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「おはよー、ジェルくん」

「おはよ、ななにぃ」

ななにぃの朝は早い。中等部3年で生徒会長になって、カリスマ性を発揮したななにぃは高等部に上がり前代未聞の1年生から生徒会長になっている。学校行事のこととかでやらなきゃいけないことが多いらしく、いつも忙しそう。

「はい、今日のお弁当と朝ごはん」

「いつもありがとね?」

にぃに達は朝ごはんを食べる習慣が物心ついた時からないらしい。だからサンドイッチとかおにぎりを持たせてあげる。起きたては食べれないかもしれないが成長期に朝ごはんを抜くのはよくないと訴えかけたら折れてくれた。ちなみにお父さんもお母さんもすでに仕事に出ており、俺のつくったお弁当を持って行ってくれている。

「ジェルくんぎゅーっ」

「はいっぎゅー」

傍にきたななにぃが手を広げて俺を見たので、そこに納まって抱き着く。ななにぃが今日も一日健康に頑張れますようにのおまじないで、お母さんにやっているところを目撃され、俺より早く出るお父さん、ななにぃにもすることになったのだ。つまり我が家のおまじない。

「行ってきます」

「行ってらっしゃい」

ななにぃを見送ったらさとにぃを起こすのが俺の日常。さっきまでななにぃと一緒にお邪魔していたさとにぃの部屋。なんだか家族が増えてから一回も自分の部屋で寝てない気がするのは気のせいだろうかと思ったが一先ずそれは置いといて、任務を達成すべくねむねむ星人さんの肩を揺さぶる。

「さーとーにぃ?」

「…」

「おきて?」

自分の兄ながら、寝ている顔まで整っているなんて恐ろしい。まじまじと顔を見つめていたら揺さぶっている手首を掴まれ、布団に引きずり込まれた。

「うわぁっ」

正面からぎゅっと抱え込まれるように抱き締められ、さとにぃの唇が俺の耳に触れる。

「おはよ、るぅと♡」

「っ」

寝起きのかすれ気味なめちゃめちゃいい声が耳から入り脳天を攻撃したせいで、得体の知れない何かが背筋をぞわぞわとかけていく。耳が弱い俺は咄嗟に出そうになる変な声を口を押えることで耐えた。俺の反応に気づいてるさとにぃは楽しそうにけらけらと笑っていてその振動が伝わってくる。

「さ、さとにぃ、起きとったん?」

「ん。ジェルが起こしてくれるの待ってた」

「もー、学校遅れるで?」

「んーもう少し大丈夫やろ」

「五分だけやからな?」

いつもはななにぃに正面から抱きしめられて眠るから、さとにぃが正面にいるのがなんだか新鮮。手が自然と俺たちの間に合って、さとにぃの胸に触れているのだけれど服の上からでもわかる、男の人らしい胸板。

「いいなぁ…」

「なにが?」

「さとにぃの胸筋」

「くっくっ、まだ諦めてなかったの?」

「だってさとにぃかっこいいやもん」

「それはさんきゅだけど、でもジェルは今のままでいいんです。あきらめな」

「…はぁい」

なぜかお父さんとななにぃとさとにぃには俺のムキムキ計画を止められる。

俺自身も想像すると似合わない気がするからいいのだけれど、少し腑に落ちない。

さとにぃの鼓動と時計の針の音を聞きながら少しだけ目を瞑る。温かくていい匂いで名残惜しいけれど。

「さて、そろそろ起きよ?さとにぃ」

「う~…おきるかぁ」

のそのそと起き上がったさとにぃの腕から抜け出し支度を待つ。さとにぃは俺と一緒に登校するようになったのは、朝が弱いさとにぃを置いて行ったら心配だからやめてくれって中等部まで乗り込んできたからだ。

「お待たせ、いくか」

「うん!」

今まで一人で登校していたから誰かと一緒なのが嬉しい。中学生にもなって子供みたいだから言わないけれど、ななにぃも一緒ならもっと嬉しいのになぁと思う。

「あ、今日バイトだわ」

「了解、頑張ってね?」

「おう」

お母さんとお父さんは今日は会社帰りにデートしてくると言っていた。新婚の二人はラブラブで、その二人の息子だけれど微笑ましくてにやにやしてしまう。最初に不安視していたお母さんが俺だけのものじゃなくなっちゃう寂しさは今のところない。

