠っていた目黒は少しだけ身じろぎすると、無意識のまま阿部の手を握り返した。
その温かな手に、阿部は安心したように微笑む。
「助けてくれて、ありがとう。」
夢の中でも。
現実でも。
自分を孤独から救ってくれたのは、いつだって目黒だった。
阿部はもう一度目を閉じ、今度は穏やかな眠りへと落ちていった。