テラーノベル
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ライブリハーサルが始まった。
ステージにはまだ本番用の照明は入っていない。
白い作業灯だけが広い会場を照らし、スタッフが慌ただしく行き交っている。
立ち位置を確認しながら、それぞれ次の位置へ歩き出す。
「はい、一回暗転入ります!」
照明が落ちる。
先ほどまでの眩しいくらいの明るさから一転、視界が黒く染まった。
その暗闇の中で、柔太朗が次の立ち位置へ向かって歩き出す。
同じタイミングで、大きな平台を運ぶスタッフも横切っていた。
スタッフ同士が声を掛け合っているが、機材で前が見えていない。
このままだと接触してしまう。
考えるより先だった。
「……柔太朗!!」
声が出た。
柔太朗が驚いて歩みを止めて振り返る。
その瞬間、平台が目の前を通り過ぎた。
「おっと!」
スタッフが慌てて足を止める。
「すみません!」
「いえ、こっちこそちゃんと見てなくて」
危なかった。
ほんの少しタイミングが違えば、ぶつかっていた。
「はやちゃん、ありがと」
柔太朗が笑う。
「全然気付かなかった」
いつもの笑顔。いつもの声。
それだけなのに、返事ができなかった。
今、
俺、
呼んだ。
…呼べた。何も考えず。
好きだから呼べなくなっていた名前を、
守りたいと思った、その一瞬だけ、何の迷いもなく呼んでいた。
胸の奥で、何かが静かにほどけていく。
「……ん、」
ようやく、それだけ返した。
⸻
少し離れた場所で、その一部始終を仁人が腕を組んだまま見ていた。
隣では舜太が小さくガッツポーズをして、太智は歓声をあげてしまいそうな自分の口を手で塞いでいた。
そして三人は示し合わせたように目を合わせて、舜太が、勇斗に見えない角度で口だけ動かす。
「呼べた!」
その一言だけ。
仁人が肩を揺らす。
太智は、もう我慢せず大きな声で笑っていた。
誰も何も言わない。
言わなくても、三人には十分だった。
あとは本人だけが、まだ気付いていない。
コメント
3件
はやちゃん、呼べたね…!!😭💕 暗闇で咄嗟に「柔太朗!!」って叫ぶシーン、めっちゃ胸にきた。好きすぎて呼べなくなってた名前を、守りたい一心で呼べちゃうとこが最高すぎる…。それを見てる三人の反応もいいよね、特に舜太のガッツポーズと太智の口押さえ!「あとは本人だけがまだ気付いてない」ってラスト、もうキュンが止まらないよ!!🌸✨
眠りひめ
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