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#役者パロ
1,200
322
文スト×ヒロアカ 2
「わーたーしーがー!」
五時間目。
廊下から響いた聞き覚えのある大声に、教室中の視線が一斉に扉へ向いた。
誰かがごくりと喉を鳴らす。
そして――
「普通にドアから来たーーー‼︎」
「「「「オールマイトだー!!」」」」
扉を開けて現れたのは、テレビで見慣れた巨大な影。
金色の髪。
圧倒的な筋肉。
まるでアメコミから飛び出してきたような存在感。
No.1ヒーロー、オールマイトだった。
「本当に先生してるんだ……」
「画風違いすぎるだろ……」
教室中がざわめく。
そんな反応に満足したのか、オールマイトは大きく頷いた。
「早速だが今日のヒーロー基礎学はこれ!」
ばばん、と一枚のカードを掲げる。
「戦闘訓練だ!」
「戦闘!」
「訓練!?」
爆豪の口元が凶悪に歪み、緑谷はどこか不安そうな声を上げる。
オールマイトはさらに笑みを深めた。
「そしてそれに伴って~、こちら!」
片手を掲げる。
すると教室前方の壁が音を立てて開き、中から幾つものケースがせり出してきた。
「入学前に提出してもらった個性届の要望に沿って作られた――」
オールマイトが大きく両腕を広げる。
「ヒーローコスチュームだ!!」
「「「「コスチューム‼︎」」」」
歓声が爆発した。
ーーーーー
女子更衣室。
戦闘訓練の説明が終わり、各自コスチュームへ着替えることになった。
ガラガラとロッカーが開く音。
制服を脱ぎ始める女子たち。
その中で――
「……」
中也だけが固まっていた。
(未だに慣れねぇ……)
生まれ変わって十五年。今世では完全に女子として生きている。
だが、
それとこれとは別問題だった。
女子更衣室。集団での着替え。
どうにも落ち着かない。
「中原さん?」
麗日が首を傾げる。
「どうかした?」
「いや……別に。」
即答だった。
だが、明らかに挙動がおかしい。葉隠が声を上げる。
「あー!」
びしっ。
見えない指が中也へ向いた。
「照れてる!」
「え?」
「絶対照れてる!」
「そうなの?」
芦戸まで食いついた。
「顔ちょっと赤いよね?」
「気のせいだ。」
「いや赤いって。」
「赤いわね。」
「赤いですわ。」
包囲網だった。
中也は帽子を深く被り直したくなった。
だが今は更衣室である。
帽子はない。逃げ場もない。
(勘弁してくれ……)
すると。
隣で着替えていた八百万が何気なく振り向いた。
「そういえば中原さんのコスチューム、とても素敵でしたわ。」
「ん?」
「大人っぽくて。」
「ありがとうございます。」
自然に会話する。
その瞬間だった。
視界に入る八百万。
そして、
(発育の暴力……)
中也の思考が止まった。
いや。
自分も決して小柄なだけではない。
全体のバランスは悪くない。むしろ良いと言えるだろう。
だが、
目の前の八百万は別次元だった。
圧倒的だった。人体の神秘だった。
「中原さん?」
「……いや。」
思わず目を逸らす。
「何でもねぇ。」
女子たちは気付いていない。
だが耳郎だけは察したらしい。
「……あー。」
何かを理解した顔になる。
そして。
ちらり。
八百万を見る。
ちらり。
中也を見る。
「なるほどね。」
「何が?」
「何でもない。」
耳郎は笑いを堪えながらロッカーを閉めた。
一方、
芦戸たちは別方向で盛り上がっていた。
「でもさー!」
「中原って意外と恥ずかしがり屋だよね!」
「そうそう!」
「普段めっちゃ堂々としてるのに!」
「ギャップ萌えってやつ?」
「可愛い!」
「可愛いわね。」
「可愛いですわ。」
「やめろ。」
即答だった。
だが女子たちは全く止まらない。
中也は深いため息を吐いた。
(雄英の女子も大概だな……)
そう思いながら。
戦闘訓練用のコートへ袖を通したのだった。
ーーーーー
グラウンドβ。
ヒーロー科一年A組は、それぞれのコスチュームに身を包み整列していた。
派手な装甲。
特殊なスーツ。
マント。
マスク。
個性に合わせた様々な装いが並ぶ中――
「中原、カッケェな!」
「なんか大人の色気って感じ!」
そんな声が自然と上がる。
視線の先にいるのは中原中也。
否――今世では少女として生まれ変わった中原中也だった。
彼女のコスチュームは、一言で言えば異質だった。
ヒーローらしさがない。
だが、目を奪われる。
漆黒のロングコート。
その下には身体にぴたりと沿う灰炭色のベスト。
整えられたシャツ。
ネクタイ。
そして細身のパンツ。
全体としては厳格なスリーピース。
まるで一流企業の重役か。
あるいは――
「マフィアみたいだな……」
誰かがぽつりと呟いた。
実際、その印象は間違っていない。
中也の姿には、学生とは思えない危険な完成度があった。
灰色のベストは引き締まった身体の線を容赦なく浮かび上がらせる。
くびれ。
肩のライン。
脚の長さ。
それらを隠すどころか、むしろ際立たせていた。
全体を黒で統一しているからこそ、夕焼けのような赭色の髪が鮮やかに映える。
その姿は前世の中原中也を知る者なら、一目で面影を感じるだろう。
ほとんど同じ。
ただ一つを除いて。
(……チョーカーはない)
ふと首元へ手が伸びる。
何もない。
今はない。
けれど。
(あれだけは……)
脳裏を過ぎる青い影。
包帯。
人を食った笑み。
腹立たしい声。
(あれだけは、あいつに貰ったものがいい)
理由は分からない。
認めたくもない。
だが、そう思ってしまった。
「おーい中原!」
切島の声で我に返る。
「何ぼーっとしてんだ?」
「……別に」
中也は帽子のつばを軽く押し下げた。
「なんでもねぇよ」
そう言いながらも。
ほんの少しだけ。
誰にも気づかれない程度に。
その表情は柔らかくなっていた。
ーーーーー
「良いじゃないか皆、カッコいいぜ!!」
グラウンドβに集まった一年A組へ向けて、オールマイトが満足そうに両腕を広げた。
それぞれが自分専用のヒーローコスチュームを身に纏っている。
アーマー型、スーツ型、機能重視、デザイン重視。
個性に特化したあらゆるデザインが並ぶ。
「先生!」
飯田天哉が勢いよく手を挙げる。
全身を覆うアーマー型スーツはまるで近未来の騎士のようだ。
「ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか!」
(おぉ……)
中也は思わず感心した。
(やっぱ飯田のコスチュームかっけぇな)
真面目な性格に実によく似合っている。
そんな飯田の質問に、オールマイトは力強く拳を握った。
「いいや!」
にっかり。ヒーローの象徴らしい笑み。
「もう二歩先に踏み込む!!」
生徒たちが顔を上げる。
「屋内での対人戦闘訓練さ!!」
ざわり、と空気が動いた。
敵ヴィランとの戦闘…それも屋内戦。確かに現実では、凶悪犯ほど人目を避けて活動する。
監禁・立てこもり・違法取引…危険な現場の多くは建物の中だ。
「君たちにはこれから!」
オールマイトが高らかに宣言する。
「敵ヴィラン組とヒーロー組に分かれて、二対二の屋内戦を行ってもらう!!」
一瞬の静寂。
そして――
「えっ!?」
「二対二!?」
「いきなり!?」
教室以上の騒ぎが起こった。
「基礎訓練もなしに?」
蛙吹梅雨が首を傾げる。
「その基礎を知るための実践さ!」
オールマイトは親指を立てた。続いて質問が飛び交う。
「勝敗条件は!?」
「ぶっ飛ばしていいんスか!」
「奇数ですけどどうするんですか?」
「除籍とかあるんですか……?」
「チーム分けの基準は?」
「このマントどうすればいい?」
「んんん〜〜〜〜〜ッ!!聖徳太子ィィィ!!」
生徒たちから笑いが漏れる。中也も少しだけ口元を緩めた。教師としてはまだまだ初心者らしい。
「状況設定はこうだ!」
オールマイトは気を取り直した。
「敵ヴィランがアジトに核兵器を隠している!」
「核兵器……」
誰かが呟く。
「ヒーロー側は敵ヴィランを捕まえるか、核を回収すること!」
「敵ヴィラン側は制限時間まで核を守るか、ヒーローを捕まえること!」
生徒たちは何とも言えない顔になった。あまりにもアメリカ映画だった。
(ナンバーワンヒーローがバリバリに台本読んでるじゃねえか……)
中也は心の中で苦笑する。そこへ飯田が再び手を挙げた。
