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今現在、自分はどこに向かって歩いているのかもわからず、何を目指して進んでいるのかさえ不明のまま、延々と続く白一色の世界を彷徨っているわけなのだが……まぁ、要するに絶賛迷子中なわけだ。
ちなみに現在地は、四方八方全て同じ風景が続いているので、もはや何処にいるのか見当すらつかない状態である。……というより、こんなところに放り出されては迷うなというのが無理な話だ。とりあえずは、手近にあった岩に座って休憩を取ることにした。
それにしても、ここはどこなんだろう……。
今さらながら考えると、この場所に来る前に何があったのか全く思い出せないことに気がついた。確か僕は、友達と一緒に遊んでいたはずだけど……。……ダメだ、やっぱり何も思い出せない。
仕方なく記憶を辿る作業を諦めて立ち上がった瞬間、背後からいきなり声をかけられた。
「お困りですか?」
振り返ってみるとそこには、見たこともないような美少女が立っていた。
髪は長く美しい銀色に染まっており、瞳の色も左右で違うオッドアイになっている。服装は白を基調としたワンピースを着ていて、首元からは十字架の形をしたネックレスをつけている。年齢は僕と同じくらいに見えるけれど、とても大人びていて不思議な雰囲気をまとっている子だ。
しかし、それ以上に目を惹いたのは彼女が背負っている巨大な鎌の存在だった。刃の部分だけでも僕の身長くらいありそうなほど大きく、柄の方に至っては完全に持ち主よりも長いサイズになっていた。おそらく、あのサイズの大剣を振り回すとなると相当な力が必要なはずなのだが、それを軽々と振り回せるとは驚きだ。
「あなたは誰?ここで何をしているのかな」
質問されたので、僕はとりあえず答えることにした。
僕も何が何だかわからないが、今の状況を説明するとすれば、おそらくこうなると思う。
貴方が意識を失った後、僕の方にも異変が起こった。
貴方の体を通して見ていたはずの光景が突然途切れたかと思ったら、今度は真っ白な空間にいた。そして、そこにいた白い影に声をかけられたんだ。
声をかけられた後、その人は君に色々と話をしていたよ。
最初は何を言っているのかよくわからなかったけど、君の身に起こっている現象について説明しているみたいだったね。
ただ、君はその話を理解できなかったようで、途中からはほとんど反応しなかったかな。
そこで白い影は困ったような仕草をして、すぐに消えてしまった。
それからしばらくして、君が再び目を覚まして現在に至るわけだけど……。
「今の話は本当ですか?」
僕がその問いに答える前に、少女は続けて言葉を口にする。
じゃあ、あなたは僕を助けてくれたんですか? えっと、一応そうなるのかな。
でも、まぁいいか。とりあえず前に進むことにしよう。
たとえ何があったとしても、僕はここで立ち止まるわけにはいかない。
そう決意を新たにしたところで、突然、視界の端に人の姿が現れた。
「やあ」
こちらに向かって手を振りながら、軽い調子で話しかけてくる。
一瞬、幻ではないかと疑ったが、すぐに思い直すことにした。
ここは夢の中なのだから、相手の姿が見えないほうがおかしいではないか。
それによく見ると相手はかなり背が高い。見上げるようにして話さなければならない。
声色もかなり若々しいし、おそらく私と同年代くらいの男性なのではないだろうか。
だが、私の知っている限り、このような場所に知り合いはいないはずだ。
やはり、これも夢の一部ということなのかもしれない。
そう思って、改めて辺りの様子を窺ってみるが、やっぱり誰もいないし、特に変わったところもなかった。
うん、きっとそうだ。全てはこの男の妄想に違いない。
こんなところに一人でいる時点で十分怪しいし、きっとどこか変な宗教の勧誘員とかなんじゃないだろうか。