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高校一年生・女子(仮名:Sさん)
クラスで孤立しています。最初は仲がよかった子たちとも、話が合わなくなってきて、今は誰ともちゃんと喋れていません。
私に原因があるんだと思います。きっと、どこかで間違えたんだと思います。
どうしたら、戻れるでしょうか。
(教室、放課後。カーテンが揺れて、窓の外は藍色に沈んでいる。三人だけが残っている)
蓮司
「“戻れるでしょうか”ねぇ……」
(椅子を揺らしながら)「その場所、ほんとに“君の居場所”だったのかな?」
遥
「おまえさ、いきなりそれ言う?」
「“戻りたい”って思ってんだよ、この子は。……その気持ち、否定すんのかよ」
蓮司
「否定してないよ。むしろ、正直でいいと思ってる」
(目線は窓の外)「でも、“戻る”って言葉にはさ……“間違えたのは自分”って前提があるじゃん? それ、本当に正しい?」
日下部
「……“どこかで間違えた”って、自分を責める言い方、俺もよくしてた」
「でも……たぶん、そうじゃないと思う。
人は、少しずつ変わってくから。どこかひとつが原因って、あんまりないんだよ」
遥
(小さくうなずく)「うん。……オレもさ、気づいたら誰も喋ってなくて」
「どっかで間違えたんだって思って、謝ろうって思ったけど……誰にも、何がいけなかったのか聞けなかった」
蓮司
「ね。そういうとき、だいたい“自分が悪いことにしておいたほうが楽”なんだよね。答え合わせ、しなくて済むから」
(ふっと笑う)「でも、君の孤立は“間違い”じゃなくて、“自然な結果”かもしれないよ?」
日下部
「それ、たぶん正しい。……でも、冷たく聞こえる」
「この子、たぶん“戻る”って言ってるけど、“誰かとまた笑いたい”って言ってるんだと思う」
遥
「そう。……ただ、誰かと、喋りたいだけなんだよな」
「最初みたいにじゃなくてもいい。ちょっとでいいから、
“おはよう”って返してくれる声がほしいだけ、なんだよな」
(しばらく、誰も喋らない)
(教室の時計の音が、やけに響いている)
蓮司
「……じゃあ、言ってみればいいんじゃない?」
「“戻りたい”って。――ただし、君自身が“どこにも行ってなかった”って顔で、ね」
「たぶんそれが、いちばん強いから」
日下部
「勇気がいるけど……伝えてみても、いいと思う」
「うまく言えなくても、“また話したい”って、そのままの言葉で」
遥
「……オレも、言えばよかったって、後悔してる」
「だからさ、君は……今、言ってみていいと思う。怖くても。
それでも、オレは、そうしてほしいって思う」
(夕暮れの光が、黒板に差し込む)
🗝三人からのことば
蓮司:
「“戻りたい”って言えるうちは、まだ君は折れてない。
問題は、“どこに戻るか”を間違えないこと、だね」
日下部:
「君がつらいって感じること自体が、
ちゃんと人を求めてる証拠だと思う。恥ずかしいことじゃない」
遥:
「伝えたほうがいい。黙ってると……ほんとに、何も変わんないまんまだから」