「チーム分けはどのように!?」
「くじだ!」
「適当なのですか!?」
飯田が悲鳴を上げる。オールマイトは頷いた。
「プロは他事務所との急なチームアップも多い!」
「うん、それを見越してるんじゃないかな」
緑谷が補足する。
「なるほど!」
飯田は即座に納得した。
「失礼致しました!」
「いいよ!!」
オールマイトが笑う。
そして、
「あー、それと一つ問題がある!」
全員の視線が集まった。
「このクラスは二十一人!」
「つまり一人余る!」
確かに、二人一組なら二十人。一人だけ余る。
オールマイトは中也を見た。
「という訳で!」
嫌な予感がした。
「特待生の中原少女には、一人チームとして戦ってもらう!!」
沈黙。
数秒後。
「えっ!?」
麗日が思わず声を上げた。
「流石に不公平じゃ……?」
しかし当の本人は平然としていた。
「いや、別に構わねぇよ」
中也は肩を竦める。
「一人も二人も変わらねぇし」
さらり…と、当然のように。
「そっちの方が気楽だ」
その言葉に、何人かの空気が変わった。
爆豪勝己、轟焦凍…特にその二人。
ピクリと眉が動く。挑発と受け取ったわけではない。だが、強者の余裕。
それを感じ取った。
(まぁ、そうなるよな)
中也は内心で苦笑した。別に見下しているわけではない。実際、自分が混ざればバランスが崩れる。教師陣の判断は妥当だ。
だが同時に、胸の奥で思う。
(俺と対等に組めるのは)
脳裏に浮かぶ、大っ嫌いな彼奴の顔。
(あの青鯖だけだ)
すぐにその考えを振り払う。そしてくじ引きが始まった。
やがてチーム分けが決定する。
* A:麗日お茶子・緑谷出久
* B:轟焦凍・障子目蔵
* C:八百万百・峰田実
* D:飯田天哉・爆豪勝己
* E:青山優雅・芦戸三奈
* F:砂藤力道・口田甲司
* G:上鳴電気・耳郎響香
* H:蛙吹梅雨・常闇踏影
* I:尾白猿夫・葉隠透
* J:切島鋭児郎・瀬呂範太
* K:中原中也
最後の一文字だけ。
一人きり。
だが中也は気にした様子もなく壁にもたれた。
むしろ――
ほんの少しだけ。
口元が上がる。
「さて。」
退屈しねぇといいんだがな。
そう呟いた彼女の眼には、戦いを前にした獣のような光が宿っていた。
ーーーーー
「続いて最初の対戦相手は、こいつらだ!!」
オールマイトによって、対戦するコンビのくじが引かれた。
ヒーロー組:Aコンビ 敵ヴィラン組:Dコンビ
(AとD…緑谷と爆豪か…。初ッ端から激しい闘いになりそうだな…。)
掲げられたくじに書かれた文字を見て、中也は眉間に皺を寄せた。
「敵チームは先に入ってセッティングを!5分後にヒーローチームが潜入でスタートする。他の皆はモニターで観察するぞ!」
オールマイトが説明を追加し、一回戦に出る四人に移動を促した。他の生徒もオールマイトに従って、同ビルのモニタールームに移動する。
ーーーーー
訓練に参加する四人が移動してから、きっかり5分が経った。 屋内対人戦闘訓練、開始スタートだ。
「さあ君たちも考えて見るんだぞ!」
モニタールームでは、成績表を手にしたオールマイトと他の生徒達が、緊張と期待を胸にモニターの向こうの四人に注目していた。 モニターの一つに、緑谷と麗日が建物に潜入した映像が映った。出だしは順調のようだ。 複雑な間取りを、二人は慎重に進んで行く。と、突然死角から爆豪が現れた。
「いきなり奇襲!!!」
峰田が驚きの声を上げる。 爆豪は緑谷達の死角から攻撃を繰り出し、派手な爆発を起こした。モニターは爆炎と煙で包まれた。煙が晴れると、マスクの左半分が焼けた緑谷と麗日が映った。無傷とはいかなかったが、避け切れたようだ。
「奇襲か。良い手だな。」
「爆豪ズッケぇ!!奇襲なんて漢らしくねえ!!」 「奇襲も戦略!彼らは今、実戦の最中なんだぜ!」 「緑くん、よく避けれたな!」
モニタールームがどよめいている間にも爆豪と緑谷達の戦いは続く。 爆豪の動きを読んだ緑谷が腕を掴み爆豪を床に叩きつけた。直ぐに起き上がった爆豪に、緑谷が涙眼で何事が叫ぶと、爆豪の表情は苛立ちに塗れたものになり、呼応するように爆豪も絶叫した。 一人最上階で核を守る飯田が爆豪に小型無線機で話しかけるも、大した話もせず切られてしまったようだ。
「アイツ何話してんだ?定点カメラで音声ないとわかんねえな。」
「小型無線でコンビと話してるのさ!持ち物は+プラス建物の見取り図、そしてこの捕獲テープ!コレを相手に巻き付けた時点で『捕えた』証明となる!!」
切島の問いに、オールマイトがテープを掲げ乍ら答えた。 制限時間は15分。 「核」の場所は敵ヴィラン組が決め、ヒーロー組には知らされない。
「ヒーロー側が圧倒的不利ですね、コレ。」
「相澤くんにも言われただろ?アレだよ。せーの!」
「「「「「「「「「「Puls Ult…」」」」」」」」」」 「あ、ムッシュ爆豪が!」
校訓を叫んだオールマイトや他生徒達を遮って、青山がモニターを指差した。皆の注目がモニターに戻る。 見ると、緑谷が爆豪を引き付け、麗日を先に行かせたところだった。 爆豪によって繰り出された攻撃を、緑谷は捕獲テープを使って防ぐ。
(あの使い方は、イレイザーヘッドの真似か。器用な奴だ。)
その後素早くテープを仕舞い、爆豪の大振りを躱わす。
「すげえなあいつ!!”個性”使わずに渡り合ってるぞ、入試二位と!」
爆豪の表情が焦りと悔しさに変わる。 避け切った緑谷は角を曲がって、爆豪の視線から抜けた。爆豪がまた何か叫んでいるのが映る。
「なんか、すっげーイラついてる。」
誰かがポツリと呟いた通り、モニターに映る爆豪は、苛立ちを全面に出していた。 麗日を一切無視して、緑谷を狙い撃ちする戦法。尖兵を出すならば機動力の高い飯田を使うべきだが、実際は爆豪が仕掛けて来ている。
(飯田はそれ分かってるだろうからな…Dコンビは連携が取れてねえってことか。)
爆豪、飯田の攻撃力、機動力共に長けている二人との正面戦闘は、緑谷、麗日には部が悪い。 今緑谷が麗日と共に核探しに向かえばその展開になるが、このまま麗日と二人で爆豪と戦い続けても制限時間に達してしまうだろう。
(緑谷が爆豪抑えてる間に、麗日が飯田と核の補足、その後合流が最適解だな。緑谷が爆轟に勝てればの話だが…。)
緑谷と爆豪の戦いが膠着状態の一方、麗日は最上階の飯田と核の元へ辿り着いた。如何やら未だ飯田には見つかっていないようだ。 モニターには、柱の影から様子を伺う麗日と、何事かブツブツと呟いている飯田が映っている。 別のカメラに、何処か気味の悪い飯田(顔はマスクで全く見えない)が映ったと同時に、麗日が吹き出した。そのせいで、麗日は飯田に見つかってしまった。 何処か雰囲気のある飯田に気圧されたのか、麗日が半歩後退る。 互いに核と相手が気掛かりなのだろう、飯田はジリジリと距離を詰め、麗日はジリジリと後退して行く。 麗日と緑谷が通信したようで、不意に緑谷が天井を見上げた。 そして、緑谷が爆豪に見つかった。 爆豪が右腕の大きな手榴弾を模したサポートアイテムを構える。
「爆豪少年、ストップだ。殺す気か。」
ビル内の声が聞こえているオールマイトが焦った様子で、ビル内のスピーカーと繋がっているマイクに向かったが、爆豪は忠告を聞き入れずサポートアイテムの栓を引いた。 途端に大爆発が起こり、カメラの映像が乱れる。ビルも大きく揺れ、上の階の飯田や麗日が慌てた様子を見せた。
「授業だぞ、コレ!」 「緑谷少年!!」
オールマイトや生徒達が息を呑み、声を荒げる。戻った画面の中には、怯える緑谷と顔を歪めた爆豪がいた。
爆豪勝己、個性”爆破” 掌の汗腺からニトロのような汗を出し、爆発させる。汗を溜めれば溜める程、その威力は増していく。 体の発汗機能も生きている為、夏場等の暑い時期は特に強く、冬場は力を出すのに時間がかかる。 然し大きなデメリットが無く、派手で強い。
(あのサポートアイテムは、汗を溜めとくモンって訳だ。)
ビルの揺れに乗じて、麗日が仕掛けた。自身を無重力化して跳躍し、核に迫る。然し飯田が脚のエンジンで速度を上げ、核を抱えて移動した。着地に失敗した麗日が地面に転がる。 緑谷と爆豪の方は、爆豪が動き出したところだった。
「先生、止めた方が良いって!」
切島が必死に訴えるも、オールマイトは頑として首を縦に振らなかった。
(如何言う意図があるってんだ…?緑谷が死んじまうぞ…?)