「ほら。ジェル」

校門の前、さとにぃとお別れするところで、声をかけられる。ななにぃと一緒で手を広げて待っているから、俺はそこに飛び込むのだ。寂しくないのはきっと、こうしてにぃに達が構って甘やかしてくれるからだろう。

「今日もがんばれ」

「さとにぃも」

ざわざわと周りが騒がしい気がするけれど毎日の慣れだろうか、最近は気にならなくなってきた。だってこんなにかっこいいにぃに達がいるんだからしょうがないよね。



「うん、いい感じ!」

今日の夕飯の手作りハンバーグは我ながらよくできたと思う。

「ただいまぁ~」

「おかえりなさい、ななにぃ!」

帰ってきたななにぃがリビングの扉を開けて顔を出してくれただけで少し心が晴れた。というのもお母さんと二人暮らしの時は独りの時間なんて全然平気だったのに、家族が増えてから独りの時間の静寂が少しだけ怖くなってしまったからだ。

「ななにぃご飯食べる?」

「うーん、さとちゃんがあと30分くらいで帰ってこれるらしいんだよね」

「じゃあ待つ。三人で食べたほうがおいしいもん」

「そうだね、ジェルくんちょっとこっち来て?」

スープにかぶせてた蓋を鍋に戻してエプロンを脱ごうとしたところに、ソファーに座ったななにぃが俺を呼んだ。

「どうしたん?」

目の前まで行くと腰のあたりに正面からぎゅっと抱き着かれる。お腹にぐりぐりと頭をこすりつけてくるななにぃは子供みたいで、いつもと立場が逆だ。

「ジェ~ルく~んんん」

「ふふふ。ななにぃ、お疲れさまやな?」

「うん…」

お腹にくっついてるサラサラな頭を撫でる。どうかななにぃが癒されますように、と心で唱えながら。

「ななにぃ頑張り屋さんやもん、いいこいいこ」

いつも甘やかされてるのは俺だから。甘えられている気がしてちょっと、いやだいぶ嬉しい。ふざけていい子なんて言ってみたら少し腰に回された腕の力が強くなった。

「ジェルくん、きいてくれる?」

「うん?どうしたん?」

「…後輩が仕事を真面目に捉えないで、甘く見てたんだよね。軽く注意はしてきてたんだけど全然響かなくてさ、ちょっと放置してたの」

「…うん」

「そうしたら今日、危うく今までのが水の泡になりそうなくらいピンチになっちゃって…生徒会だけじゃなく、ほかの手伝ってくれてた委員にまで迷惑をかけてしまいそうになったんだ」

