テラーノベル
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深夜2時を少し回り、賑やかさで定評のある(とある隊員談)第3部隊、その宿舎にもようや
く静けさがおちた頃。
とっくに冷めたコーヒー、減る兆しも全くない書類、先刻から定期的になり続けているスマ
ホのバイブレーションに対し、完全無視を決め込んでいた現在3徹の社会人こと保科は、無
駄なくらいに、それはもう第3の面々よりやかましい怪獣出現アラームがなり、出動を余儀
なくされた。
『副隊長!』
「音量よ」
耳元のイヤホンから危うく鼓膜を破壊しかねないオペレーターの声。
それに対し一秒足らずでつっこめるくらいには相性がいい。
ちなみに声の持ち主は最も保科を理解していると噂の(とある隊員談)小此木だった。
「あー…最悪やでほんま」
特に誰にでもなく放った言葉をイヤホンの向こうの相手が目ざとく拾う。
『まぁ、副隊長含めて皆叩き起こされてるんで…オペレータールームは眠らないですけど
ね』
「oh…そうか…」
ひょっとすると戦闘員より過酷なオペレーター職務の闇がチラリズムしたところで。
「んで今回の怪獣の特徴は?」
『甲殻系です。本獣一体と無数の余獣が確認されています』
双方の声のトーンが1段下がり、真面目な会話が繰りだされる。
「甲殻系…よかったわ、相性いい怪獣で」
『あのとりあえず特大フラグ立てるのやめません?』
スーツに腕を通しながら、あっという間に観客なしのセルフ漫才が再開される。
「そろそろでるけど。小此木ちゃん、本獣の特徴は?」
『あー、多分見たほうが早いと思います』
「…見たほうが、」
『亜白隊長なしでは…厳しい?かもしれないですね』
「巨大なんか?」
『そうですね。ですが今亜白隊長は』
不在、だった。
タイミングが悪いことこの上ない。
ため息を飲み込みつつ、いつも通り短剣を腰に携えて戦場におもむく。
ゆらゆらと揺れながら本獣上空を飛ぶヘリのなかから姿かたちを視認した保科は、絶対に日
常会話で使わない単語を少々のタイムラグののち引っ張り出した。
「シャコ…」
シャコ。軟甲綱トゲエビ亜綱シャコ目に分類される甲殻類の総称。寿司ダネなどになる食用
種としてよく知られる。ちなみにこの場のだれも食べたことはない。
前足(?)のパンチが強力でも有名なこの生物。代表例としてモンハナシャコが挙げられ
る。
あの小さな身体で水槽にヒビを入れる威力を持つそうだ。ましてやあんな巨体で、スーツ補
助があるとはいえの人間が、パンチをうけた、なら。
「即死ですわな」
『縁起が悪い!』
小此木の速度重視のツッコミをさらりと受け流し、ヘリのドアを開ける。
吹き飛ばされそうな突風が車内に流れ込んだ。
これと似通った状況(※ゴ●ラ…?)でも何故か崩れなかった某ゲーム命隊長の前髪のすご
さは尊敬するとして。
「さー行きますか」
物理法則完全スルーの某前髪メッシュ隊長とは違い、物理法則にしっかり影響されながら飛
び降りる。
モンハナシャコがモデルなのか、本獣はその特徴的な鮮やかな色彩の外骨格を受け継いでい
た。
大変目に悪い。
本獣を囲むようにたむろする余獣を小手調べ程度に討伐する。
余獣なら、保科と圧倒的な力の差があり、相手にすらならない。
だが、まぁ。
「問題は本獣ですから」
この場での最優先事項は本獣を討伐すること。
余獣と比べ物にならない程に大きく、外骨格が分厚い本獣は近接特化の保科にとって最も分
が悪い相手だった。
『亜白隊長がいてくれたら…』
この場の全員が思っていることを小此木が代弁する。
亜白隊長ならシャコなんて余裕なのに。
シャコなんて。
本獣の気をそらしつつ背後にまわりこんだ保科は斬り込む。
わかりきった答えだった。
外骨格に僅かに傷がついた。
だが、もちろん刃はその下の筋繊維までとどくことはない。
保科はちっと舌を鳴らす。
「そらそうやわなぁ。これやから大型は」
その時。
ちょうどシャコと相対していた保科の背後で、パンッと乾いた音がした。
反射的に振り返る。
余獣を目の前にした無もなき一般隊員の手にしたライフルが鉄くずとかして地面に転がっ
た。
銃口側からの強い衝撃によって大きく潰れた元ライフルを見て、さすがの保科も苦々しい顔
を見せた。
「シャコパンチ…」
コメント
1件
もう「シャコっておいしいのかな」ってタイトルからしてツボなんだけど……! 関西弁の保科副隊長と小此木ちゃんの漫才じみたやり取りが深夜テンションすぎて笑ったわ。シャコパンチでライフル粉砕って何そのモンハナシャコ再現、甲殻系の外骨格相手に近接特化が苦戦するのが解像度高くて好き。続きで隊長がどう絡むのか超気になる🔥