中也の額にも冷や汗が浮かぶ。チラリとオールマイトを見遣ると、オールマイトも同じ様に冷や汗を流していた。 爆豪と緑谷は、幼馴染や好敵手、ライバルだけでは片付けられない、何か特殊な関係にあることは側はたから見ても一目瞭然。とは言え、命を危険に晒す程感情が溢れている今、如何しようと言うのか。
「爆豪少年、次それ撃ったら…強制終了で君らの負けとする。屋内戦において、大規模な攻撃は守るべき牙城の損壊を招く!ヒーローとしてはもちろん、敵ヴィランとしても愚策だ、それは!大幅減点だからな!」
オールマイトの言葉を受け、爆豪はバッと頭を抱えると、緑谷に突進して行った。 爆発を利用して跳躍し、緑谷の目前に迫る。反応が遅れ、避け切れない緑谷の反撃カウンターを爆発で軌道を変える事で避け緑谷の背中に爆撃を叩き込んだ。緑谷の顔が苦痛に歪む。
「目眩しを兼ねた爆破で起動変更、直ぐに攻撃……見た目によらず爆豪も器用だなァ。」
「考えるタイプには見えねえが意外と繊細だな。」 「慣性を殺しつつ有効打を加えるには、左右の爆発力を微調整しなきゃなりませんしね。」 「才能マンだ、才能マン。ヤダヤダ……。」
爆豪の戦闘センスに、皆が感嘆の声を漏らした。 その後、爆豪は煽る様に右の大振りを打ぶつけ、そのまま緑谷の右腕を掴むと爆破を利用して回転し、緑谷を地面に叩き付けた。
「リンチだよコレ!テープを巻きつければ捕らえたことになるのに!」 「ヒーローの所業に非ず…。」 「緑谷と中原もすげえって思ったけどよ…、戦闘能力に於いて爆豪は間違いなく…」
“センスの塊”
中也は、何時かの自分を見ている様だと思った。只闘う事のみを教えられ、それしか知らず、只目の前の敵を薙ぎ倒すだけだった中也は、正に”化け物”だった。けれどそれを止め、正してくれた少年がいた。 爆豪にとって、屹度緑谷はそう云う存在なのだと気付いた。
「逃げてる!」
誰かがモニターを見て声を上げた。中也が顔を上げてモニターを見ると、そこには逃げる緑谷の焦った顔が映し出されていた。
緑谷は、遂に壁に追い詰められてしまった。爆豪がジリジリ寄って行き、二人の距離が縮まる…。 爆豪が叫び乍ら緑谷に向かって駆けた。緑谷は涙の滲む瞳で、けれど強い意志の宿った瞳で言葉を紡いだ。
『”君が凄い人だから、勝ちたいんじゃかいか!!”』
画面にでかでかと接写された緑谷の口の動きが、確かにそう言った。 そして二人とも激昂し拳を握る。
「爆豪の方が、余裕なくね?」
モニタールームの生徒達は、二人の激闘に生唾を飲んだ。
「先生!やばそうだってコレ!」
切島がオールマイトに叫んでいる。 中也は、止めないでやってほしいと思った。例え命に手がかかっているとしても、あの二人には必要な事なのだ。今まで真っ向から打ぶつかって来なかった分が。
「双方中止……」
オールマイトが中止を宣言しかけたその時、麗日が動いた。それと同時に、爆豪が繰り出した攻撃が爆発を伴って緑谷に直撃する。 直後、轟音と共に最上階、麗日、飯田の居る階の床が抜けた。麗日が引っ付いて居た柱が分離され、麗日の個性で無重力化されたそれを、麗日が勢い良く振り回した。床が抜けた事で飛び散った破片を、柱で飯田に打つ。飯田が動揺している隙に跳躍し、麗日は飯田を飛び越え、核にしがみ付いた。
「緑谷と爆豪は……!?」
画面の向こうの煙が晴れると、満身創痍の緑谷と、無傷の爆豪が映った。 緑谷は右手拳を掲げ、左手は爆発と打拳の衝撃でボロボロだ。その緑谷の目の前で、爆豪は瞠目して居た。
「ヒーロー…、ヒーローチーム…WIIIIINウィーーーン!!」
オールマイトが訓練の終了を叫んだ。 画面の向こうでは、緑谷が地面に伏し、爆豪が立ち尽くし、嘔吐している麗日を飯田が介抱している。
「負けた方がほぼ無傷で、勝った方が倒れてら…。」 「勝負に負けて試合に勝った、というところか。」 「訓練だけど。」
圧巻の激闘を見た生徒達は、ポツリポツリと感想を述べる。 オールマイトが、訓練を終えた生徒を連れ戻す為、静かにモニタールームを後にした。
ーーーーー
「今戦のベストは飯田少年だけどな!!!」
「なな!!?」
モニタールームに、激戦を終え、保健室に運ばれた緑谷以外の三人が戻って来た。 所謂反省会と言うものが行われている。
「勝ったお茶子ちゃんか、緑谷ちゃんじゃないの?」
蛙吹が疑問を呈した。 確かに、戦いに勝利したのは緑谷、麗日のヒーローチームである。
「何故だろうなあ〜〜〜?わかる人!!?」
オールマイトが、ボッと音を立てて挙手した。すると、八百万が優雅な所作で手を高く上げた。
「それは、飯田さんが一番状況設定に順応していたからですわ。」
爆豪の行動は私怨丸出しの独断、加えて屋内戦での大規模爆撃という愚策。 緑谷も同様に、屋内での大規模な攻撃と、私情を挟んだこと。 麗日は、中盤の気の緩みと最後の攻撃の乱雑さ。 相手への対策を熟こなし、且つ核の争奪を想定して居たからこそ、飯田は最後対応に遅れ、麗日の核への接触を許してしまった。
「ヒーローチームの勝ちは、『訓練』だという甘えから生じた反則のようなものですわ。」
八百万の言葉に、モニタールームはシーンと静まり返ってしまった。全て正論だったからだ。
「ま…まあ、飯田少年もまだ固すぎる節はあったりするわけだが…。まあ…正解だよ。」
オールマイトは、くう…!と唸りながら親指を立てて見せた。
「常に下学上達!一意専心に励まねば、トップヒーローになどなれませんので!」
八百万は両手を腰に当て、ツンと言い放った。
ーーーーー
ひと騒動あった一回戦の反省会も終わり、続いて第二回戦。
ヒーロー組:Bコンビ(轟、障子) 敵ヴィラン組:Iコンビ(尾白、葉隠)
訓練開始の合図が響いた後、障子からの報告を受けた轟が個性を発動した。ビル全体が氷漬けにされ、敵ヴィラン組の尾白や葉隠は地面に縫い付けられる。
(障子の個性『複製腕』で核と敵の位置を捕捉して轟の氷で拘束…やるな。にしても寒ィ…)
「仲間を巻き込まず、核兵器にもダメージを与えず、尚且つ敵も弱体化!」
「最強じゃねエか!!」
ビル全体が凍った事で、モニタールームも冷気に包まれた。オールマイトや生徒達は自身の体を抱いて寒さに耐える。 全てを凍らせた轟は、障子の報告を元に核の在処迄迷いなく進み、核に触れた。
「ヒーローチームWIN!!」
訓練終了の合図と共に、核に触れたまま轟は氷を溶かした。 モニタールームの温度も元に戻って行く。
(半冷半燃、か…。)
轟焦凍、個性”半冷半燃” 右で凍らせ、左で燃やす。
範囲も温度も未知数。
ーーーーー
三回戦。
四回戦。
訓練は順調に進行していた。
勝者と敗者が生まれ、反省点と課題が見つかり、生徒たちはそれぞれ学びを得ていく。
そんな中――
一人だけ。
まだ戦っていない者がいた。
「中原少女、待たせたな! 出番だぜ!!」
オールマイトが両腕を大きく広げる。
その瞬間、クラス中の視線が一斉に集まった。
中原中也。
特待生。
入試トップ。
そして一人チーム。
誰もが気になっていた。
彼女がどれほど強いのか。
どんな戦い方をするのか。
「いよいよか……」
切島が呟く。
「楽しみだな!」
芦戸も目を輝かせる。
一方で轟は静かに目を細めていた。
爆豪に至っては腕を組みながら舌打ちしている。
「チッ……」
中也はそんな視線を気にも留めない。
両手を衣嚢に突っ込んだまま立ち上がる。
「対戦相手は特別に中原少女自身に引いてもらう!」
オールマイトの説明を聞きながら、中也はくじ箱へ歩み寄った。
緑谷たちAチームは先程の戦闘で保健室送りになっているため除外済み。
残るチームの中から選ばれる。
「どれでも同じだろ。」
そう呟きながら無造作に玉を引く。
そして。
「B、だな。」
掲げられた玉には大きくBの文字。
オールマイトが頷く。
「Bチーム!」
轟焦凍!
障子目蔵!
ざわり、と空気が揺れた。
強い。
間違いなく強い組み合わせだ。
轟は圧倒的火力を持つ。
障子は索敵能力と近接戦能力を兼ね備えている。
バランスも良い。
「おぉ……」
「結構エグい組み合わせじゃね?」
「二対一だぞ……」
生徒たちがざわめく。
だが。
当の中也は平然としていた。
轟も静かに中也を見つめる。
障子は無言のまま頷いた。
やがて二人は敵ヴィラン組としてビルへ向かう。
その背中を見送りながら、中也は首を鳴らした。
コキッ。
軽い音。
準備運動代わりだ。
その時。
「中原さん!」
振り向けば麗日お茶子だった。
少し不安そうな顔をしている。
「中原さん、また氷ブワァってされたら一溜まりも無いんじゃ…」
麗日は両手を握る。
「大丈夫なの?」
先程の戦闘を思い出しているのだろう。
轟の氷は凄まじかった。
建物一帯を飲み込むほどの規模。普通の生徒なら対処不能だ。
しかし、
中也は肩を竦めた。
「心配しなくても怪我なんかしねぇよ。」
言葉は軽い。
だが。
そこには揺るがない確信があった。
中也は麗日の目を真っ直ぐ見る。
「安心しろ。」
その一言で、麗日の肩から力が抜ける。
「あ、うん!」
そして笑った。
「頑張ってね!!」
ぶんぶんと腕を振る。中也は思わず口元を緩めた。
「おう。」
一度だけ振り返っている。
全員が気になっていた、特待生・入試トップ・中原中也…その実力を。
やがて。
敵ヴィラン組が建物へ侵入して五分。
タイマーがゼロになる。
〈それでは――〉
スピーカー越しにオールマイトの声が響く。
〈スタート!!〉
ブザーが鳴った。
同時に。
中也はニヤリと笑った。
獲物を見つけた獣のように。
ーーーーー
『準備はいいかい? 三人とも!』
通信機越しに響くオールマイトの声。
「はい」
轟焦凍は短く答えた。
『おお』
障子の低い声も続く。
そして。
『問題ねぇ』
中原中也の声が聞こえた。
その瞬間、轟は無意識に奥歯を噛み締める。
中原中也。
雄英高校特別入学者。
入試では百五十ポイントを超える記録を叩き出し、個性把握テストでも首位。
教師たちの評価も高い。
クラスメイトの間でも別格扱いされている存在。
だが、だからこそ。
(倒す)
轟の瞳に静かな闘志が宿る。
(左を使わずに)
それが彼の意地だった。
父の力に頼らず。
父の望む存在にはならず。
自分自身の力だけで、目の前の強敵を超える。
『それでは――』
オールマイトの声が響く。
『中原少女対Bチーム!!』
一拍。
『試合スタート!!』
瞬間。
轟は右手を床へ叩きつけた。
ゴゴゴゴゴゴッ!!
