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お母さんは私の言葉を聞いた時、明らかに動揺した様子で言った。

「なんでお前が知って…」

なんでお前が知ってるんだよ、と言いたかったのだろう。だけど、肝心な続きを焦って言えないでいる。そんなお母さんに私は知っている理由を話した。

「前、帰ってきちゃった時、見たんだ。お母さんが刺し殺してるの。その日は静かに逃げたけど」

そう。私が夜まで家に帰ってはいけない理由はお母さんが男の人を殺すからだ。わかったらお母さんの機嫌が悪くなって私まで殺されるかもしれなかったから。

「…殺しちゃ悪いかよ」

「犯罪なんでしょ?」

「お前だって殺したんだろ!?」

大声をあげる母親を煽るように私は言った。

「だって私、この世にいないんでしょ?」


それっきりお母さんは黙った。拗ねているような、恐怖を感じているような、自身の言ったことを後悔しているような、沢山の負の感情を詰め込んだそんな表情で。

「私はこの世にいないんだから、関係ないでしょ」

何を言っても黙るお母さんの後ろにある部屋へ入って言った。

「お母さん、来て」






部屋はお母さんが殺した男の人の死体が布団の上に転がっていた。床と壁には血がついていて、正方形の小さなビニールが何個か床に落ちていた。ビニールの中心には、丸い輪っかの線のようなものの跡が、くっきりと浮いていた。

お母さんはしばらく机の横に突っ立ってからこっちに来た。それが意外で私も内心驚きはしたが、そっちの方が効率もいい。

「男の人の横に寝て?」

私はそう言うと、お母さんはちゃんと横まで言って、布団に寝っ転がった。ちゃんと男の人の隣で。

なんでこんな従順なんだろうと疑問に思っていると、お母さんの目はとてつもなく虚ろだった。美輝ちゃんの父親とまではいかないが、全てを諦めたような虚ろな目をしていた。

そのまま寝っ転がったお母さんの口元を左手で塞ぎ、美輝ちゃんの親と同様、腕を振り上げ、包丁を喉を刺した。お母さんは我に返り悶えるも、口元を塞がれもう既に刺されて、そんなに長い間暴れることはできなかった。

暴れることはなく、ただただ喉元から血が流れ出ているだけだった。

「ぁ、手の跡残っちゃうかな…」

私はせめてもの足掻きとして台所にあったゴム手袋をして包丁を水で洗い拭いた後、死んだお母さんの隣で死体になっている男の人に包丁を握らせた。心中だとか、無理心中だとか、そう言った言葉があるから、それらしく見えるように男の人とお母さんの体勢を直した。

私は新しい包丁を台所の棚から出して鞄の中に入れた。そしてあることを思いつき、お母さんの携帯も鞄に入れて家を後にした。





「美輝ちゃん!」

「ぁ、やっときたっ!」

公園に戻ると美輝ちゃんがベンチで私を待っていてくれた。私が声をかける前までは1人で寂しそうだったのに、私が声をかけた途端にぱあっと眩しい笑顔を見せてくれた。

でも、それ以上に大切な話がある。美輝ちゃんにとっても、私にとっても。

「ねぇ、美輝ちゃん」

「ん?」

「これから私と一緒に過ごすってなっても平気?嫌じゃない?」

「ううん、いやじゃないよ!いっしょにくらしたい!」

「じゃあさ、



一緒に暮らさない?」

私がそう言うと美輝ちゃんは満足そうな笑顔で言った。

「うん!わたしもいっしょにくらしたい!」






「はぁ…」

私ってどうして上手く物語を繋げられないんだろう。ずっと夢見て、親にも何も言わずにここまで来れたのに、どうして…。

気分転換に散歩をしても、私の悩みなんか知らない親子連れがへらへら、にこにこと笑っているだけ。私よりも悩んでる人がいる、とかそんなの分かってる。でも、どうしてもそんな腹黒なことばかり考えてしまう。

私がそんな身勝手な事を一人、点々と考えていた時だった。

「お姉さん」

声をかけられて振り向いた。そしたら、赤い目の茶髪の短い二つ結びをしている女の子と、肩につかないくらいのボブヘアの白髪に綺麗な青い目をしている女の子が居た。

「お姉さんって一人暮らし?」

赤い目の女の子が聞いてきたから私はそれに答えた。

「そうだけど…どうかしたの?」

私が女の子に聞き返すと女の子はそのまま真顔で答えた。

「一人暮らしなら、私たちを家で暮らさせてくれませんか?」




「…え?」

私は驚きで素っ頓狂な声をあげてしまった。

「お姉さんが一人暮らしなら私と美輝ちゃんと、一緒に暮らせませんか?」

女の子はなんで私が驚いているのか心底分からなそうな表情で私を見つめてきた。

「えっと…まあ別にいいけど…」

私が焦って了承すると女の子は口元をにこっと緩ませて私に言った。

「ならいいよねっ!早速だけど、お姉さんの家で暮らしたいですっ!」

私は女の子に言われ、了承してしまったのだから、家に連れていった。






「なんでほかのひとのおうちにすむの?」

美輝ちゃんは不思議そうに私に問いかけた。だから私は答えた。

「美輝ちゃんと一緒に住みたいけど、私たち、まだ小さいから二人だけで住むことなんて出来ないの。だから他の人に協力して貰わないと幸せはまだ先になっちゃうの。

あ、でも大丈夫だよ美輝ちゃん。絶対にいつか美輝ちゃんと二人だけで暮らすから!」

私は言い終えた後、美輝ちゃんににこっと笑いかけた。

絶対絶対美輝ちゃんと暮らすんだ。たとえ今、一緒に暮らせないとしても、大人になったり、自分でお金を払える歳になったら、絶対美輝ちゃんと暮らすんだ。

その為に今は、我慢するんだ。

いつか、幸せになる為に________……。

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