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「はぁーーー…まただ。」
DEPでの仕事帰り、街に帰っている最中急に乗っていた車が消えた。追跡アプリを開いても消息不明、ガレージに戻るのも絶妙な距離で仕方なくスケボーを地面に置く。
「今日は何人かいるのか。」
ツイックスを開き個人医のツイートを見つけ、なら心配無いかとゆっくり帰っていると車から声をかけられた。
「ぐち逸ー!!なにしてんの?足無い?」
「ぁっ伊藤刑事…車が突然消えてしまって。」
「えぇ?んな事ある訳ないジャーン、壊れたの?ガソリン切れ?送るから乗りなよ。」
一瞬迷ったがここは好意に甘え、助手席に乗ってベルトを締める。
「車が消えたのは本当ですが。たまにあるんですよ、運転していると恐らく歪みで車だけ急にガレージに返される事が。」
「そんな歪みあんの?俺なった事無いや、災難だったね。」
「私は3、4回目です。」
「そんなに!?ぐち逸運悪いんだね…w」
「今笑いましたか?」
「いやいや笑うなんてそんな失礼な〜。」
怒られそうな気配を察したぺいんは誤魔化しながら次の話題を探す。そういえば医者なら物知りだろう、この気持ちの謎が何か分かるかもしれない。
「そうだちょっと相談して良い?身体…体調?の事なんだけど。」
「どうかしましたか?不調ですか?」
「いや不調って感じでは無いんだけど…最近急にドキドキしたりちょっと身体が熱くなったりして、ボーッとしちゃうんだよね。」
「動悸、火照り、意識の混濁…自覚症状が出たのはいつ頃からか覚えてますか?」
「えーと、3週間前?ぐらいかな。」
「車止めてください。」
「えっなんで?もうちょっとで街入るよ。」
「今すぐ止めてください。」
ガサゴソと医療バッグを漁りながらいつになく真剣に、切羽詰まったような声色で言う。車が端に寄って止まったと同時に助手席から降りて運転席側に周りドアを開けた。
「診察しますから楽にしていてください。」
ペンライトを使って目、耳、鼻、口、喉と丁寧に診ていく。大粒の汗が一滴、ぐち逸の首を伝っていった。
「ここまでは至って健康か。ベスト脱げますか?」
「ぁっとー…そこまでは良いよ、大丈夫。」
「何故ですか、脱いでください。特別痛い事はしませんから。」
「ぅっ…わ、分かりました…///」
「シャツ捲りますよ。ゆっくり深呼吸してください。吸ってー…吐いてー…」
聴診器を胸やお腹に当てられるとくすぐったくて身を捩った。これは仕事で心配して詳しく診てくれているのは分かっているが、恥ずかしさやら嬉しさやらが募り不覚にもドキドキしてしまう。
「心音等は問題無さそうですが確かに心拍数がかなり上がっています。息苦しさやどこか身体の痛みは?」
「ううん、大丈夫…」
「身体触っていきますね、痛かったり違和感のある箇所があったら教えてください。」
頭のてっぺんから足の先まで全身くまなく押したり揉んだり擦ったり、顔から火が出るかと思う程恥ずかしいのを必死に耐えた。
「特段大きなは異変は見受けられませんでしたが病院で詳しい検査を受けてください。」
「う、うん。ありがとう///」
「顔赤いですね、やっぱり熱?…いや無さそうか。」
額や頬、首に優しく触れられじっと目を見つめられる。これは非常に心臓に宜しくない、もう限界のぺいんが声を張り上げた。
「ぁ、ぁぁあ…///ぐち逸!!もう平気だよ、ありがとう!!!」
「それだけ大声が出せるなら本当に平気そうですね。原因は精神的な部分も考えられますが、そこは私は専門外なので。」
何故か動揺しているぺいんを横目に安心して助手席に戻る。が、その気の緩みが仇となり今やった事を思い返すとぐち逸も冷静さを失い顔を赤らめていく。
「…えーと、それじゃ出発するね!」
「ぁっはい、お願いします…」
とてつもなく鈍感な2人は残念ながらお互いの想いに気付けない。揃って真っ直ぐ前を向いて遠くを見ながら落ち着け落ち着け、と自身に言い聞かせた。