凄まじい勢いで氷が広がる。
廊下を。
壁を。
階段を。
三階フロア全体を飲み込みながら巨大な氷河へと変えていく。
今回も先手必勝。まずは機動力を奪う。それが轟の判断だった。
現在位置は三階。核兵器の置かれた部屋の前。障子は二階に配置している。索敵役だ。
『轟』
障子の声が聞こえる。
『中原が動いたらすぐ伝える』
「頼む」
轟は短く返した。
さらに、核のある部屋の前へ巨大な氷壁を生成する。即席のバリケード。
だが、
(意味は薄いか)
轟は冷静だった。
相手は重力操作。
壁も床も天井も関係ない。
ドアから来る保証などどこにもない。
横から。
下から。
あるいは外壁から。
どこから現れても不思議ではない。
だからこそ。
警戒する。
集中する。
そして――
『轟!!』
障子の声。
異常なほど焦っていた。
轟の眉が動く。
「どうした」
『最初は感じた』
障子が言う。
『だが今は気配がない』
「何?」
『何も感知できない』
轟の目が細まった。
あり得ない。
障子の索敵能力は優秀だ。
足音。
呼吸。
衣擦れ。
わずかな振動。
それらを捉える。
たとえ宙に浮いていたとしても――
「よお」
声。
すぐ後ろ。
「背中がガラ空きだぜ」
轟の思考が一瞬停止した。
反射的に振り返る。
だが。
誰もいない。
「おせーよ」
真横。
「!!」
気付いた時には遅かった。
視界いっぱいに迫る拳。
中原中也。
轟の反応より速く。
その拳は寸止めで止まり。
代わりに体勢を崩された。
ドンッ!!
背中が床へ叩きつけられる。
息が詰まる。
視界が揺れる。
そして。
パシッ。
手首に何かが巻き付いた。
確保テープ。
「――っ!」
轟が起き上がる頃には全て終わっていた。
中原は既に立ち上がっている。
何事もなかったかのように。
「くそっ……」
悔しさが漏れる。
中原は振り返りもしない。
ただ。
スタスタと核兵器へ向かって歩く。
悠然と。
余裕たっぷりに。
そして。
核へ手を置いた。
『中原少女ォォォ!!』
オールマイトの絶叫が響く。
『WEEEEEEEN!!!』
ーーーーー
「見事だった、中原少女!」
オールマイトの豪快な声がモニタールームに響いた。
「めっちゃ速かったな!」
「何が起きたのか分からなかった……」
「轟くん瞬殺だったじゃん……」
次々に飛んでくる称賛の声。
中也は軽く肩を竦めた。
「別に大したことじゃねぇよ。」
そう言いながらも、周囲の反応を見る限りそうは思われていないらしい。
特に轟と障子。
二人とも既に戻ってきていたが、轟は腕を組んだまま黙り込み、障子も静かに考え込んでいる。
オールマイトは満足そうに頷いた。
「それじゃあ!」
ばしっと中也を指差す。
「今の戦闘の作戦を解説してもらえるだろうか!」
「はいはい。」
面倒そうに返事をしながら前へ出る。
そして全員を見渡した。
「まずスタート後、普通に正面玄関から入った。」
生徒たちが耳を傾ける。
「これは障子対策だ。」
障子が顔を上げた。
「どっかで俺の気配を探ってるだろうなと思ったからな。まず存在を認識させる必要があった。」
「……なるほど。」
障子が小さく頷く。
「で、案の定轟が氷をぶっ放してきた。」
「ああ。」
轟も認める。
「だからその瞬間、個性で浮いた。」
中也は当然のように言った。
「ビルの外へ出て、そのまま三階まで上昇。」
クラス中が静まり返る。
「外壁沿いに移動して、核のある部屋の窓の外まで飛んだ。」
「えっ」
麗日が目を丸くした。
「外から行ったの!?」
「そりゃ行くだろ。」
中也は首を傾げる。
「中入る意味ねぇし。」
あまりにも自然な発言だった。
だが聞いている側からすれば衝撃だった。
誰も建物の外を移動するという発想をしていなかったのだ。
「で、俺の気配が消えたことで障子と轟が混乱する。」
轟が眉をひそめる。
確かにその通りだった。
「その隙に窓から侵入。」
中也は肩を回した。
「後は短期決戦だ。」
さらりと言う。
「轟を無力化して核に触った。」
そこで話を終える。
だが。
八百万百が手を挙げた。
「質問よろしいでしょうか?」
「あ?」
「なぜ核が三階にあるとお分かりになったのですか?」
その問いに中也は少し感心したように頷いた。
「いい質問だ。」
そしてオールマイトへ視線を向ける。
「平面図出せるか?」
「もちろんだ!」
モニターにビルの見取り図が表示された。
中也はそれを指差す。
「まず階段はどこだ?」
「建物の奥ですわ。」
八百万が答える。
「そう。」
中也は頷いた。
「普通に上階へ行こうと思ったら一番奥まで進んで階段を上る必要がある。」
そして三階部分を指差した。
「三階建てで一番到達に時間がかかる場所はどこだ?」
一瞬の沈黙。
その後。
八百万がハッとした顔をした。
「三階フロアの……入口真上の部屋!」
「正解。」
中也が指を鳴らす。
「取られたくない物は遠くに置く。」
それだけだった。
「敵側が勝つ条件は核を守ること。」
中也は続ける。
「なら一番守りやすい場所に置く。」
「なるほど……!」
「そういうことか!」
「すげぇ!」
感嘆の声が上がる。
轟も静かに平面図を見ていた。
確かに。
理屈としては単純だ。
だが実戦の中でそこまで瞬時に判断できる者は少ない。
オールマイトが満足そうに頷く。
「さすがだ、中原少女!」
大きな拳を握り締める。
「今日の戦闘訓練で!」
教室中を見渡す。
「対人戦闘の難しさ!」
「屋内戦闘の考え方!」
「そして相手の思考を読む大切さ!」
「多くのことを学べたはずだ!」
オールマイトの笑顔が輝く。
「それを今後に活かしてくれ!」
そして拳を天へ突き上げた。
「Plus Ultra!!」
「「「「はい!!!」」」」
教室中に声が響く。
中也も一応返事はした。
しかし。
その時だった。
ふと。
背筋に何かが刺さるような感覚。
歓声の中。
拍手の中。
誰かがこちらを見ている。
昏い。
熱を帯びた。
鋭い視線。
(……あ?)
中也は何気なく振り返る。
そして見つけた。
人混みの向こう。
赤い瞳。
まるで獲物を睨む猛獣のような目。
爆豪勝己。
彼は腕を組みながら、中也だけを見ていた。
その表情に怒りはない。
悔しさもある。
だがそれ以上に。
強者を見た者だけが抱く感情。
――追い越したい。
――叩き潰したい。
――勝ちたい。
そんな剥き出しの闘争心が燃えていた。
(あー……)
中也は内心で納得する。
(そういうタイプか。)
そして。
ほんの少しだけ。
口元が上がった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
薄暗い灯りの下にバサリと新聞が投げられた。紙面には、オールマイトが雄英高校の教師に就任した事がでかでかと書かれている。
「見たかコレ?教師だってさ…。」
新聞に、乾燥した男の手が触れた。
「なァ、如何なると思う?平和の象徴が………」
新聞に触れたのは、身体中に”手”を付けた銀髪の男。男は、隣の席に座る蓬髪の男と、バーの向こうで揺らめく黒い靄に問い掛けた。
「敵ヴィランに殺されたら」
蓬髪の男は、包帯に隠れた右目を三日月形にして不敵に微笑んで見せた。
ーーーーー
登校途中。
校門前は朝から妙な騒がしさに包まれていた。
「オールマイトの授業はどんな感じです?」
突然目の前に差し出されたマイク。
中也は思わず眉を顰めた。見れば、テレビ局らしき腕章を付けた人間が何人も集まっている。カメラを抱えた者、メモを取る者、マイクを向ける者。
周囲ではクラスメイト達も同じように取材を受けていた。
(朝から元気なこった)
内心で呟きながら肩を竦める。
「スンマセン、急いでるんで。」
軽く会釈して通り過ぎようとした。
しかし、
「少しだけで結構です!オールマイト先生の授業内容について――」
女性記者はなおも食い下がる。
カメラまでぐいっと近付いてきた。
中也は小さく溜息を吐き、手にしていた詩集を鞄へ仕舞う。
「はぁ……」
そして。
個性を発動。ふわり、と身体が浮き上がる。
次の瞬間、
横方向へ重力を掛けた。
ドンッ!
