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「さっさと見つけ出してよ……! 人身御供を……!!」
青白いの腰まである長いロングを一括りにして垂らした、水色のジト目をした、学生帽と学ランを身にしたその少年が、竪琴を弾いて真っ青な瞳をした白鳥に怒鳴っていた。
おそらく、その竪琴を使って、白鳥達を操っているのだろう。
「でないと……でないと……」
少年はギョロギョロと目を動かしながら、必死になって『人身御供』を探す。
少年の額から、汗が一本流れた。
「……ぼ、僕が殺される!!」
「ねぇ、トワ」
「何だい?」
「あ、あんた足速すぎ……!!」
あたしはあたしのことなどに無視をして、トットコ走っていってしまうトワに向かって声を荒げる。あたし達は狭い道を走っていて、全力で走ることなどできるはずがなかった。
そんなあたしのこと等どうでもいいのか、トワはニヤリとその瞳に弧を描いて笑った。
「ヒミちゃんが足遅いんだよ」
「は?」
「ト、トワ様……そうおっしゃらず……」
「あ! みっけた! ヒミちゃん、多分あれが声の正体だね」
物陰に隠れて、『あれ』とやらの正体を確認する。
正体は、白鳥だった。
でも白鳥にしては目つきが怖いし、それに明らかに白鳥はあんな鳴き声をしない。するはずがない。
それでも、白鳥は口を開けて声を響かせた。
「ギィヤァァァァ!! ア、ァアアア……」
「キモいわね。トワ、あの子、焼き鳥にできないかしら?」
「物騒だなぁ!! そもそも白鳥って美味いの……??」
「美味しいわよ。あ〜、あの子達見てたらお腹が空いてきたわ……」
「ウッソだろ? ……ヌレバ」
「ワ、ワタクシのことは食べないでください……!!」
「ちげぇよ」
「あ! あたしはヌレバちゃんのこと食べたい!! 唐揚げにしたげる!」
「頭可笑しい……。そうじゃなくてね……」
トワは何やらヌレバちゃんに耳打ちをすると、ヌレバちゃんはハッとした表情の後で、恥ずかしそうに頭を掻いた。何かを忘れていたような表情だ。
その後、うぇっうぇっと嘔吐くと、何やら赤色の弓がヌレバちゃんの口から吐き出される。
「え……? え…………??」
「サンキューヌレバ」
トワはそれを躊躇なく手にすると、懐から弓矢を取り出し、そこに取り付けた。
「トワ、あんたも十分頭おかしいわよ」
「おいらだって触りたくて触ってねぇよ!! ……はっ」
トワは元々細い目を更に細めると、集中をするかのように息を吐けば、矢を放った。
狭い道から矢はすり抜けて、グサリと何かに刺さったような音がする。
トワの背中で見えなかったため、トワを細い道から広がったところへと押し出した。
相変わらず美しい景色であるが、トワは文句を言ってくる。
「うわー!! 見つかっちまうじゃんかよぉ!!」
「トワ様の大きな声でバレるかと」
「ひっ!」
トワのうるさい声など気にならない程に、あたしは目の前の光景が怖くて、思わず声を震わせた。
そこには、何と頭から血を流し、白い身体を汚している白鳥が倒れていた。
あたしが思わず後ずさると、トワは呑気に提案をしてくる。
「ビビんなよ。逆に焼き鳥にできるぜ?」
「た、確かに……!」
「ワタクシはどういう気持ちで聞けばいいんでしょうか……」
一理ある!
