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2 - わんころクーパー

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2025年06月04日

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淡い光を灯したモノアイが、けたたましい機械音と共にキョロキョロと動き始めた。まるで長い眠りから覚めたばかりの動物が、周囲の状況を把握しようとしているかのようだ。そして、次の瞬間。

ワンッ!ワンワンッ!

ケイトは思わずたじろいだ。金属質の咆哮がガレージに響き渡り、固定されたクーパーが激しく身をよじった。その犬型の顎が、固定具の金属部分に鋭く食い込み、ギチギチと音を立てて噛み砕こうとしている。その動きは、まるで生きている犬そのものだ。

「お、落ち着け、クーパー!」

ケイトは慌てて声をかけたが、クーパーは彼女の声には反応しない。ただひたすらに、自由になろうと暴れ続けている。その目には、本能的な闘争心が宿っているかのようだった。

このままでは、固定具が破壊されてしまう。ケイトは慎重に、しかし素早くクーパーの拘束を解き始めた。まずは頭部近くの固定具を緩め、次に前脚、後脚と、順番に外していく。クーパーの歯が、間一髪で彼女の手をかすめる。

全ての拘束が解かれると、クーパーは一瞬の静寂の後、再び吠えながらガレージの床を走り回った。

激しい動きは唐突に止まった。モノアイがケイトに向けられ、次の瞬間、まるで迷子になった子犬のように、小さく鼻を鳴らした。

「クゥーン…クゥーン…」

その金属質の喉から発せられる音は、先ほどの咆哮とは打って変わって、どこか心細く、助けを求めるような響きだった。クーパーはケイトの目の前にちょこんと座り込み、そのモノアイは訴えかけるように彼女を見つめている。まるで、何かを伝えようとしているかのようだった。

クーパーの哀しげな鳴き声に、ケイトは迷わず手を差し出した。犬ならこうするのが適切だろうと、彼女は直感的にクーパーの金属製の顎に触れた。ひんやりとした感触だが、彼女の指先が優しく撫でると、クーパーのモノアイがゆっくりと細められ、体の震えが少しずつ収まっていくのがわかった。

「よしよし…大丈夫だ」

ケイトは低い声で語りかけながら、撫でる手を止めなかった。すると、クーパーは突然、ガシャン!と音を立てて床に倒れ込んだ。ケイトは思わず身構えたが、クーパーはそのままゴロゴロと体を転がし、無防備にもお腹を見せたのだ。

その姿は、まるで信頼を寄せる相手にだけ見せる、犬特有の服従のポーズだった。機械であるはずのドローンが、これほどまでに犬のような行動を見せることに、ケイトは驚きを隠せない。同時に、その無垢な仕草に、彼女の心は温かい感情に包まれた。

「ハアッハァッ、ワンッ!」

クーパーは満足そうに息を弾ませ、金属製の尻尾をパタパタと振り始めた。そのメカニカルな動きは、まるで本物の犬が喜びを表現しているかのようだった。ケイトは思わず頬を緩める。

「可愛い…」

ケイトは心の底からそう思った。油と金属にまみれた日々の中で、忘れかけていた温かい感情が、彼女の胸にじんわりと広がる。この奇妙な出会いが、彼女の整備士人生を大きく変える予感がした。彼女はもう、このクーパーをただの機械として見ることができなくなっていた。

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