弾丸のような速度で校門へ向かう。
「うわっ!?」
「速っ!?」
記者達の驚く声を置き去りにしながら、中也は一気に敷地内へ飛び込んだ。
「授業の妨げになるんで、お引き取りください。」
校門付近に現れたのは相澤消太。
いつものように眠そうな顔だが、流石は雄英高校教師。記者達は一歩たじろいだ。
「少しだけでも!」
一人の女性記者が校門へ足を踏み出す。
その瞬間。
ピ――――ッ!!
甲高い警報音。
ガシャン!!
鋼鉄製の隔壁が一瞬で降りた。
「きゃっ!?」
記者が飛び退く。
巨大な門は完全に閉鎖されていた。侵入経路は存在しない。
「アレが雄英バリアーか。」
中也は興味深そうに眺めた。
雄英バリアー。
報道関係者が勝手に付けた通称だ。学生証や許可証を持たない者が侵入しようとすると、校内各所に設置されたセンサーが反応し、即座に封鎖システムが起動する。
校門だけではない。
校舎。
演習場。
寮区画。
雄英全体が巨大な要塞として設計されている。
(流石はヒーロー育成校だな)
ポートマフィア本部並み、否それ以上とも言える、かなりの警備体制だ。
そんなことを考えていると。
「中原さん、おはよう!」
聞き慣れた声。
振り向けば麗日お茶子が手を振っていた。その隣には緑谷出久。さらに飯田天哉。
「おはようございます!」
「お、おはよう中原さん!」
「おはよう。」
中也も軽く手を上げる。
すると飯田が真面目な顔で言った。
「しかし朝から大変だったな!」
「別に。」
「いやいや!あの速度は凄かったぞ!」
「飯田、お前も結構速ぇだろ。」
「そういう問題ではない!」
真面目に返される。麗日がくすりと笑った。
緑谷も少し緊張したように笑う。
そんな何気ない会話をしながら。
四人は並んで校舎へ向かった。
ーーーーー
「昨日の戦闘訓練、お疲れ。VTRと成績見させてもらった。」
朝礼。
担任の相澤消太は開口一番そう告げた。
「「「「「!!」」」」」
クラス中の空気が一瞬で引き締まる。
昨日の戦闘訓練。
各々反省点もあれば自信のある部分もある。
そんな中、相澤はまず目立っていた二人について言及した。
「緑谷。」
「は、はい!」
突然名を呼ばれ、緑谷が背筋を伸ばす。
「考えるのはいい。だが考え過ぎだ。」
「うっ……」
「爆豪。」
「チッ。」
「勝つことしか見えてない。」
「勝ちゃいいだろ。」
「よくない。」
即答だった。
爆豪の額に青筋が浮かぶ。
だが相澤は気にした様子もない。
眠そうな目のまま話を続けた。
「急で悪いが今日は君らに――」
そこで言葉を切る。
教室の空気が変わった。
誰かがごくりと唾を飲む。
昨日の個性把握テスト。
その前の入学試験。
雄英教師陣は容赦がない。
また何かやらされる。
そんな予感が全員の脳裏を過った。
そして。
「学級委員長を決めてもらう。」
一拍。
沈黙。
次の瞬間。
「「「「「学校っぽいの来たーーー!!!」」」」」
教室が爆発した。
「委員長やりたいです!」
「ウチもやりたいッス!」
「オイラのマニフェストは女子全員膝上三十センチ!!」
「ボクの為にある役職だね☆」
「リーダー!!やるやるー!!」
一斉に手が挙がる。
まるで競売会場だった。
中也は頬杖をついた。
(元気だな……)
特に興味はない。
ポートマフィア時代も幹部として部下を率いていた。
今更クラス委員に魅力は感じない。
だから手は挙げない。
ふと周囲を見る。
緑谷が手を挙げていた。
(お前も挙げるんかい。)
意外だった。
もっと後ろで縮こまるタイプかと思っていた。
「静粛にしたまえ!!」
突然。
教室に大声が響いた。
全員の視線が一点に集まる。
飯田天哉だった。
「”多”を牽引する重大な仕事だぞ!!」
ビシッと腕を振る。
「『やりたい者』がやれるものではないだろう!!」
熱弁だった。
立派だった。
実に立派だった。
ただし。
腕は真っ直ぐ天井へ向かって挙がっていた。
誰よりも高く。
誰よりも堂々と。
完全に立候補していた。
沈黙。
「そびえ立ってんじゃねーか!!何故発案した!!!」
誰かのツッコミが飛ぶ。
中也も思わず吹き出しそうになった。
「日も浅いのに信頼もクソもないわ、飯田ちゃん。」
蛙吹が呆れたように言う。
「そんなん皆、自分に入れらぁ!」
切島も同意した。
だが飯田は一歩も引かない。
「だからこそ!」
立ち上がった。
「ここで複数票を獲得した者こそ真に相応しい人物ではないか!?」
身振り手振りを交えて力説する。
その姿はどこか演説家めいていた。
そして最後に相澤を見る。
「どうでしょうか!」
意見を求められた相澤は――
寝袋に入った。
「時間内に決めろ。」
終わりだった。
(自由が売りとは聞いてたが……)
中也は内心で苦笑する。
(相澤先生は自由過ぎねぇか?)
そんなこんなで投票開始。
中也も適当に一票を投じた。
集計。
黒板へ結果が書き出される。
そして。
「僕三票ーーー!!?」
後方から裏返った声が響いた。
緑谷出久。
得票数三。
第一位。
「おめでとう。」
「いや何で!?」
本人が一番驚いていた。
二位は二票獲得の八百万百。
「では。」
八百万が優雅に一礼する。
対照的に緑谷は今にも倒れそうだった。
「じゃあ委員長緑谷、副委員長八百万。」
相澤が淡々と告げる。
それで決定だった。
「よ、よろしくお願いします!」
「よろしくお願いいたします。」
二人が頭を下げる。
拍手が起こる。
その横で。
中也は椅子から立ち上がった。
(委員長なんて大変だな。)
少しだけ同情した。
ーーーーー
午前の授業が終わると同時に、校舎中から椅子を引く音や生徒たちの話し声が溢れ出した。
昼休み。
中也は飯田、麗日、緑谷の三人と連れ立って食堂へ向かっていた。
雄英高校の食堂は広い。
だが、それ以上に生徒の数が多かった。
ヒーロー科、普通科、サポート科、経営科。
あらゆる学科の生徒が一斉に集まるため、昼時ともなれば戦場同然である。
「人多すぎない……?」
緑谷が呆然と呟く。
「人気店の昼時みたいだねぇ。」
麗日もきょろきょろと周囲を見回していた。
「これは確保戦だな。」
中也は小さく溜息を吐く。
前世でもマフィアの会合だの何だので人混みには慣れていたが、それでもこの密度はなかなかだ。
幸いにも、長机が並ぶ一角に四人分だけ空席を見つけることができた。
「空いてる!」
「急ごう!」
四人はすかさず席を確保した。
それぞれ食券を使い、好きな昼食を注文する。
飯田はカレーライス。
麗日は焼き魚定食。
緑谷は唐揚げ定食。
中也は生姜焼き定食を選んだ。
全員が席に揃ったところで手を合わせる。
「いただきます。」
「いただきます!」
昼食を食べ始めて間もなく。
話題は自然と今朝の朝礼へ移っていた。
「いざ委員長やるとなると務まるか不安だよ……。」
緑谷が箸を止め、眉を下げる。
本気で悩んでいるらしい。
そんな彼とは対照的に、麗日は焼き魚を頬張りながら元気よく答えた。
「ツトマル!」
「大丈夫さ。」
中也も味噌汁を飲みながら頷く。
「問題ねえだろ。」
三方向から肯定されても、緑谷の表情は晴れない。
すると飯田がスプーンでカレーを一口掬いながら口を開いた。
「緑谷くん。」
「え?」
「君のここぞという時の胆力や判断力は、“多”をけん引するに値する。」
真面目な声音だった。
「だから私は君に投票した。」
「飯田くん……。」
緑谷が目を丸くする。
そう。
三票入った緑谷の票の内訳は既に判明していた。
一票は麗日。
一票は本人。
そして残る一票が飯田だった。
「そういや、中原さんは誰に入れたの?」
少し照れ臭くなったのか、緑谷が話題を変えるように尋ねてくる。
中也は箸を止めた。
「俺か?」
「うん。」
「俺は飯田だよ。」
「おっ、俺か?」
飯田が驚いて眼鏡を押し上げる。
中也は肩を竦めた。
「まあな。」
「理由を聞いても?」
「簡単だ。」
そう言って飯田を指差す。
「お前、“委員長”ってネームプレートが貼ってあるような奴じゃねえか。」
一瞬。
沈黙。
そして――
「ぶっ!」
麗日が吹き出した。
慌てて口元を押さえる。
「ご、ごめん……!」
肩を震わせながら必死に笑いを堪えている。
「ネームプレート……!」
「ははっ……!」
緑谷まで笑い始めた。
飯田だけが取り残されている。
「どういう意味だ!?」
「いや、そのまんま。」
中也は真顔だった。
「生まれた時から『学級委員長』って札が首から下がってそう。」
「なっ――!」
飯田の眼鏡がずり落ちた。
「そんな訳があるか!!」
「でも分かるかも。」
麗日が涙目になりながら頷く。
「分かる。」
緑谷も頷いた。
「分かるな。」
中也も頷いた。
「何故だ!?」
飯田だけが納得できていない。
カチャリ、とスプーンを置いた飯田が、どこか居心地悪そうに視線を逸らした。
「でも、飯田くんも委員長やりたかったんじゃないの?」
緑谷が首を傾げる。
「メガネだし!」
「何だその理由は。」
中也が即座に突っ込む。
だが緑谷は真面目な顔だった。
「いや、なんか委員長っぽいじゃない?」
「確かに。」
「確かにやな。」
中也と麗日が揃って頷いた。
飯田は額を押さえた。
「眼鏡にどのような偏見を抱いているんだ君たちは……」