「だ、誰だ君たちは……!」
声の方を見ると、そこには竪琴を持って身体を震わせる、一人の少年が居た。
少年は守られるように白鳥に囲まれていたが、よく顔が見える。焦りと恐怖で歪んではいたが、美少年だった。
「……トワより可愛い顔してるわね……」
「おいらの顔はイケメンだからね」
「それ本気で言っておられますか?」
「え?」
「可愛いランキング一位はあたしだけどね!」
「ヒミ様もそれ本気で言っておられますか?」
「は?」
「な、何言ってるんだ! 僕は君たちが誰なのか聞いてるんだけど……!」
少年は、キッとあたし達のことを睨んでくる。瞳は恐怖で震えていた。
明らかに警戒されている。
「まずは自分が名乗れば?」
「そーだそーだ!」
「意外と息ぴったりですね……」
「ぼ、僕は……! お……『ベガ』……です」
素直に名乗ったベガくんにあたし達は顔を見つめ合うと、順番に一人ずつ名乗っていく。
「おいらはトワ! よろしくねっ! 洒落てる名前だね。L◯NE交換しよっか!」
「何でここにいるやつがL◯NEやってんだよ! それに僕は男!! ……ありがとう」
「ヌレバです。よろしくお願いいたします。ベガさん……素敵なお名前ですね」
「何でカラスが喋ってるんですか!? ……ふふっ。ありがとう」
「あたしは刹夏彼美! ヒミって呼んでね! ベガか……可愛い名前だね! よろしくっ! ベガちゃん」
「だから僕は男……! ……ヒミさん……よろしく」
そして、一人ずつベガちゃんと握手を交わしていく。
また友達ができたことに嬉しく思って、そしてトワは手を振った。
「お前が、白鳥達をその竪琴で操っていたんだね。……じゃあ、おいら達は行くとこがあるから。もうこんなことしちゃダメだぜ?」
「うん……うん。わかった! トワくん」
「ベガさん、お元気で」
「ばいばい! ヌレバくん!」
「じゃ、またどこかで会えたら!」
「うん! またね! ヒミさん!」
そして、あたし達は旅へとスタートしたのだった……。
「……いや待ちなさいよ!! 何一つ訳が分からないんだけど!?」
「そうだよ! 何で挨拶してそれで終わりなのさ!?」
「ちっバレたか……」
「どうやらトワ様は面倒事に付き合いたくはないようです」
「……待って。ヒミさん……?」
「はい?」
突然名を呼ばれて、ベガちゃんの方へと振り向く。
すると、頭を抱えて狂ったように言葉を発し始めた。
「ヒミさん、ヒミさん、ヒミさん、ヒミさん、ヒミさん……」
「な、何?」
「……刹夏、彼美」
そこまで言って、ベガちゃんは顔を上げた。
「……人身御供……!」
「え?」
「君が、人身御供だな……!?」
え、人身御供……? それって、トワの妄言よね……?
「……ヒミちゃん、下がって」
「は?」
「どうやら、ベガくんは敵さんらしい」
そう言うと、また懐から一本弓矢を取り出す。
そして、弓先をベガへと向けて、糸の切れた人形のように顔をガクリと首を傾けて、その顔いっぱいに笑顔を浮かべた。
「……お前の知っていることを、全て吐け」
圧が、圧倒的だった。
「ト、トワ様……初対面の方にそこまで……」
「ひっ! ……で、でも嫌だ!! 僕がアイツに殺される!!」
「アイツって誰だ?」
「ア、アイツは……!!」
ベガちゃんは唇を噛むと、ギッと歯を噛み締めた。
そして、諦めたように息を吐く。
「……ぼ、僕らのリーダーだ……」
「僕ら? 僕らって? お前一人じゃねぇのかよ? ソイツの名前と能力教えろ。夏の神なんだろう? ソイツのことおいら知らねぇんだよ。ほら、はやく」
「い、嫌だ! 嫌だ!! 僕はまだ生きるんだ!!」
「ふ〜ん……生きるねぇ……。まだ生に縋るんだぁ……。……はぁ!! 本当に面倒くさいなぁ……」
大きく、大きく溜息を吐いたトワは、弓を離そうとする。