「うん」

ぽつりぽつりと話してくれる言葉は、いつもの優しい声なんだけどどこか元気のない声。

「そのピンチはなんとかなったんだけど、すごい怒鳴っちゃってさ」

「うん」

「俺ももう少し目を配っていれば防げたことだから…優しく言ってあげらえなかったかなぁ、って反省した」

「…そっかぁ」

ななにぃだって人間だ。ずっと頑張り続けることはとても大変で。何もかもに目を配ることは不可能で。この細い肩に大きい責任が乗っかっているのだと思うとたまらなくなる。

「ななにぃはその人に真剣に向き合ってるってことだと思う、で?俺知っとるもん。怒るのにも体力いるってこと」

「ジェルくん…」

「その人の事をちゃんと考えてあげてるからななにぃは真剣に怒っちゃったんやで」

「うん」

左手で頭を撫でて右手で肩を撫でる。俺のお腹に埋まってるお顔が見たいな。あの優しい顔で笑ってほしいな。上手く言葉にできないけれど、伝わってくれるといいな。

「きっと大丈夫。だってななにぃの後輩だもん、きっと今回のことを乗り越えてくれる!」

「うん、…うん。ありがと」

ななにぃが顔を上げてくれて、少しすっきりした様子だった。俺も少しは役に立てただろうか。

「ななにぃはちょっと頑張りすぎなので、…たまには頑張らないことを頑張って?」

「あははっ、ありがとねジェルくん」

元気になったっぽいななにぃに腰を引かれ、膝の上にお邪魔をしたらさっきより近くでぎゅーっとされた。

「ジェルくん可愛いなぁ」

「元気でた?」

「めっちゃ癒されて元気でた!」

首に当たるななにぃの髪がくすぐったい。俺もにぃに達を甘やかすことができたのかな、なんて調子に乗ってしまいそう。

「俺にできることなら何でも言ってや?俺だってにぃに達を甘やかしたい!」

「…なんでもいいの?」

「うん!」

「じゃあ…」

何を言われるんだろう。頑張り屋さんのななにぃにしてあげられることなんてきっと限られてしまうけれど。それでも何か出来るかもしれないことが嬉しくてわくわくしながら返事を待つ。

「ジェルくん、ちゅーして?」

「へ?」

「ちゅー?ちゅーってあのちゅー?」

「そう、あのちゅー」

「!」

要求されたものは想像をはるかに超えるもので、一気に頬が熱くなる。

「…だめ?」

ななにぃの甘い低い声と可愛らしい仕草に胸がきゅんとなる。ドキドキして顔を赤くしている俺とは対照的に、ななにぃは純粋に見つめてくるから、もしかしてちゅーは普通なのだろうか

確かに幼いころママに頬にされた記憶はあるけれど中学生になってからはないし、ななにぃにすると思うと恥ずかしい。

(恥ずかしくなっちゃう俺がえっちなのやろうか?)

余計な事を考えて動けなくなる前に瞳をぎゅっと瞑って唇を近づける。


ふにっ。


「え?」

「あ、…!?」

目を瞑ったからか頬にするつもりが唇に触れてしまった。

「ご、ごめっ…」

「それはずるいなぁ」

「え?」

ななにぃは顔を真っ赤にして唇を押さえてる。ぽつりと零れた言葉の意味を理解する前に、ひょいっと体が浮いた。

「わっ!」

「なぁに可愛い事させてんの、なーくん?」

「あ、さとちゃんお帰り~」

「さとにぃお帰りなさい」

「ただいま」

いつの間にか帰ってきていたさとにぃがななにぃの隣に座って、そのお膝の上におろされた。

「てかなーくん、抜け駆けじゃない?」

「いや俺もまさかだったよね、完全にやられた」

「まぁあれは不可抗力よな」

「だよね?さとちゃんみてたでしょ?」

「気づいてたんかい(笑)」

二人が俺のよくわからない会話をぽんぽんとしているので見守っていたら、さとにぃがじっと至近距離で見つめてきた。

「で?ジェルはなーくんに何してたの?」

「えっと…頑張り屋さんのななにぃを甘やかしたくて…」

「ふーん?俺には?」

「!?」

「俺もバイト頑張ってきたんだけどなぁ?」

「うぅ~」

キラキラした期待するような目で見つめられ、意を決してさとにぃの頬に唇を当てる。

ちゅっ。

今度は頬へのキスが成功した。けれど目の前のさとにぃはむっとしたような意地悪な顔をして、近づいてくる。

「違うでしょ、こっちでしょ」


ちゅっ。


「!?」

恥ずかしがる隙もないくらいスマートにさとにぃにキスされた。こうして俺の唇はにぃに達に立て続けに奪われた。

「…はじめてやったのになぁ」

俺の言葉ににやにやするにぃに達。そんな二人を見て、ななにぃとさとにぃが嫌じゃないならいいかと思ってしまったし、俺自身もキスしたこともキスされたことも嫌じゃないから不思議。俺も大概、二人に甘い証拠なのだろう。

内心あたふたしまくっている俺とは違って、大人なにぃに達はいつも通りで。多分意識したほうがえっちなんだと思ったから何気ないふうを装うことにする。

「、さて、ご飯たべよ?」

「おなかすいたねー」

「今日はジェルが作ってくれたん?」

「うん!ハンバーグにしたんやで!」

「お。うまそ」

「俺ご飯よそるよ」

この日からキスが日常に加わり、にぃに達により一層ドキドキさせられることをキッチンに向かった俺は露程も知らなかった。


マジでこれ書く時ドキドキする

次回♡500

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