小さくため息を吐くと、飯田は真面目な表情に戻った。
「“やりたい”と相応しいか否かは別の話だ。」
そう言って背筋を伸ばす。
「僕は僕の正しいと思う判断をしたまでだ。」
――僕。
その一人称が耳に入った瞬間。
「「「僕……!」」」
三人の声が綺麗に重なった。
飯田がぎくりと固まる。
「……む?」
緑谷は目を丸くし、
麗日は箸を止め、
中也は思わず飯田を凝視した。
「今、『僕』って言ったよな?」
「言ったね。」
「言ったな。」
三方向から追及される。
飯田の額にうっすら汗が浮かんだ。
「そ、それがどうしたというのだ。」
「いや。」
緑谷が指を差す。
「普段『俺』じゃん。」
「そうだね。」
「確かに。」
三方向から再び追撃。
飯田は完全に視線を泳がせた。
中也は内心で納得していた。
(やっぱ無理してたんだな。)
前々から何となく違和感はあった。
真面目で礼儀正しくて、妙に育ちが良さそうで。
なのに一人称だけが妙に浮いていたのだ。
まるで頑張って周囲に合わせているような。
その予想は当たっていたらしい。
そして。
黙り込んだ飯田を見ながら、麗日の瞳がきらりと光った。
両拳を握る。
「ちょっと思ってたんやけど!」
嫌な予感がした。
中也は反射的に箸を止める。
「飯田くんて坊ちゃん!?」
「坊(ぼっ)!!!」
飯田の声が盛大に裏返った。
食堂の一角が静まり返る。
数人の生徒がこちらを振り向いた。
「うわ、図星だ。」
「図星だね。」
「図星だな。」
三人の感想が一致する。
飯田は顔を真っ赤にしていた。
「ち、違う!違わないが違う!」
「どっちなんだよ。」
飯田は観念したように肩を落とした。
そしてスプーンでカレーを一口掬い、勢いよく口へ運ぶ。
そして、
「ああ、俺の家は代々ヒーロー一家なんだ。」
飯田は少し照れくさそうにそう言った。
「俺はその次男だ。」
その言葉に、
「「ええーーーっ!?」」」
麗日と緑谷が揃って大きな声を上げた。
周囲の生徒が何事かと振り向くほどの勢いだった。
飯田は少しだけ胸を張る。
だが中也は驚くより先に、聞き覚えのある単語を思い出していた。
「ヒーロー一家……」
顎に手を当てる。
そして数秒考えた後、
「エンジン……ターボヒーロー、インゲニウムか?」
そう口にした。
飯田の目が見開かれる。
「知っているのか!?」
「まあな。」
中也は肩を竦めた。
ポートマフィアにいた頃も、表社会の有名人くらいは頭に入っている。
まして日本屈指の人気ヒーローだ。
知らない方がおかしい。
すると今度は緑谷が勢いよく身を乗り出した。
「東京の事務所に六十五人ものサイドキックを抱えてるあのインゲニウム!?」
止まらない。
「高速機動と救助活動のスペシャリストで、市民満足度も高くて、交通事故防止キャンペーンにも参加してて、それで――」
ペラペラペラペラ。
まるで辞書を読み上げるような速度だった。
飯田は呆気に取られる。
麗日はぽかんとしている。
中也は、
(始まったな。)
と静かに味噌汁を飲んだ。
緑谷出久。
ヒーローの話になると止まらない男である。
ようやく説明が終わると、飯田は感心したように頷いた。
「その詳しさには驚いたよ。」
そして。
眼鏡をクイッと上げる。
「それが俺の兄さ。」
誇らしげだった。
それはもう分かりやすく。
背筋は伸び。
胸は張られ。
口元には抑えきれない笑み。
中也は思わず吹き出しそうになる。
(分かりやす過ぎんだろ。)
だが否定はできない。
確かに凄い。
トップヒーローの弟。
それだけでも十分すぎるほど凄いのだ。
飯田は少し遠くを見るような目になった。
「俺はそんな兄に憧れてヒーローを志した。」
その声音は真っ直ぐだった。
「規律を守り、人々を導き、助ける。」
一度言葉を切る。
「だからこそ、人を導く立場に就くにはまだ早いと思うんだ。」
視線を緑谷へ向ける。
「今回は緑谷くんが就任するのが正しい。」
その表情に悔しさは確かにあった。
だがそれ以上に。
どこか嬉しそうだった。
自分が認めた相手が選ばれた。
そんな顔だった。
緑谷は照れ臭そうに頭を掻く。
「そ、そんな大したことないよ……」
「いや、大したことあると思うで!」
麗日が笑う。
飯田もつられて笑った。
柔らかく。
自然に。
心から。
それを見た麗日が目を丸くした。
「なんか初めて笑ったかもね、飯田くん。」
「え!?」
飯田が固まる。
「そうだったか!?」
「うん。」
「ちょっと怖いくらい真面目だった。」
「そんな馬鹿な!」
慌てて笑顔を作る飯田。
だがどう見てもぎこちない。
「笑うぞ俺は!!」
「いや今のは笑えてへん。」
「全然笑えてねぇな。」
「硬い。」
三人から容赦なく突っ込まれる。
飯田は頭を抱えた。
その光景を見ながら、中也はふと考える。
――憧れの存在。
飯田にとっては兄。
緑谷にとってはオールマイト。
麗日にもきっといるのだろう。
では自分は。
(……首領かな。)
真っ先に浮かんだのは森鴎外だった。
命を預けるに足る人物。
敬愛している。
尊敬している。
だが。
少し違う。
飯田が兄を見る時のような。
「こうなりたい」と思う感情とは違う気がした。
森は森だ。
自分は自分だ。
目指すというより、支えたい存在。
そんな感覚に近い。
だから少しだけ。
ほんの少しだけ。
身近に明確な目標を持つ飯田が羨ましく思えた。
「そう言えば。」
飯田がスプーンを置きながら呟いた。
「皆が何故ヒーローになりたいのか、聞いたことがなかったな。」
その言葉に、食事の手が一瞬止まる。
言われてみればその通りだった。
入学してから様々な出来事があったが、お互いの過去や目標について深く話したことはない。
「言われてみれば……。」
緑谷が頷く。
「確かに。」
麗日も同意した。
中也も味噌汁を啜りながら小さく肩を竦めた。
「そうだな。」
飯田は満足そうに頷く。
「ではまず緑谷くんからどうだろう。」
「え、僕!?」
いきなり指名され、緑谷は慌てた。だが少し考えると、恥ずかしそうに笑う。
「僕は……」
その顔は自然と柔らかくなっていた。
「オールマイトの、どんなに困ってる人でも笑顔で助けるところに憧れたから……かな。」
言い終わった瞬間。
沈黙。
そして、
「何となく分かってたけどね。」
麗日が即答した。
「だな。」
中也も頷く。
「緑谷くんはオールマイトへのリスペクトが隠し切れていないからな。」
飯田まで追撃した。
「ううっ……!」
緑谷が頭を抱える。耳まで真っ赤だ。
「そんなに分かりやすい!?」
「うん。」
「分かりやすい。」
「非常に。」
三方向から肯定された。
緑谷の頭から今にも湯気が出そうだった。
そんな彼を見て三人が笑う。
しばらく笑った後、麗日が手を挙げた。
「じゃあ次、私!」
元気よくそう言うと、少しだけ背筋を伸ばす。
「私は――」
一拍。
「お金が欲しいから。」
「「え?」」
緑谷と飯田の声が重なった。
中也も思わず箸を止める。
あまりにも率直だった。
麗日はそんな反応に苦笑した。
「あー、やっぱそうなるよね。」
頬を掻きながら話し始める。
「うちね、建設会社やっとるんやけど、あんまり景気良くなくて。」
声音は明るい。
だがそこに嘘はなかった。
「だから私がいっぱい稼いで、お父さんとお母さんを楽させてあげたいんよ。」
その言葉に三人とも黙った。
そして、
「何故謝るんだ?」
飯田が真っ先に言った。
「え?」
「生活のために努力することの何が不純なんだ?」
真っ直ぐな言葉だった。麗日が目を瞬かせる。
「むしろ立派だと思う。」
飯田はそう言って頷いた。緑谷も優しく笑う。
「うん。僕もそう思う。」
中也も同意した。
「意外だったけどな。」
「やっぱり!?」
「いや、もっとこう……」
中也は少し考えた。
「ふわっとしてる理由かと思ってた。」
「どういう意味や!」
麗日が抗議する。食堂に笑い声が広がった。
そして、
自然な流れで三人の視線が中也へ向く。
「中原さんは?」
緑谷が尋ねた。
「何でヒーローになりたいの?」
中也は一瞬黙った。
任務・転生者探し・ポートマフィア・政府からの依頼…本当の理由は言えない。言えるはずがない。だから言葉を探す。
嘘ではなく、でも本当の核心でもない答えを。
しばらく考えた後、中也は静かに口を開いた。
「……俺は。」
三人が耳を傾ける。
「人探しだ。」
「人探し?」
緑谷が首を傾げた。
中也は少しだけ笑う。どこか懐かしそうな。少しだけ、寂しそうな笑みだった。
「サボり魔で。」
「うん。」
「ウザくて。」
「うん。」
「うるさくて。」
「うん。」
「大っ嫌いな奴。」
「「え?」」
緑谷と飯田が同時に声を上げた。
嫌いなのか好きなのか全く分からない。
だが、中也は続けた。
「だけど。」
その声は静かだった。
「だけど、大切な奴なんだ。」
一瞬。
食堂の喧騒が遠くなった気がした。
夕焼け色の髪。
真っ直ぐ前を見る青い瞳。
その横顔はどこか儚く。
どこか寂しく。
そして何より。
とても綺麗だった。
麗日は思わず見惚れる。
(あ。)
女の勘が働いた。
びびびっ、と。
頭の中で何かが閃く。
(これ――)
確信。
(好きな子や!!!)