それに震えたベガちゃんは、言葉を捲し立てるように叫んだ。
「アイツは!! ……アイツは、あの人は神なんかじゃない……。元々夏の神なだけだ……堕ちた神だ……」
「堕神だと?」
「そ、そうだよ……。アイツは今、地獄にいる……堕天使達と、悪魔と遊んで暮らしている……」
「……へぇ。で、名前は? 能力は?」
「……これ以上言ったら、本当に殺されちゃうよ……。……その代わり他の三つの情報を渡すから……」
「他の情報?」
トワはピクリと眉を動かすと、弓を下ろした。
それを見たベガちゃんは、はぁと疲れたように溜息を吐く。
「……一つ目。アイツは、人身御供……つまり、ヒミさんを狙ってるってこと」
「それは分かるなぁ」
「……二つ目。アイツは、ヒミちゃんをずっと監視してたみたいで、ヒミちゃんの気配がした死ん域のこの場所で、僕に探すように命じたこと」
「なるほどねぇ」
「……そして三つ目。君は、トワくんと言ったよね?」
「そうだけど」
「……なら、気をつけた方がいい。君のことも、アイツは狙ってる」
「はぁ? 何でおいらが狙われなんなきゃならね〜んだよ」
「し、知らないよ……。僕からは、アイツは相当変態だってことしか言えない……」
「……へぇ……」
「あ! 待てよ!! ヌレバ!!」
しかしトワの声は遅く、とっくにベガくんは白鳥の上に乗って、飛び立ってしまっていた。
トワはチッと舌打ちを零すと、仕方ないなぁと初めの言葉を言った。
「さっ! 行くよ二人とも!」
「ど、何処へですか!?」
「勿の論、地獄へ出発さっ!」
「じ、地獄……!?あんな遠いところにどうやって……!?」
「歩きに決まってんじゃないかい。あ、ヌレバは飛べるからヌレバの上に乗ってとか!」
「アホですか!?」
「ねっ! ヒミちゃん。……ヒミちゃん?」
名を呼ばれて、やっとあたしに声をかけていることに気がついた。
あたしはトワのことを見つめると、はぁと溜息を吐いた。
「……ねぇ、信じたくないんだけどさ、あんた本当に神様だったりする?」
「そうだよ?」
「じゃあ、ここは本当にあの世だったりする?」
「そうだよ?」
「……じゃあ、あたしは本当に生贄だったりする?」
「そうだよ?」
全てをトワに肯定されて、また溜息を吐いた。
そして、顔を上げる。
「……あぁ、そう。そう……そうなの。あぁそうなの!!」
「わかったわよ! 地獄の果てまでだって行ってやるわよ!! あたしのこと、舐めんじゃないわよ!!」
「さっすがヒミちゃん! 頼りになるねぇ。ね、ヌレバ!」
「ワタクシの上には乗らないでくださると……」
「そうじゃねぇよ。……じゃ、ヒミちゃん、ヌレバ」
「はい!」
「……えぇ!!」
あたしは大きな声でトワに返事をすると、一歩を踏み出した。
「……行くわよ! 地獄へ!!」
「え? 失敗したの??」
「も、申し訳ありません……!! 次は必ず!!」
ベガは目の前の人物に対して、頭を地面に擦り付けて土下座をした。
その人物はそれを一瞥すると、ははっと狂ったように笑う。
「別にいいよ。……ねぇ、どう? 人身御供のコ、可愛かったでしょ」
「え、えぇ……」
(相変わらず変態……)
「でさ〜、トワも、可愛かったでしょお?」
「え、ト、トワくん……? 同性愛者……」
「同性愛者って? ……ねぇ、どうなの?」
「え? ……えぇ……。あの……なんでトワくんが居たことをご存知なんですか……?」
「は?」
惚けるなというかのように、その人物は椅子から飛び降り笑顔のまま胸ぐらを掴むと、唾を吐くかのごとく声を荒げた。
「俺知ってるよ?? ベガがさぁ、俺のことペラペラペラペラペラペラペラペラ喋ってたこと」
「あ、ぁあ……!!」
「……ま、いいよ。次頑張ってくれれば。さ、はやく行って」
「……は、はい!」
逃げるように飛び出したベガのことを見送ると、その人物はまた椅子に座り直した。