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次の日早朝、霧が舞い降りている頃、私は儀式が行われる会場に来ていた。会場の壁には、大小様々な六角柱状に伸びた水晶、ゴツゴツと角張った石、 宝石がはまっているリング、なにかの動物の骨のネックレス、木の皮できているしおりなど、ヘンテコなものがぎっしりと詰まっている。お母さんの話だとこの物一つ一つに精霊が宿っているらしい。私以外にも儀式の参加者はいるので、既に何人かは会場に着いていた。皆なにかに拝むような顔をしていて、中には何かを唱えている者もいた。何故こんなことをしているのかと言うと、精霊によってこの国では身分が決まるからだろう。上位精霊であればあるほど国からの対応が良くなり、いい学校にも行ける。例え親の身分が低くとも、下民だった子が上位精霊と契約出来れば、貴族に成り上がることも出来る。そんなことがあり得る、将来がかかった儀式なのだ。まあ大抵の場合は親の精霊と似た性質で同じくらいのレベルの精霊と契約するため、王族の契約精霊が下位の精霊になって、下民に成り下がることは滅多にない。気がついた頃には儀式の参加者は会場いっぱいに集まっていた。そして時間になり、今回の儀式の精霊官らしき老人が台にでてきた。
「ようこそ!14の若者たちよ。今年も多くの参加者がいることに嬉しく思う。契約の儀式では様々な精霊たちと出会い、契約する。そして君たちの人生に大きく影響することだろう。今回の結果が悪くとも日々努力し、友と共に研鑽しいつか大昔からある魔族との戦いに終止符を打ってくれることを私は望んでいる。それでは契約の儀式を始める。君たちの未来が幸多からんことを願う。」
そう言うと、会場全体が光に包まれ、私たちは目を閉じた。少しした後瞼を開くと、会場いっぱいにたくさんの精霊たちが飛んでやってきた。
「わぁ!可愛い!私と契約してくれる?」
「なんだお前!ちょーかっけー!」
という喜んでいる者や、
「ウゲッ、こんな下位の精霊と契約したくねぇ、、」
「あいだだだ、なんだお前!いきなり殴ってくるなんて💢 」
という、非難の声も聞こえる。そして私はというと、、
「あ、あの〜 精霊、来ないんですけど、、 」
何故か精霊が1人も現れない。もう一度辺りを見渡すが精霊らしい者は誰一人として見当たらない。そんな事態が起こったことがないのだろう。精霊官はポカンとした顔をしてこちらを見ている。会場ではクスクスと笑う声が聞こえてきた。
「うわ、まじ!?お前精霊来てないの?笑えるわ」
「しかも領主の子だろ?親が可哀想だな」
さっきまで自分の契約精霊に非難していた者が私に向かって言ってきた。一方で精霊官は、
「じゃあ、君はまた来年ここに来なさい 」
と言ってきた。会場では私のことを笑う声が大きくなり、精霊契約出来なかった悲しさと悔しさが入り乱れた複雑な気持ちで会場を後にした。そして家に帰ろうとしたが、何やらあちらの方が騒がしい。私は何となく行ってみることにした。
――――――――――――――――――――
行った先には、先程の儀式で精霊と契約していた少年2人がいた。そして鎖を繋がれた跡がある、フードを被って倒れている人がいた。多分、精霊契約をする前に親が捨てたか、死んだかのいずれかの人なのだろう。私たちの国はそういう人の待遇はあまり良くない。なぜなら精霊と契約していないから。契約した精霊によって身分が決まるこの国では彼らの身分は下民でさえ軽蔑することがあるくらいだ。でも、いくら身分が低くてもその人を低く扱っていい訳では無い。むしろ身分が高い人達が身分が低い人々を導くべきだ。私は少なくともそう思う。
「よーしこいつを実験体にして魔法を打ち込むか」
と少年らが言い出した。そうして少年らが魔法を出そうとした時、私の体は動いていた。
「弱いものいじめはダメでしょうが!!!」
そう言って少年1人をぶん殴った。苦しそうな顔をして腹を抱えながら少年は膝をつく。それは当たり前だ。私は皇帝に仕える近衛騎士の父から武術を教えて貰ってるんだから。殴った後は倒れていた人に駆け寄った。酷い怪我だ。全身痣だらけ。これは急ぎめに家に連れ帰った方が良さそうだ。 そう考えていたら
「誰かとと思ったら、お前、精霊契約出来なかった奴じゃねぇか!」
「そうですけど、それがなにか?」
「チッ 俺を殴ったこと、後悔させてやる!」
そう言うともう1人の少年と一緒に魔法を発動させていた。
「「いけ!ファイヤーボール!!」」
メラメラと燃える、結構大きめな炎の球体がすごいスピードで飛んでくるのが見えた。この状態で避けたら倒れていた人に当たってしまう。防ごうとしても残念ながら魔法が使えない私は防御魔法すら使えない。こうなったら私が壁になるしかないだろう。下手したら死んでしまうだろうな。お母さんとお父さんに精霊契約出来なかったと言うことも許されないのか。でもいいや、少年を助けられた。精霊契約は来世に期待しよう。そうやって目を閉じようとしたその瞬間
「やっと見つけた」
と声がしたと思ったら、急に空中が光り出した。そして、ファイヤーボールは消えていってしまった。光が消えて先には、精霊?がいた。