麗日の脳内でファンファーレが鳴った。
「……そっかぁ。」
麗日がニヤニヤとした顔で笑った。
「また会えると良――」
その時だった。
『ウ゛ウーーーーーーーーーーーーーー』
食堂全体を震わせるような警報音が鳴り響いた。
四人とも反射的に顔を上げる。
直後、無機質な機械音声が流れた。
『セキュリティレベル3が突破されました。生徒の皆さんは速やかに屋外へ避難してください。』
一瞬の静寂。
そして――
「え?」
「なに!?」
「セキュリティ3?」
「侵入者だと?」
次の瞬間には食堂中が騒然となった。
椅子が倒れる。
食器が鳴る。
悲鳴が上がる。
何百人もの生徒が一斉に立ち上がったことで、巨大な食堂は瞬く間に混乱の渦へ飲み込まれていった。
「いたっ!?急に何!!?」
「さすが雄英!!危機対応が迅速だ!!」
「迅速すぎてパニックになってるよ!」
「チッ、何が侵入したってんだ。」
爆発寸前の空気。
だが中也だけは冷静だった。
椅子から立ち上がる。
そして。
ふわり。
重力を操り、その身体が宙へ浮いた。
「中原さん!?」
「ちょっと見てくる。」
軽く言い残し、そのまま逆さになって天井に足をついた。
高所から見下ろした食堂はまるで濁流だった。
人、人、人。
出口へ押し寄せる生徒達。
誰かが転べば将棋倒しになりかねない。
(最悪だな。)
中也は眉を顰めた。
そして窓の向こうへ視線を向ける。
外では――
大勢の報道陣が校門に押し寄せていた。
カメラ。
マイク。
取材車。
そしてそれを制止する教師達。
(なるほど。)
原因を理解する。
雄英のセキュリティシステムが報道陣の侵入を感知したのだろう。
大事件ではない。
だが。
生徒達はそんなことを知らない。
その時。
下を見ると。
飯田が窓に張り付いていた。
「……。」
どうやら彼も同じ結論に至ったらしい。
真剣な顔で外を見つめている。
数秒後。
飯田が振り返った。
そして麗日に向かって手を伸ばす。
「麗日くん!」
「えっ!?」
個性発動。
飯田の身体がふわりと浮いた。
その瞬間。
エンジンが唸る。
「失礼する!」
ドバッ!!
空中を猛スピードで駆け抜ける。
――つもりだった。
「うおおおおおおおおっ!?」
ぐるん。
ぐるぐるぐるぐる。
「回ってる!」
「回ってるな。」
「回ってるね。」
三者三様の感想。
飯田は浮遊状態に慣れていなかった。
結果。
高速回転しながら飛翔。
そして。
べちゃ。
食堂入口上部の壁に張り付いた。
静寂。
数百人が見守る中、飯田は何事もなかったように眼鏡を押し上げた。
そして。
大声を張り上げる。
「大丈ーー夫です!!」
食堂中に響き渡る声。
「ただのマスコミです!!」
ざわめきが止まる。
「何もパニックになる必要はありません!!」
生徒達が顔を見合わせる。
「ここは雄英高校!!」
飯田は胸を張った。
「最高峰の人間に相応しい行動を取りましょう!!」
その声はよく通った。
混乱していた空気が少しずつ落ち着いていく。
押し合いも止まる。
悲鳴も消える。
やがて。
食堂全体が冷静さを取り戻していった。
「……。」
天井近くから見ていた中也は、小さく息を吐いた。
そしてその場に胡座をかく。
「なら。」
ぽつり。
「俺の出る幕はねぇな。」
飯田は立派に委員長をやっていた。
誰かを導き。
誰かを落ち着かせ。
誰かを守る。
少なくとも今この瞬間。
彼は確かにヒーローだった。
だから中也は役目を譲る。
――そのはずだった。
だが。
次の瞬間。
ぞわり。
背筋を冷たいものが走った。
中也の表情が変わる。
穏やかだった瞳が鋭く細まる。
(……なんだ。)
気のせいではない。
長年の経験が警鐘を鳴らしている。
これは。
ただの違和感じゃない。
もっと濃い。
もっと嫌な。
(この気配……)
中也はゆっくり顔を上げた。
視線の先、校舎の奥、職員棟の方向…
心臓が一度だけ大きく脈打つ。
(職員室か――!?)
その瞬間、
彼の中で、ただの侵入騒ぎだったはずの事件が、別の意味を持ち始めていた。
ーーーーー
「なっ、中原さん!?」
緑谷の焦った声が背中に飛んでくる。
「危ないから早く避難しないと!」
「わりぃ!」
中也は振り返りもせず手を振った。
「少し見に行ってくる!」
そのまま人混みを掻き分けるように駆け出す。食堂を飛び出し、廊下を疾走する。胸の奥で警鐘が鳴っていた。
(おかしい)
雄英のセキュリティは日本最高峰だ。ただの報道陣程度で突破できるような代物ではない。
ならば――
(本命は別にいる)
教師たちは今、校門へ集まっている。
全員の視線が外へ向いている。もし自分が敵なら、その隙を利用する。
中也は速度を上げた。一直線に職員室へ向かう。
そして、
勢いよく扉を開け放った。
「――っ!」
職員室には二人の男がいた。
一人は白髪の青年。首から下を何度も掻き毟ったような異様な風貌。
そしてもう一人は、人の形をした黒い靄。
「おやおや。」
靄の男が振り向く。
「一人生徒が残っていましたか。」
白髪の男は鬱陶しそうに舌打ちした。
「ただの生徒だろ。」
そう言いながら書類を漁っている。
中也は視線を逸らさないまま、ポケットの中でスマートフォンを操作した。
画面を見る必要はない。指が慣れている。相澤の番号を呼び出し、発信。そのままポケットへ戻す。会話さえ聞かせれば十分だ。
「手前ら。」
中也は静かに言った。
「何者だ?」
二人の視線が向く。
「ここの関係者ってわけじゃねぇよな。」
白髪の男が立ち上がった。
赤く充血した目。
不快そうな笑み。
「へぇ。」
ぞくりとするような声だった。
「雄英生徒って皆そんなに落ち着いてんの?」
そして隣の靄へ顔を向ける。
「なぁ黒霧。」
「はい。」
「今ここで生徒一人消してもいい?」
黒霧と呼ばれた男は静かに首を振った。
「死柄木弔。」
「そんな事をすれば計画が露見する可能性があります。」
(計画。)
中也の瞳が細くなる。
やはり偶発的な侵入ではない。狙いがある。
その時、
死柄木の手元にあった資料が視界へ入った。
教師名簿。
授業予定表。
校内地図。
(なるほどな。)
中也は口元を歪めた。
「マスコミが侵入したと思わせて。」
二人が僅かに反応する。
「教師共の目を外へ向ける。」
一歩、距離を取る。
「その間に本命が職員室に侵入。」
二歩、さらに下がる。
「狙いはカリキュラムか?」
三歩、死柄木の足運びを見る。
「それとも教師の情報か?」
死柄木の額に青筋が浮かんだ。
「……。」
「黙ってるってことは図星か。」
中也が笑う。
「残念だったな。」
次の瞬間、
死柄木が動いた。
一直線。中也へ向かって突進する。
「ッ!」
だが中也は横へ跳んだ。
掴み損ねた指先が空を切る。
「今の話。」
着地しながら言う。
「全部、担任に聞かせてる。」
死柄木が止まった。
「……は?」
「職員室入る前から電話繋いでんだよ。」
ポケットを叩く。
「だから今更俺を消したところで意味はねぇ。」
沈黙。
そして、
「……あぁ。」
死柄木の肩が震え始めた。
「あぁあぁあぁあぁあぁぁ!!」
頭を掻き毟る。
「なんなんだよこのガキ!!」
さらに掻く。
「うるさいうるさいうるさいうるさい!!」
明らかに苛立っていた。
その様子を見て中也は内心で確信する。
(図星。)
黒霧が静かに口を開く。
「死柄木弔。」
「今はその時ではありません。」
「……チッ。」
死柄木が舌打ちした。
そして。
「黒霧。」
「はい。」
「帰るぞ。」
「かしこまりました。」
黒い霧が広がる。空間そのものが歪むようにして二人の姿は飲み込まれた。
数秒後。
そこには誰もいなかった。
静寂だけが残る。
中也は小さく息を吐く。
そしてスマートフォンを取り出した。
まだ通話は繋がっている。
耳に当てる。
「すまねぇ。」
率直に言った。
「片方の個性がワープ系だった。」
視線を霧が消えた場所へ向ける。
「追えなかった。」
しばし沈黙。
そして、
『……まったく。』
電話越しの相澤の声には呆れが混じっていた。
だが、それ以上に、安堵しているようにも聞こえた。
『お前は本当に……。』
中也は目を伏せる。
「俺の落ち度だ。」
素直に認めた。
「処罰は何なりと受ける。」
すると。
電話の向こうで妙な沈黙が流れた。
『は?』
本気で意味が分からないという声だった。
『処罰なんてあるわけないだろ。』
中也が瞬く。
『とりあえず。』
少しだけ優しい声音。
『無事でよかった。』
その言葉に。
中也は思わず黙った。
『後で校長に報告する。』
相澤が続ける。
『だからお前は見たこと全部まとめとけ。』
「……了解。」
短く返事をする。
そして通話は切れた。静かになった職員室で中也は一人立ち尽くす。
(無事でよかった、か。)
その言葉が妙に耳に残った。
前世では、危険な場所へ飛び込むことなど日常だった。
誰も止めない。
誰も叱らない。
誰も心配しない。
それが当たり前だった。
だから。
教師にそんなことを言われるのは。
少しだけ。
本当に少しだけ。
不思議な気分だった。
ーーーーー
午後の陽が差し込む教室は、いつもの喧騒を取り戻していた。
校内への不審者侵入騒動はあったものの、警察の到着とともに事態は収束し、報道陣も撤退した。雄英高校は再び平静を取り戻していた。
一年A組では終礼が始まろうとしている。
教壇の前には、学級委員長の緑谷出久と副委員長の八百万百。
だが、緑谷は見るからに緊張していた。
手には紙を持っているものの、指先は小刻みに震えている。
「ホ、ホラ委員長、始めて。」
八百万に促され、緑谷はびくりと肩を跳ねさせた。
「でっ、では!」
裏返った声が教室に響く。
何人かが吹き出した。
「これより、他の委員決めを執り行って参ります!」
そこまでは良かった。
だが緑谷は急に言葉を止めた。
教室中の視線が集まる。
「……けど、その前にいいですか!」
思い切ったように声を張る。
その様子に、生徒達も自然と耳を傾けた。
緑谷は教室を見渡し、そして一人の少年へ視線を向けた。
飯田天哉。
眼鏡をかけた真面目なクラスメイト。
昼の食堂で誰よりも冷静にパニックを収めた男。
「委員長は……やっぱり飯田くんが良いと、思います!」
教室が静まる。
緑谷は真っ直ぐ飯田を見ていた。
「僕にはあんな風に皆をまとめられない。」
声に迷いはなかった。
「だけど飯田くんは違う。」
昼の出来事を思い出しているのだろう。
パニックに陥った食堂。
混乱する生徒達。
その中で、誰よりも先に状況を把握し、皆を落ち着かせようとした姿。
確かにあれは立派な委員長の姿だった。
「僕は……飯田くんがやるのが”正しい”と思うよ。」
教室が一瞬静まり返る。
そして、
「あ!良いんじゃね!?」
切島が真っ先に声を上げた。
「飯田、食堂で超活躍してたし!」
「非常口の標識みてえになってたよな。」
上鳴の一言で教室が笑いに包まれる。
「あれはちょっと面白かった。」
耳郎まで頷いた。
「確かに頼りになりましたわ。」
八百万も静かに賛同する。
次々と上がる賛成の声。
反対意見はほとんど聞こえなかった。
中也は腕を組みながらその様子を見ていた。
元々、自分は飯田に投票している。
異論はない。
むしろ当然だろうと思った。
(やっぱそうなるよな。)
昼食の時にも感じた。
飯田は真面目過ぎるくらい真面目だ。
融通が利かない部分もある。
だが、人を導こうとする意志がある。
それは委員長に必要な資質だ。
「何でも良いから早く進めろ。」
教室後方。
寝袋の中から相澤の低い声が飛ぶ。
「時間がもったいない。」
生徒達が一斉に肩を跳ねさせた。
「ひっ!」
「出た!」
「寝袋のまま喋った!」
相澤はそんな反応など気にも留めない。
ただ眠そうな目で教室を睨んでいた。
その空気を切り裂くように、飯田がゆっくりと立ち上がる。
眼鏡がきらりと光った。
そして胸に手を当てる。
「委員長の指名ならば仕方あるまい!!」
どこか芝居がかった堂々たる宣言。
教室から歓声が上がった。
「任せたぜ非常口!!」
「非常口飯田!!」
「ちゃんと誘導しろよー!」
「非常口って言うな!!」
飯田のツッコミに再び笑いが起こる。
その様子を見ながら、中也は小さく口元を緩めた。
緑谷は安堵したように息を吐き、飯田へ委員長の役目を譲る。
飯田は教壇へ上がると、すぐさま姿勢を正した。
「では委員決めを始める!」
その声には先ほどまでの迷いがなかった。
生徒達も自然と耳を傾ける。
まとめ役。
指揮官。
そういう立場が似合う男だった。
(やっぱ間違ってなかったな。)
中也は椅子に深く腰掛けながら思う。
壇上で次々と議事を進行していく飯田の姿は、まるで最初からそこに立つことが決まっていたかのように自然だった。
教室には笑い声があり、活気があり、少しだけ誇らしげな空気が流れている。
今日という一日は騒がしかった。
だがその騒がしささえ、今のA組には心地よく感じられた。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
番外編
昼休み。
そこはA組の角。その日は珍しく、A組の女子達が集まっていた。
「中原ちゃん髪綺麗だよね〜。」
芦戸三奈が後ろから中也のポニーテールを摘まむ。
「そうか?」
「そうだよ!」
麗日も頷いた。
「サラサラやし。」
「でも髪型はいつも同じよね。」
八百万が首を傾げる。確かに中也の髪型は基本的に一本結びだ。うなじの少し上の方で結んだ低めの、実用性重視のシンプルなポニーテール。
「邪魔にならねぇし。」
中也は当然のように答えた。
「女子力の欠片もないね。」
耳郎が呆れる。
「別に困ってねぇからな。」
すると、
「ねえねえ!」
芦戸が目を輝かせた。
「中原ちゃんってヘアアレンジとかできる?」
「できるぞ。」
即答だった。女子達が固まる。
「え?」
「できんの?」
「まあ。」
中也は平然としている。
「妹たちによくやってるからな。」
「妹!?」
「最近はプリキュアのやつとかやらされた。」
深いため息。
「流石にあれは厳しかった。」
「分かるわ。」
蛙吹梅雨が即座に頷いた。
「難しいのよね。」
「梅雨ちゃんもやるの!?」
麗日が驚く。
「ええ。」
梅雨は淡々と言った。
「アニメだから成立してる髪型なのよ。」
「梅雨ちゃんも同じ経験してるんだ……。」
二人揃って遠い目をした。
「じゃあやってみてよ!私でさ!」
芦戸が勢いよく椅子に座る。
「いいけど。」
中也は後ろへ回った。
女子達が興味津々で集まる。
「櫛あるか?」
「はい!」
八百万が即座に創造した。
「便利だな。」
「ありがとうございます。」
そして。
中也の手が動き始めた。
髪を分ける。
編む。
まとめる。
留める。
迷いがない。
慣れた手つきだった。数分後。
「できた。」
芦戸が鏡を見る。
そして。
「何これ可愛い!!」
思わず立ち上がった。
サイドを編み込んだハーフアップ。普段よりずっと大人っぽい。
「え!?すご!!」
「上手ですわ!」
「美容師さんみたい。」
女子達が一斉に騒ぎ出す。
中也は首を傾げた。
「普通じゃねぇの?」
「普通じゃない。」
耳郎が即答した。
「全然普通じゃない。」
梅雨も頷く。
「職業レベルよ。」
その後。麗日、葉隠、八百万、次々と捕まる。
気付けば簡易美容室状態だった。
「中原美容院だ〜!」
「予約取れますか!?」
「並んでください。」
「何で乗ってんだよ。」
中也が呆れる。だがどこか楽しそうだった。
そして、
全員終わった頃。梅雨がじっと中也を見た。
「何だ?」
「中也ちゃん。」
「ん?」
「自分の髪やらないの?」
中也は一本結びを摘まむ。
「これで十分だろ。」
女子全員が顔を見合わせた。
そして、
同時に立ち上がる。
「却下。」
「は?」
「今日は中原ちゃんがされる側!」
「逃がさへんで!」
「観念なさい。」
「待て待て待て。」
十分後、鏡の前で中也は絶句していた。
「……誰だこれ。」
普段下ろしている前髪を少し流し、 後ろは編み込みを混ぜたハーフアップ。
可愛さと格好良さが両立している。
「似合うじゃない。」
耳郎が満足そうに言う。
「すごく綺麗ですわ。」
「めっちゃ可愛い!」
「ヒーロー雑誌の表紙いける。」
女子達が口々に褒める。
中也は居心地悪そうに視線を逸らした。
「……別に。」
耳だけ真っ赤だった。
「「「照れてるね/わね/ますわ!」」」
「うるせぇ!!」
女子寮に笑い声が響いた。
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第2話、読み終えたわ!戦闘訓練、班分け、一人チームになった中也の戦い方めっちゃカッコよかった🔥轟相手にあっさり決めるスタイル、重力操作ならではの機動力と読みの鋭さが光ってたな。あと委員長決めの飯田のキャラや食堂での銭湯固めのシーンも良かった。恋バナチックな雰囲気とヘアアレンジ回は和んだわ〜。続き気になる!